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コント職人にしてフェス主宰者 やついいちろう「『グーニーズ』みたいな小説を小学生の時に書いた」【第2回】

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ライター:#稲田浩
コント職人にしてフェス主宰者 やついいちろう「『グーニーズ』みたいな小説を小学生の時に書いた」【第2回】
やついいちろう(エレキコミック)

やついいちろうのバックボーン

お笑いコンビ・エレキコミックとしてはもちろん、TBSラジオ「エレ片のケツビ!」という番組から生まれたエレキコミックとラーメンズ・片桐仁との「エレ片」というユニット活動、2021年で10周年を迎えるサーキット型フェス「YATSUI FESTIVAL!2021」(以下「やついフェス」)の主宰など、精力的な活動でコアな支持を集める芸人・やついいちろう

フェス主宰者だけあって音楽にも造詣の深いやついだが、今回は映画をテーマにロングインタビューを敢行。「やついフェス」への並々ならぬコダワリを明かすやついは、どんな映画や音楽を愛し、どのようにお笑いに取り入れてきたのか? 幼少期の映画体験から小説にハマった思春期まで、稀代のコント職人のバックボーンに迫る。

「フェスはあらゆる人が喜んでくれたし、自分も嬉しかったから続けていられる」

―ベテランもいれば中堅もいて、やついさんが見つけた新人もアイドルもいる、それが「やついフェス」ということですよね。

そういう部分は多いかもしれないですね。往年のアイドルのすごさを見る機会が全然ないから、あえてブッキングするとか。“アイドルフェス”って言ってるのに、なんで松本伊代さんや南野陽子さんが出ないんだ? とか。それ、アイドルフェスっていうか“若い女の子のフェス”だろって。往年のアイドル見るのってその人たちのコンサートだけで、どのフェスもコミットできてないじゃんっていう。

―フェスのいいところって、そういう部分のはずですからね。

だから、そういう人たちに出てもらいたい。どこにもコミットしてない良いものがあるから、出てもらうことでまた違ったフェスになるんじゃないかなと。そういう意味でお声がけしています。なんだかんだでもう10年やってますからね。

―10年って一言で言うのは簡単ですけど、それを毎回オーガナイズするのって、かなりのカロリー消費ですよね。

反応が良かったんだと思いますね。世間的に評価されてる部分では、僕がやってきた仕事の中ではいちばん大きかったのかなと思います。だからこれが向いてるのかなと思ったりもしたし。やっぱり求められてるものをやりたい! っていうのはあるじゃないですか。俺、売れたくないわけじゃないんで(笑)。

売れたら売れたで良いけど、とにかく無理したくないっていうのはあるし、責任を取るのは顔を出してる俺になる。若い時はそれで嫌な目にあうことが多かったから、とにかく自分の名前でやる場合は、もし不評であっても「しょうがない、それは俺のせいだ」と言うことにしないと納得がいかない。そういう中でもフェスはあらゆる人が喜んでくれたし、(自分も)嬉しかったから続けていられる部分はあるかも。それがいちばん良い形になってる。

―「やついフェス」のお客さんというのも、ちゃんと育っている。

そうですね、僕たちのお笑いのファンではない場合もあるし。20代後半から40代、僕ら世代の人たちまで。20代前半のお客さんもいるとは思いますけど、10代はあんまりいないんじゃないかなって。ビッグフェスに出ている系じゃないバンドの人たちの方が多いから。渋さ知らズオーケストラとか10代で追っかけたりするのは稀でしょうし、あとアイドルのファンも10代が少ない印象。今の10代が今普通に好きなものはYouTubeのアーティストだったりするから。

―そうやって時代も感覚もどんどん変わっていってますからね。

かたや、古い音楽をめちゃディグる子もいるじゃないですか。10歳にもなってないのに親の影響でザ・ブルーハーツが好きな子もいるし。僕らのライブにも8歳くらいの子が、お父さんお母さんに連れられて来ますからね。

「カツアゲ被害を辞さない覚悟で見に行った映画は“大人”のイメージ」

―やついさんの幼少期はどんな感じでしたか? よく映画を見られたりはしてたんでしょうか。

小学生の頃、映画を見に行くというと大人のイメージでしたね。カツアゲされかねないというか。小学校の校区外に行かないと映画館行けないから、そうすると小学生からするとジャングルなわけですよ。それで必ずカツアゲされるから、それを乗り越えてでも行く。カツアゲ被害を辞さないで映画を見るのが大人だったんですね、常にお金はパンツとか靴に隠して。それくらい恐れてたんですけど。

―それ、日本の話ですか?(笑)。

あと映画音楽が流行ったんですよ。それでラジオでずっと聴いてました。洋楽イコール映画音楽だった。そこから「この歌いいな」みたいな。ビジーフォーのモノマネから洋楽に入って、サイモン&ガーファンクルとか。だから僕の中では、映画は大人のイメージでしたね。VHSもないし、映画を見ようとしたらテレビで見るか劇場で見るくらいですから。今より映画を受け取ることが特別だったかもしれない。だから映画音楽の番組がラジオであるから、それを聴くとか。

―その頃、一人で見に行ったものや主体的に見に行った作品は?

偶然見に行って「面白い!」っていうのはあるんですよね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)とかは何度もテレビで再放送してたから、親戚の家に遊びに行った時にVHSに録画してたんですよ。みんなが外で遊んでる間にひとりで再生してみようと思ったら、それまで全然知らなかったんですけど、衝撃的に面白くて。こんな最悪の環境で見てここまで面白いってことは、これは相当だなと。それで続編は全部、映画館に見に行きましたね。

―スケボーなどもカッコ良かったですしね。あの辺りは洋楽が盛り上がるきっかけの一つでもありましたよね。

あと『グーニーズ』(1985年)も好きでしたね。影響受けすぎて、小学生の時に『グーニーズ』みたいな小説まで書きました。国語の授業の時、地図の絵を見せられて「この地図を想像して物語を書こう」っていう授業があって、それで『グーニーズ』と「ズッコケ三人組」が好きだったんで、それを混ぜた物語を。他のみんなはそんなにやる気なかったから短く済ませてたのに、俺だけ異常に長く書いちゃって。ノッちゃったんでしょうね。「アットランダムス」ってタイトルの青春ストーリーなんですけどね。

―しかもカッコいいじゃないですか(笑)。

初期から結構、垢抜けてたんですよね作風が(笑)。残ってたら読みたかったなあって思うんですけど。それをクラス図書みたいに、バインダーに全員ぶん挟んで教室にずっと置かれてたんですよ。そのままどこかに行っちゃいました。

―友達からの反響はありましたか?

大反響って感じじゃなかったですけど、(書くことが)楽しかったっていうのはありますね。そこから中2の頃に小説ブームっていうのがきて、授業中に書いて友達に読ませてたりしましたね。

「中高生時代は音楽。映画をぐわーっと見始めたのは大学に入ってから」

―当時から小説も読まれていたんですか?

読んでないと思いますよ。いや、読んでたかな? アルセーヌ・ルパンは読んでましたね。小さい文字でいっぱい書いてある本を読むとカッコいいっていう思想があったんですよね。だから友達と負けじと読んでたっていう。面白かったかどうかは分からないけど。

小説って言っても笑わせようと思って書いてるんで、むしろお笑いの台本みたいな。授業を聞かずに書くから成績ガンガン下がって、それで途中でやめたんですけど。中3になったくらいで断筆しました。って映画の話、全然してない(笑)。

―中学~高校生時代には映画を見ましたか?

見てましたね、でも音楽を聴いてましたね。ザ・ブルーハーツとかザ・ピーズとか、当時はバンドブームでしたから。僕がよく聴いてたのはカステラ。カウンターでしょ(笑)。でもバンドをやりたい! とは思わなかったんですよね。見たことないんだけど、演劇は面白そうだなとか。そういうことがやりたかったんでしょうね。

本当に映画をぐわーっと見始めたのって、大学生になってからかな。何見てたかな……パトリス・ルコントの『髪結いの亭主』(1990年)、『仕立て屋の恋』(1989年)なんかを見てましたね。『12モンキーズ』(1995年)は映画館に見に行ったのを覚えてます。中学生くらいの時は『カクテル』(1988年)『トップガン』(1986年)も盛り上がってました。一応、教養として見てましたけど、いまいちピンとこなかったんですよね。

やついいちろう

【第3回】に続く

取材・文:稲田浩

撮影:大場潤也

「YATSUI FESTIVAL!2021(やついフェス)」は2021年6月19日(土)20日(日)オンライン/有観客で2DAYS開催

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