漫画と映画の“相思相愛”が実現! 監督&原作者インタビュー『子供はわかってあげない』 沖田修一×田島列島

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ライター:SYO
漫画と映画の“相思相愛”が実現! 監督&原作者インタビュー『子供はわかってあげない』 沖田修一×田島列島
『子供はわかってあげない』🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

話題の漫画を気鋭監督が実写化

「マンガ大賞2015」第2位にランクインした、漫画家・田島列島の長編デビュー作「子供はわかってあげない」が、沖田修一監督によって実写映画化された。

2020年の第24回手塚治虫文化賞新生賞に輝いた「水は海に向かって流れる」など、優しいタッチとほほ笑ましいセリフ回しの中に、豊かな人生観が感じられる田島氏の作風は、沖田監督とも相性抜群。両者のコラボレーションに、心が躍ったファンも多いことだろう。

『子供はわかってあげない』🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

映画『子供はわかってあげない』(2021年8月20日[金]より全国公開、テアトル新宿で先行公開中)は、高校生たちのひと夏の冒険と成長を描いた青春物語。水泳部の美波(上白石萌歌)と書道部の“もじくん”(細田佳央太)は、アニメ「魔法左官少女バッファローKOTEKO」のファンということから意気投合。その後、美波がもじくんのきょうだいで探偵の明ちゃん(千葉雄大)に「本当の父親捜し」を依頼したことで、2人の運命は大きく動き始める――。

今回は、沖田監督と田島氏に単独インタビュー。共通項も多い、両者の制作スタイルを伺っていく。笑いの絶えなかった取材時の雰囲気を、ぜひ楽しんでいただきたい。

田島列島 沖田修一監督

お互いの間に、シティボーイズがある

―まずは、お互いの作品との出会いを教えてください。田島先生は「この漫画がすごい!」のインタビュー(2015年1月掲載)で「『南極料理人』(2009年)が面白かった」と話していましたよね。

田島:そうですね。ただ私は公開時には観られなくて、『半沢直樹』(2013年)で堺雅人さんがブレイクしたときくらいに「あっ堺さんが出ている」と思って観て、すごく好きになった記憶があります。ちょうどそのころは、手当たり次第に映画を観ている時期でした。

沖田:僕は漫画をそんなにたくさん読むほうではないのですが、本屋さんで表紙を見たときに「面白そうだな、読みたいな」と思い、何気なく手に取って購入しました。上下巻という読みやすさも大きかったかもしれません。

田島:あと、私と沖田さんの間にはシティボーイズが挟まっている気がします(笑)。

沖田:確かに(笑)。漫画にこっそりシティボーイズの名前が書いてあったので、お好きなのかなと思っていました。

―漫画「子供はわかってあげない」を読んだ際、セリフ回しの面白さがとても印象に残りました。これは沖田監督の作品にも通じるかと思いますが、印象的なフレーズなどありましたか?

沖田:たくさんありました。例えば「人が自信を持って意見を言う時って、その意見が“誰かから聞いたもの”である時だけなんだって」とか。確かにそうだよな、いいこと言うよなと思いました。ただ、映画には出てこないんですが……(笑)。

『子供はわかってあげない』🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

―田島先生は創作にあたって「ギャグを削ることも多い」とお話しされていましたが、次々と面白いセリフが浮かんでくるのでしょうか。

田島:どうなんでしょう、基本ふざけたいのかな……。あんまり人を笑わせようとは思っていなくて、割と無自覚だと思います。普通にしゃべっているときに基本ダジャレを言っちゃって、引く人もいるけど止まらないみたいな感じですね(笑)。

沖田:おじさんみたいな(笑)。

田島:そうそう、おじさんみたい(笑)。

『子供はわかってあげない』🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

「原作執筆中、10キロやせた」逸話の真相

―田島先生が初の長編「子供はわかってあげない」のネームに取り掛かったのは、2013年の秋と伺いました。2カ月引きこもって20話を描き、10キロやせたとか……。

田島:そうですね。でも、つらかったというより楽しかった記憶があります。実はあの頃、食事方法を間違えていて(笑)。1日1回しか食べなければ若返るみたいな情報を鵜吞みにして、その状態でネームをやっていたらガンガン痩せちゃって……あれは良くなかった(笑)。

沖田:(笑)。田島先生は、ネームを描いてるときとかは笑ってるんですか?

田島:どうでしょうね……一人だからわからないですが、ニヤニヤはしているんじゃないかな(笑)。

沖田:そうですよね、本人はわからないですよね。僕もよく俳優さんに「現場であんなにゲラゲラ笑っている人を見たことがない」と言われるんですが、本人はよくわかっていない(笑)。

―田島先生は、執筆中は洋楽かインストゥルメンタルを聴くと伺いました。

田島:そうですね、日常とは違うチャンネルを入れるようにはしています。沖田監督はいかがですか?

沖田:僕も聴きますね。ただ、僕の場合はスイッチを入れるというより、寂しいから聴いている感じです(笑)。気づいたらCDが終わって無音になっている……。

田島:(笑)。

沖田:昔はタバコを吸っていたので、タバコとかコーヒーとか、寂しいから音楽とか……。そういうものを用意して書くことが多いですね。たまたま脚本を書いているときに聴いていたミュージシャンの方に主題歌を書いてもらうこともあるので、どこかでつながっているかもしれません。

『子供はわかってあげない』🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

沖田監督流、本屋さんの回り方

―田島先生は多摩美術大学の映像演劇学科を卒業されていますが、昔から映画に慣れ親しんでいたのでしょうか。

田島:そうですね。訳が分からないものでも背伸びして観ていました。映像を学びたいと思ったのは、高校生のときに北野映画を観たからです。『HANA-BI』(1997年)なども好きなのですが、一番は『菊次郎の夏』(1999年)でした。

―『子供はわかってあげない』にも通じますね。

田島:やっぱり、という感じですよね(笑)。ちょっと夏の雰囲気が漂う作品ですね。

―漫画だと、幼少期は「ちびまる子ちゃん」くらいしか読んでいなかったと聞きました。坂口安吾の影響も受けたとおっしゃっていましたが、小説もかなり読まれますか?

田島:そうですね。これを書いていた頃は伊坂幸太郎さんを読んでいた気がします。

『子供はわかってあげない』🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

―先ほどの原作との出会いの話にも通じますが、沖田監督は、本屋さん通いをよくされるとお聞きしました。

沖田:はい。本屋さんが好きなんですが、どんどんなくなって来てしまって寂しいですね。大型書店などに行くと、いまだに長居しちゃって帰れなくなります(笑)。

―本屋さんをどういう風に回るかも性格が出るかと思いますが、沖田監督は、本屋さんに行くといつもどんな感じで回るのでしょう? 気になります。

沖田:映画雑誌のコーナーは何となく怖くて立ち寄らなくて……(笑)。旅行雑誌が置いてあるコーナーに行って「どこか行きたいな」と思いつつ、小説や漫画のコーナーに行く感じですかね。小説なんかは、頭数ページをちらっと読むと「あぁ、もう無理だ」と感じて買っちゃいます。本屋さんは、いきなり訳が分からない本に出会ったり、自分が全く興味がないジャンルにも触れられるから面白いですよね。

原作ファンに「安心して」と伝えたい出来栄え

―『子供はわかってあげない』は、沖田監督にとって初めての漫画原作です。

沖田:そうですね。ただ、田島先生の作品は生身の人間がやっても無理がないと思います。がっつり変えてしまった部分もいっぱいありますが……(笑)。

田島:(笑)。

沖田:漫画の実写化って、結構「俳優さんが責任を取れ」みたいな感じが多くて、無理なことをやらされているものもあるかと思うのですが(笑)、田島先生の作品においては生きている感じがすごくしたんです。難しくはありましたが、原作自体のキュートさは壊しちゃいけないと思ったし、それは生身の人間がやってもちゃんと出ると感じていました。

―豊川悦司さんが海パン一丁で肉体をさらしていますが、キュートさはちゃんと保たれていますもんね。

沖田:(笑)。ちょっと前にテレビで『愛していると言ってくれ』(1995年)の再放送をやっていたのですが、本作とは全く違いましたね。カッコよかったです。

田島:この人にブーメランパンツを履かせてしまった……(笑)。

沖田:頑張ってくれましたよね(笑)。でも、衣装合わせでお会いしたときから今回の役の雰囲気を醸し出していたから、最初からそんな気持ちで臨んでくれていたんだと思います。すごいなと感じましたね。

―田島先生は、映画版をご覧になっていかがでしたか?

田島:私の漫画を大切に想ってくれている人たちに「安心してください」と伝えたい感じでしたね。

沖田:ああ、それは嬉しいなぁ。

田島:世の中には、ひどいことになっている実写作品もありますから……(笑)。

沖田:(爆笑)。

田島:本作は、最高でした!

『子供はわかってあげない』🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

―田島先生は、撮影も見学されたんですよね。いかがでしたか?

田島:2019年に、水泳大会のシーンを見させていただきました。みんな暑そうで大変そうでしたね(笑)。カメラマンさんがすごく大きなクレーンを使っていて、こんなに大きいんだ! と驚きました。

―水中映像は、沖田監督にとって初挑戦だったと伺いました。

沖田:そうですね。水中表現はそこまでないのですが、プールだったり海だったり、水場のシーンがたくさんあって面白かったです。

沖田監督の「初挑戦」が随所に詰まった作品

―漫画原作を含め本作は、沖田監督のこれまでとは一味違う挑戦が詰まった映画かと思います。告白シーンも非常にエモーショナルで、泣いてしまいました。

沖田:ありがとうございます。もともと田島先生の原作にあったエモーショナルさをお借りした形ですね。照れというか笑ってしまう瞬間じゃないものが最後に来る、というのが良いですよね。僕も女子高生になったつもりで台本を書き、ストレートにやろう、と思って撮りました(笑)。僕よりも、上白石萌歌ちゃんと細田佳央太くんのふたりが頑張ってくれました。

―沖田監督はこれまで山崎努さん、樹木希林さん、田中裕子さんといった錚々たる名優たちと組んでこられましたが、以前「若い役者のほうが緊張する」とおっしゃっていたのが印象的でした。上白石さんと細田さんには、どんな声をかけて演出されたのでしょうか。

沖田:準備する時間もあったし、3人で話をしながら緊張を解きつつ……。2人が美波ともじくんになっていく貴重な時間をクランクインの前に作ることができたのが、大きかったですね。細田くんは本読みの段階から書道を学んで、文字を書きながらセリフを言ったり、そういった解きほぐす時間をしっかりとれました。ここまで色々と準備した映画もあまりなかったように思います。

書道教室も実際に開催して、細田くんに先生をやってもらったり、上白石さん、古舘寛治さん、斉藤由貴さんら美波の家族を演じてもらった皆さんには遊園地に遊びに行ってもらったりと、初めてそういったアプローチをとりました。原作の中で「人は教わったことは教えられる」というセリフがあって、僕もそうしようと思ったんです。美波の家族のシーンは本当に幸せに見えないと、設定が生きてこないと思いましたし。

―冒頭の長回しの団らんシーンから、最高でした。

沖田:最初は「大丈夫かな?」と思いながら撮っていましたね。ただ、田島先生の子どもの描き方がとにかく面白いから、それをちゃんと撮りたいなと思って準備や練習を重ねました。親戚の子どもが家で遊んでいる姿を撮る、とかじゃないとなかなかあのナチュラルさは出ないんじゃないかと感じていたのですが(笑)、うまくいってよかったです。

『子供はわかってあげない』🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

気合が入りまくったアニメパート

―今回は、アニメーションも豪華です。クオリティが高くて、びっくりしました。

沖田:僕が「『魔法左官少女バッファローKOTEKO』のアニメをちゃんと作りたい」と言っちゃったんです(笑)。面白かったですね。シネコンの劇場、間違えちゃった? とお客さんに思っていただけたらいいなぁ。「アニメ観に来たんだっけ……」と思うくらいの長さはありますから。

―『おらおらでひとりいぐも』の際も、「シネコンに来たお客さんに“間違えたか?”と思ってほしい」とおっしゃっていましたね(笑)。

沖田:続いちゃった……(笑)。『おらおらでひとりいぐも』のほうは、学研風の映像から始まりますからね。今回はアニメチームが本当に頑張ってくれて、撮影時って何もない状態でお芝居することも多いけど、今回は下書きがつながった状態を上げてくれました。実際に流しながら撮影できたのはすごく助かりましたね。

―「魔法左官少女バッファローKOTEKO」の発想は、田島先生のお父さまが左官屋さんだったからでしょうか。

田島:そうです(笑)。しばらく仕事を手伝っていたりもしたんです。

―お話を聞いていると、田島先生も沖田監督も、ご自身の経験が作品に多分に反映されるスタイルなのかなと思いました。

田島:私の場合は完全にそうですね(笑)。

沖田:僕もそうですね。今回のように原作があっても、映画にするとなったら結局自分の話が織り交ぜられちゃう(笑)。それはもう、しょうがないなと受け入れています(笑)。

田島列島 沖田修一監督

取材・文:SYO

『子供はわかってあげない』は2021年8月20日(金)より全国公開、8月13日(金)よりテアトル新宿で先行公開

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『子供はわかってあげない』

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誰にとっても、宝箱のような夏休み。はじまりはじまり~。

制作年: 2020
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