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スカヨハ主演SF『LUCY/ルーシー』 ブラー/ゴリラズのデーモン・アルバーンとエリック・セラが“人類の進化の果て”を表現

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ライター:#森本康治
スカヨハ主演SF『LUCY/ルーシー』 ブラー/ゴリラズのデーモン・アルバーンとエリック・セラが“人類の進化の果て”を表現
『LUCY/ルーシー』©2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

リュック・ベッソンの底力

監督・脚本家・プロデューサーとして、ヒット作を続々と世に送り出すリュック・ベッソン。『グラン・ブルー』(1988年)や『レオン』(1994年)などが高く評価される一方で、脚本・プロデュース作品の大量生産や、自身の気まぐれな監督引退&撤回発言などもあり、一時期はブランド力にやや翳りが見えたこともあった。そんな中、フランス本国はもとよりアメリカでも大ヒットを記録してベッソンの底力を見せつけたのが、2014年の監督作『LUCY/ルーシー』である。

『LUCY/ルーシー』
Blu-ray: 2,075 円 (税込) / DVD: 1,572 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント

ベッソンの好きなものを詰め込んだ、奇抜な脳科学SFアクション

新種のドラッグ<CPH4>の影響で、図らずも超人的な能力を身につけてしまった平凡な女性ルーシー(スカーレット・ヨハンソン)の活躍と運命を描いた本作は、「強い女性」「派手なカーアクション&ガンアクション」「強烈なバイオレンス」「アジアンカルチャー」など、ベッソンの好きなものを全部詰め込んだ破天荒なSFアクションである。

『LUCY/ルーシー』©2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

「人間の脳を100%覚醒させたら、想像もつかない能力を身につけることができるかもしれない」という“脳の10%神話”に基づくストーリーになっているが、普通の監督なら2時間近くかけて描きそうなテーマを、たった90分でテンポよくまとめてしまう大胆さも実にベッソン的である。都市伝説とも言われる前述の突飛な理論も、脳科学者のノーマン博士を演じたモーガン・フリーマンが深みのある声でスピーチすると、説得力が生まれてくるのも面白い。このあたりはキャスティングの成せる業といったところだろうか。

『LUCY/ルーシー』©2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

ベッソン映画を知り尽くした作曲家、エリック・セラの神秘的な音楽

ベッソンの監督デビュー作『最後から2番目の男』(短編:1981年)から近作『ANNA/アナ』(2019年)まで、38年近く彼とコラボレートしている作曲家のエリック・セラは、本作の脚本を読んでベッソンにひと言「Waouh!」と感嘆のテキストメッセージを送ったという。ベッソンの個性的なSF世界は『フィフス・エレメント』(1997年)で経験済みのセラですらこの反応ということからも、本作がいかに奇抜な作品であるかが分かる。

『LUCY/ルーシー』©2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

かくして『LUCY/ルーシー』のスコア作曲を手掛けることになったセラは、ギター、ベース、パーカッション、キーボードなどの演奏も自ら担当。ルーシーが“人間ではない存在”に変容していく過程を音楽で表現するため、オーケストラと年代物のシンセサイザーを使ったハイブリッドなスコアを作り上げた。

『LUCY/ルーシー』©2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

音楽の方向性としては、『ニキータ』(1990年)の重低音を効かせたクールなシンセスコアに近いが、映画の前半はミニマル・テクノ/エレクトロニカの要素が強めなので、メロディックな音楽を期待すると少々地味な印象を受けるかもしれない。しかしルーシーの変容が進むにつれて、セラの音楽も徐々に盛り上がっていく。クライマックスでルーシーが脳を80%まで覚醒させた時、人間ではなくなっていく彼女の神々しい姿、そしてわずかに残った人間らしさを、ソプラノの厳かな歌声で表現する音楽演出がドラマティックだ。観る者を唖然とさせる結末に、ある種の神話性をもたらす音楽と言えるだろう。

ブラー/ゴリラズのデーモン・アルバーンがエンディングテーマを担当

不思議な余韻を残す本作のラストで流れるのが、英国のロックバンド、ブラー(Blur)のフロントマンであり、革新的バーチャルバンド、ゴリラズ(Gorillaz)の中心人物でもあるマルチミュージシャン、デーモン・アルバーンが歌う「Sister Rust」だ。「君はいまどこにいるんだろう?/僕は気づいたんだ/君が遠くに行ってしまったことを/でも僕が出来ることは何もなかったんだ」と、ルーシーを偲ぶように切々と歌われるボーカルが心にしみる、珠玉のエンディングテーマである。

ポップミュージックから管弦楽、オペラ、ワールドミュージックまで多種多様な音楽を自家薬籠中のものにするアルバーンは、『トレインスポッティング』(1996年)に書き下ろし曲「Closet Romantic」を提供して以来、映画音楽の分野でも才能を発揮している。『ラビナス』(1999年)では民俗音楽を研究してマイケル・ナイマンと共にスコアを作曲し、『私が愛したギャングスター』(2000年)ではスコアと挿入歌を作曲。アイスランド映画『101レイキャヴィーク』(2000年)では元シュガーキューブスのエイナール・オゥルン・ベネディクトソンとスコアを合作。映画やテレビシリーズでブラー/ゴリラズの楽曲が使われる機会も多い。

筆者私物

ベッソンは『マラヴィータ』(2013年)でゴリラズの「Clint Eastwood」と「To Binge」を使っていたので、いま思えば本作へのアルバーン招聘の布石だったのかもしれない。

アルバーンの7年半ぶりとなる2ndソロアルバム『The Nearer The Fountain, More Pure The Stream Flows』が先頃リリースになり、ゴリラズのバーチャルライブの模様などをまとめた映像作品『Gorillaz ソング・マシーン・フロム・コング』も2021年12月8日(水)から一部の劇場で公開になる。この機会に彼のディープな音楽性を是非チェックして頂きたいと思う。

©2020 Gorillaz: Song Machine Live From Kong

文:森本康治

『LUCY/ルーシー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年12月放送
『Gorillaz ソング・マシーン・フロム・コング』は2021年12月8日(水)より公開

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『LUCY/ルーシー』

10%しか機能していないと言われる人間の脳。しかしルーシーの脳のリミッターは外されてしまった――。
ごく普通の生活を送っていた女性ルーシー。ある日、マフィアの闇取引に巻き込まれてしまい、そこで起こったアクシデントによって彼女の脳は異変をきたす。「人類の脳は10%しか機能していない」と言われるが、ルーシーの脳は覚醒し、次々と人智を超えた能力を発揮し始める。脳科学者ノーマン博士は彼女の脳の可能性を信じ、落ち合う約束をする。一方、マフィアは行方をくらませたルーシーを巨大な組織全体で追い詰めていく。マフィアの裏をかき、博士の元へ向かうルーシーは次第に人間性を失い、自分自身でさえもコントロール不能な暴走状態へと陥ってしまう。覚醒の勢いは誰にも止めることはできない――彼女の存在は、人類を破滅に導くのか、それとも、救いとなるのか…。

制作年: 2014
監督:
出演: