「やついフェス」開催直前! やついいちろうが語る映画×お笑い×音楽「売れるかどうかは好きな音楽で決まる(笑)」【第1回】

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
ライター:稲田浩
「やついフェス」開催直前! やついいちろうが語る映画×お笑い×音楽「売れるかどうかは好きな音楽で決まる(笑)」【第1回】
やついいちろう(エレキコミック)

2021年「やついフェス」開催!!

人気お笑いコンビ・エレキコミックやついいちろうが主宰するサーキット型フェス「YATSUI FESTIVAL!2021」(以下「やついフェス」)が2021年6月19日(土)~20日(日)の2日間にわたり、TSUTAYA O-EASTほか複数会場にてオンライン(無料視聴可)/有観客で2DAYS開催。2021年で10周年を迎える「やついフェス」は、ミュージシャンのみならず芸人やアイドルらを招き多くのオーディエンスを熱狂させてきた、やついならではの異種ラインナップによる大規模都市型フェスだ。

TBSラジオ「エレ片のケツビ!」という番組から生まれた、エレキコミックとラーメンズ・片桐仁との「エレ片」としてのユニット活動でもコアな支持を集めるやついに、今回は「やついフェス」開催前という絶好のタイミングで、映画をテーマにロングインタビューを敢行。稀代のコント職人は、どんな映画を愛し、どのようにお笑いに取り入れてきたのか? お笑い界におけるエレキコミックの絶妙な立ち位置や、王道に甘んじること良しとしないやついのポリシー、いちリスナーとしての音楽遍歴まで、納得&驚きのインタビューをお送りする。

「僕らはパロディに対する偏見へのカウンター」

―やついさんのコントにはストーリー性を感じますし、普段どんな映画を見ているんだろう? と気になっていました。

わりと映画で(発想して)作ることが多くて、今までエレキコミックで作ったネタだと『ナポレオン・ダイナマイト』(2004年)とか。今も大好きなんですけど、当時『バス男』っていう最低の邦題(後に『ナポレオン~』に改題)のおかげですごくB級と思われていて、でもめっちゃ面白いです。あれを見て、そのまんま作ったネタがありますね。昔、『ナポレオン~』が公開されてちょっと経ったくらいの時に、自分らの単独ライブでやりました。(学校からの)帰り道に、すげえ遠くまでエロ本を買いに行くのって“あるある”じゃないですか。そういう雰囲気で、たまたま(相手役に)会っちゃうみたいなネタなんです。でも買ってるのはエロ本じゃなくて自己啓発本なんですけど。

―(笑)。

そのネタと、このキャラクター造形とかは完全に『ナポレオン・ダイナマイト』。誰も気づかなかった……一人だけ気づきましたけどね。あと、ちょっと前のエレ片だったらジム・ジャームッシュの『パターソン』(2016年)です。すごく好きだったから、あの空気感を出したくて、片桐(仁)くんが詩人のネタやりましたね。永瀬(正敏)さんとアダム・ドライヴァーを合体させたキャラクターを片桐くんにやらせて。

エレ片 光光☆コントの人 [DVD]

―それはお客さんが元ネタに全然気づかなくてよいわけですよね。そういう時って、メンバーにその映画を見てもらったり?

メンバーには見せない。(見せても)結果そうはならない。片桐くんの体になっちゃうからね。別に真似はしてほしくないけど、イメージ的には『パターソン』に出てきた永瀬さんみたいな感じで。黒いスーツの衣装は完全に永瀬さん。

―映画を見る時に、そうやってネタを探す感覚ってあるんですか?

全くないですけど、結果そうなるってことは多いですね。ネタ作りの時に、例えばちょうど『君の名は。』『シン・ゴジラ』(ともに2016年)が流行ってた時、ネタ作りのとっかかりとしてとりあえず見に行ってみようかなと。そしたら『君の名は。』の世界観が面白かったんで、全体の軸をはめて、そこに違うネタが色々入ってて最終的にはループする、みたいなことにしたりとか。『君の名は。』くらいになると、時代の空気感とかのパロディとかに近いことだと思うんですけど。

―映画など流行っているものをネタにする、引用というかパロディとかって昔は沢山ありましたけど、今はめっきり少ない気がしますよね。

そうかもしれない。お笑いの世界って、パロディに対する偏見みたいなものがいっときあった気がしますね。ある意味、ものすごく強いオリジナル信仰があった時代があった。

僕はそのカウンターとして、自分のお笑いではパロディをバンバンやってこうって(単独ライブの)第一回目から、ずっとそういうスタンスでやってるんですけど、哀しいかなカウンターって時代とともにカウンターじゃなくなっていく。この(カウンターの)前提をみんな忘れちゃうから、僕らも20何年やってて(始めた当時の)カウンターがズレてくる。それで僕らがやってることも徐々にテレビ的なものになっていったりして、「本当は違ったんだけどなあ」みたいなことが起きるとは思ってましたけどね。

例えばサニーデイ・サービスのファーストも、今だったら沢山あるリバイバルの一つみたいな聴かれ方がすごくあるし、気持ちいい音楽みたいに言われたりするけど、当時を経験してる僕からすると異常なほどのパンクさだったんですよね。渋谷系全盛期で手の込んだジャケットばかりの中、70年代風の、言葉は悪いけどダサいジャケットでデビュー(「若者たち」:1995年リリース)するって正気じゃないっていうレベルの、カウンターカルチャーの一個だったと思いますし。

今は、それこそ細野(晴臣)さんとかはっぴいえんどとか皆イイって言うけど、当時は全然そんな感じじゃなかった。小沢健二さんのファーストアルバム(「犬は吠えるがキャラバンは進む」:1993年リリース)あたりでちょっとリバイバルの空気感はあったけど、サニーデイのファーストは決定的だったような感じがして。その時代によって何がカウンターか変わっていくから、そこが面白いなとは思いますけどね。

「好きな音楽で、売れるかどうかが大体決まる理論(笑)」

―自然に音楽の話をされましたが、音楽とお笑い/コントって、やついさんの中では同軸なんでしょうか?

そうですね、最初からそうでした。大学の頃から音楽やりたかったっていうのもありますし、ギター弾けなかったからお笑いやり始めたっていうのがあるんですけど。その時いちばん考えてたのは“リズム”でしたね。とにかく自分たちのリズム作らないと、コントとしてもイマイチだなあと。好きな音楽で売れるかどうかが大体決まる理論っていうのが僕の中であって。

―どういうことですか(笑)。

やっぱり反体制が好きなやつはそんな売れない、みたいな。本当に売れてるものを心底ファンだと言ってる人は、ちゃんとメジャーになるなみたいな気持ちになってます、今の現状見てて。僕にはやっぱりそういう感じの空気感が全然ないし、どうしたってそうはならないなって思ってましたけどね。

―流行っているものをまっすぐ聴くかどうか?

仕事で「好き」って言うんじゃなくて、本当に好きっていうか。そのコミット感っていうのが、やっぱり売れてる人ってそうだなって。どれだけソリッドな感じに見えてても、本質のところは違うんだなと。僕はいつまでたってもそういうものを好きになれないから。そういう音楽を聴こうとした時もあったけど、あんまり……「何がいいんだろう?」って。だから(お笑いでも)大事なのはリズムとテンポ。それは良い悪い、速い遅いじゃなくて、自分の独特なリズムとテンポ。“型”ってやつですよね。「エレキコミックっぽいよね」っていうものにならないとダメだろうなと。

―それは一朝一夕ではできないですよね。エレキコミックの型、リズムとテンポってどんなものだろう? という模索はあったんでしょうか。

それは音楽から影響を受けたものだと思います。何がダサくて何がカッコ悪いんだろう? って、そこは自分の感覚ですけど。だから、かっこいいものには自分なりに影響を受けてる。最初にどういうリズムを叩き出すかが大事だと思ったから、みんながやらない時にパロディやったりしてたんです。

コントの方法で言うと、「コント、医者」みたいに言って始めるのがダサいとされていて、自然にコントに入って段々設定が分かってくる方が優れたものだっていうような文脈があるんですけど、だからこそあえて逆にやるというか。「先輩と後輩が色々喋るネタです」って最初に説明しちゃうとか。

その方法だけ取るとダサいんだけど、カウンターだとカッコよくなるみたいな前提をみんなが理解できてたら、それがある意味カッコよくなる。でも、しばらくやり続けてるうちに前提を知らない世代が来て「ただそういうのをやってる人」と思われちゃうから、難しい部分もありますよね。どこかで変えたり、やめないと。

「新ネタを作り続けている芸人の今=到達点がいちばん面白い」

―そうやって音楽とお笑いを同軸で考えている人は、他にいるんでしょうか?

全然わからない。年に1枚アルバムを出す感じで毎年、単独ライブを1枚出してる。それだけです。だからアルバムを30枚出してる。結構な大御所なんですよ(笑)。

―アルバムを作り続けるって、すごいエネルギーですよね。作ることをやめてしまう人もいるじゃないですか。

アルバム作るの好きですね。今、本当の意味でのアルバム・アーティストって存在しづらいじゃないですか。必要としてる人が少ないように感じるというか。1曲ずつダウンロードされちゃうから、あと感覚的に無料でニューアルバム聴けちゃうから、雑に扱われちゃうんですよね、その中からチョイスされて丸ごと聴かれないってことが結構あるから、ミュージシャンもアルバム作る気なくなるんじゃないかなと。

―でも単独ライブはアルバムでありツアーでもあるから、割とそこはお客さんとのダイレクトなリレーションがありますよね。

そこがまだお笑いのいいところであり、悪いところなんだけど。古いネタに価値がない。新しいネタに価値があるから、そこが音楽と違うかなと。新曲に価値があるのって最初だけで、中堅バンドになってくると新曲を聴く人はほとんどいなくなる。

僕の感覚からすると、テレビでコントやってた時よりも(単独ライブを重ねている)今の自分のコントの方が、どう考えても面白いんですよね。でもイメージ的には、テレビに出てた時のコントの方が優れてる、ということになってる。その感覚は音楽と一緒だからよくわかります。ヒット曲をやってた時が最高で、現在の50代くらいのミュージシャンの出す新曲が、さあどれだけの人がどれだけの気持ちで聴いてくれるか? って言ったら、そこまで聴いてくれないかもしれない。

僕の感覚からすると、絶対こっち(新しい)の方がいいはずなんですよ。ここ(昔)を通り過ぎて、ここ(新曲)に来てるわけだから。だから、なんで聴かないのかなっていう気持ちもあるし。お笑いも一緒で、今でも続けてる人、同じネタをやらないで新ネタ作り続けている芸人の今現在の到達点みたいなものは、いちばん面白いから見るべきなんじゃないかと。

取材・文:稲田浩

撮影:大場潤也

「YATSUI FESTIVAL!2021(やついフェス)」は2021年6月19日(土)20日(日)オンライン/有観客で2DAYS開催

Share On
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • BANGER!!!
  • 映画
  • 「やついフェス」開催直前! やついいちろうが語る映画×お笑い×音楽「売れるかどうかは好きな音楽で決まる(笑)」【第1回】