アニメ版から現代的な躍進を果たした実写版『ダンボ』は感動作に!

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ライター:#アナイス
アニメ版から現代的な躍進を果たした実写版『ダンボ』は感動作に!
『ダンボ』©2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
あのティム・バートンが新たに手がけたのは、誰もが知っている「ダンボ」の実写化! ポップでハートフルかつどこかダークな世界観で多くの映画ファンを魅了してきた鬼才が、ディズニーの傑作アニメを独自の視点で描く。
※映画の結末にある記述があるので、予めご了承下さい。

アニメ版『ダンボ』の何が忠実に再現され、何が変わったのか

『ダンボ』©2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

まず、アニメ版で皆に愛されている名シーンやキャラクターが、しっかりと実写で再現されていることを挙げたいと思います。アニメ版『ダンボ』のオープニングではコウノトリが動物たちに子供を運んできて、翌朝にサーカスの蒸気機関車ケイシー・ジュニアが次の地に向かっていくシークエンスがあります。この蒸気機関車ケイシー・ジュニアが、実写版ではかなり忠実に再現されています!そして、アニメ版のようにアメリカ大陸のマップを通してどんどん移動していく印象的な描き方も、そのまま。

しかし、このシーンの中で実はアニメ版と全く異なる演出が密かにされています。それは、ケイシー・ジュニアを追いかける子供達。白人と黒人の子が混ざって、一緒に遊んでいるんですね。

1941年に公開されたアニメ版では、夜中に貨物列車から出てきた黒人たちが“俺たちはハッピーな労働者”ソング「テント張りの歌」を歌いながら、サーカス会場を組み立てていくシーンがあり、この時の黒人の階級の低さがしっかり描かれています。しかも、ダンボを散々笑って意地悪をし、ネズミのティモシーに説教をくらったカラスたちは“黒人”を表現したキャラクターたちでした。

それに対して実写版『ダンボ』では、テント張りという裏方として扱われていた黒人はしっかりサーカス団の仲間として登場したり、中にはインド人の蛇使いもいたり、国籍の多様性が垣間見えました。

物語はダンボ(動物)目線ではなく、人間視点で描かれるように

『ダンボ』©2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

アニメ版では、サーカスのショーで大きすぎる耳を笑われたダンボがショックを受けて泣いているのをよそに、ピエロたちが「大ウケだったな」「この調子でもっとスケールを大きくしよう」「タワーの高さを30メートルに!」と、打ち上げで好き勝手に言うのです。この時、一人のピエロが「おい、あの子象を傷つけないでくれよ」と言うのですが、仲間が「象に感情なんてありゃあしない」と返すんですね。アニメ版のダンボはとにかく人間のエゴに振り回され、笑われ、過酷な環境にいました。

しかし、実写版ではその当時「フリーク」と呼ばれ、“変わっている”と後ろ指をさされていたサーカス団員たちが、同じく異形の象のダンボを家族のように感じ始めます。血の繋がった家族だけでなく、サーカス団という家族体系にある人間の視点で物語が描かれるのが最大の特徴です。

ダンボが飛ぶ姿には、思わず涙が

実写版には「家族」以外にもアニメ版から継承されたメッセージがあり、大きな感動を生みます。それは「信じて突き進めば、不可能は可能になる」ということです。

曲芸乗りの元看板スターのホルトの娘ミリーはマリ・キュリー夫人を尊敬し、科学者になることを夢見る少女。この映画の時代設定は1919年で、まだまだ女性の社会的進出は珍しいものでした。実の父親ですら、「不可能だ」と馬鹿にしていました。

しかし、ミリーは、ダンボが耳を使って飛べることを発見すると“実験と訓練”を重ねて「空飛ぶ子象」を実現させるんですよ。日々の積み重ねによって、不可能を可能にしたミリーとダンボがすごく素敵でした。

そして、ついにサーカスで初めてダンボが飛び回るシーンでは、映像の美しさもありましたが、純粋に感動して思わず涙が出てしまいました。

ティム・バートン監督だったから、ダンボを救えた

『ダンボ』©2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

ティム・バートンはもともと、ディズニー・スタジオ出身の監督です。ディズニーに所属していた時代から周りに溶け込むことができず、いつも浮いた、変わり者だったそうです。ダンボは、まさにそんなティム・バートンのような「変わり者」が自己投影できるキャラクターなのです。ティム・バートンにとって『ダンボ』は特別好きな作品だったそうです。

アニメ版から大幅に変更されたラストシーンは、何よりもティム・バートンらしいものだったと思います。

それは、ダンボと母象がジャングルに帰ることができたシーンです。アニメ版は、ダンボが空を飛び、サーカスの花形になったことで隔離されていた母象と再会できたというエンド。実は、サーカスに縛られているまま終わっているのです。依然としてサーカスで働き続けるという、人間のエゴに囚われたままのものです。

実写版では、巨大テーマパーク「ドリームランド」を経営する企業家ヴァンデヴァーが母象を始末しようとしている事を知ったメディチ・サーカス団が、「ドリームランド」からダンボと母象を連れ出そうと懸命に動きます。さらに、脱出させた直後に船に乗せて、そのまま自然に返します。

サーカス団は、動物を操って興行収入を得るものでした。しかし、最後は動物に頼らず自分たちの芸だけでサーカスをやってみるのです。これが実写版の大きな救いの部分で、「よかったなあ」と強く思える部分です。

ぜひ、大きなスクリーンでこの感動を味わってほしいと思います。あの“ピンク・エレファント”もティム・バートン節満載で実写化されているので、お楽しみに。

文:アナイス

『ダンボ』は2019年3月29日(金)より全国公開

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『ダンボ』

“大きすぎる耳”を持ちサーカス団の笑いものだったが、やがてその大きな耳を翼にして空を飛べるようになる。金儲けを企む興行師によって母象と引き離されてしまうダンボだったが、ダンボの姿に勇気付けられたサーカス団の仲間とともに、母象の救出に挑む!大空を舞うダンボが、世界中に“勇気”を運ぶファンタジー・アドベンチャーが幕を開ける!

制作年: 2019
監督:
出演: