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小予算でも良作を連発!設立25周年の「FOXサーチライト」作品が賞賛される理由とは?(1/2)

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ライター:#BANGER!!! 編集部
小予算でも良作を連発!設立25周年の「FOXサーチライト」作品が賞賛される理由とは?(1/2)
ハリウッドのメジャースタジオ6社(ディズニー/ソニー/20世紀フォックス/パラマウント/ユニバーサル/ワーナー)とは違う、作家性の強い“インディペンデント系”と呼ばれる「FOXサーチライト・ピクチャーズ」。個性的で多彩なアート映画を製作・配給する同社が守り続ける独自の流儀を、配給・宣伝に関わるアソシエイト・ディレクター平山義成さんに聞いた。

“常に新しい作品にチャレンジする” FOXサーチライトの一貫したDNA

『スリー・ビルボード』©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

―FOXサーチライト設立の経緯を教えて下さい。

FOXサーチライトの設立に大きく貢献したのが、元20世紀フォックスの共同会長で、FOXサーチライトの社長も務めた、現ソニー・ピクチャーズの会長のトム・ロスマンです。設立のキーマンであるトムが昨年夏にインタビューで設立当時のことを語っています。設立は1994年で、日本と同じく、米国でもアート映画ブーム真っ只中でした。才能溢れるアート映画のクリエイターが意欲的に作品を出していく中で、映画業界全体が活性化されつつあり、メジャースタジオのウォルト・ディズニー・カンパニーがハーヴェイ&ボブ・ワインスタインのミラマックスを傘下におさめ、ソニー・ピクチャーズ、パラマウント映画、ユニバーサル・スタジオ、ワーナー・ブラザースもアート映画を作る独立したレーベルを設けていく時代でもありました。

その当時、トム・ロスマンは、「サミュエル・ゴールドウィン・スタジオ」というインディペンデント系の映画会社に所属していて、メジャースタジオの中にインディペンデント映画を扱うスタジオを作るというアイデアを持っていました。その具体的な提案に乗ってくれたメジャースタジオが20世紀フォックスでした。トムは、FOXサーチライトを設立する上で、「メジャースタジオというバックグラウンドがある中で、小予算のインディペンデント映画製作にチャレンジしていく」ことにこだわりました。その考えが今のFOXサーチライトの骨格になっています。

『シェイプ・オブ・ウォーター』©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

―FOXサーチライトの方針は設立当初から変化はありますか?

時代の流れと共に若干変化はありますが、大きなポリシーの変更はありません。現在、業界の大ベテランであり、FOXサーチライトでの長いキャリアを持つ男女の共同会長がブランドを引っ張っています。FOXサーチライトの特徴としては、スタッフが長く働いていることだと思います。だから、スタジオのカラーが一貫しています。

年間のリリース作品は、10作品前後で、作品数の増減はあまりありません。作品数を増やさないのは、自分たちの目が隅々まで行き届くことを大切にしているからです。設立当初から製作と買付の作品数が半々でしたが、今後は製作を主体にしていくことを2016年あたりから明言しています。ここ最近では、配信サービスが出てきたことで、買付の競争が激しくなり、価格が高騰してきています。買付そのものがリスクになってきていると言えます。

製作に関しては、長年の実績から、フィルムメーカーとの信頼関係もあり、ユニークな企画が入ってきています。その企画に関わりたいと思う素晴らしいクリエイターや俳優が集まっていて好循環が出来ています。自社製作だと企画開発から始まって、途中で軌道修正もできる。自分たちが自信を持って作った作品を公開できるので、高品質を担保出来ます。ちなみに、2018年に日本で公開した『スリー・ビルボード』、『シェイプ・オブ・ウォーター』、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』、『犬ヶ島』、そして2019年に公開した『女王陛下のお気に入り』は全て自社製作です。製作費に関しては、設立当初から大きな変化はなく、予算規模が大きすぎて、自分たちの手に余る作品は作りません。

『女王陛下のお気に入り』©2018 Twentieth Century Fox

―FOXサーチライトは、常に新しい物語を届けてくれるイメージがあります。

そうですね。そういう意味で言うと、これまでシリーズものはほとんどありません。「常に新しい作品にチャレンジしていく」というのが、FOXサーチライトの一貫したDNAだと思います。設立当初からユニークな脚本を重視し、その魅力的な物語を面白い語り口を持っている監督に手掛けて頂いています。

―FOXサーチライトの転機となった作品を教えてください。

初期の段階では、『フルモンティ』(1997年)と『サイドウェイ』(2004年)の存在は大きかったと思います。クオリティで勝負していくFOXサーチライトという印象を付けられた作品です。それから、2006年に日本公開した『リトル・ミス・サンシャイン』と、ティムール・ベクマンベトフ監督を発掘した『ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR』は世界的にヒットして、ビジネスとしても軌道に乗った年だったと思います。

『リトル・ミス・サンシャイン』©2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

―日本では『リトル・ミス・サンシャイン』から、映画好きにFOXサーチライトが知られるようになったのでしょうか?

そうだと思います。この作品ぐらいから、毎年アカデミー賞に絡むような作品がコンスタントに出せるようになりました。本国にFOXサーチライトのインターナショナルの配給チームが確立したタイミングでもあり、各国の事情に沿った宣伝方法で作品を広められたことが、FOXサーチライトを知ってもらう上で大事なポイントだったかと思います。トム・ロスマンが、設立当初から20世紀フォックス本体とは別の専門のチームが宣伝することが、“アート映画を活かす”最高の方法論だと提案していました。

20世紀フォックスの作品とFOXサーチライトの作品を比べて頂くとわかる通り、ターゲットも規模も違います。宣伝も違ったコンセプトでやるべきなので、独立したアート映画のプロフェッショナルが集まったチームが存在するのは、とても大きな意味があります。

祝・設立25周年!「FOXサーチライト」作品がアート映画で賞レースを席巻する!(2/2)

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