マッチョなヴィシャールが復讐に燃える!『ACTION アクション!!』は“世界”が舞台のマサラアクション

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ライター:安宅直子
マッチョなヴィシャールが復讐に燃える!『ACTION アクション!!』は“世界”が舞台のマサラアクション
『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

タミル語映画の中堅スター&監督タッグ作

日本では初登場となるタミル語映画界の中堅スター、ヴィシャールが世界を股にかけて暴れまわる『ACTION アクション!!』をご紹介します。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

監督は、こちらも中堅のスンダル・C。この監督は2013年に『Theeya Velai Seiyyanum Kumaru』(原題:2013年/日本未公開)のソングシーン撮影のために、日本の富山県にやって来たことでも話題になった人です。

同作のような軽いタッチのラブコメやファミリードラマに定評のある監督なのですが、『アクション!!』ではうって変わって、テロリストを追跡して世界を駆け巡る、タイトル通りにハードなアクション映画となっています。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

インドのチェンナイからロンドン、イスタンブール、そしてパキスタンへ

インド陸軍将校で、なおかつタミルナードゥ州の州首相の次男であるスバーシュ大佐は、家族を巻き込んだ大規模テロ事件に遭遇します。怪しい人物を追跡するうちに、裏にいるのはインド出身の国際的テロリストのマリクだということが判明。事件は彼の単独犯行ではなく、インドと敵対するパキスタンの軍部やインド国内の政治勢力も絡んでいる可能性が覗えます。実行犯を追ってスバーシュはまずロンドンに飛び、その後トルコのイスタンブールで同僚のディヤーと合流。さらには西アジアを横断してパキスタンのラホールへと追跡を続ける、というのが大筋です。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

ただし本作、スンダル・C監督の本領発揮とでも言うべきなのか、緊張感を持続させるエッジの立ったサスペンスというよりは、ややオールド・ファッションなあれやこれやも目立ちます。

まず第一に、主人公が世界中を駆け巡るのに行く先々の人々がほぼ全員タミル語を喋るという点。これはインド映画の大きな特徴である、耳から入る音声としてのセリフを重視し字幕という形での文字情報を追うことを嫌う、観客の嗜好性から来ています。近年、英語字幕付きプリントの供給も増えてはいるのですが、圧倒的多数の大衆は、たとえリアリティーが損なわれるとしても母語に吹き替えられたセリフを聞くことを好むのです。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

インド映画がそれぞれの地方の言語で分かれて各映画界が並立していること、またインド全体の映画市場における国産映画の占有率が驚異の89%(2018年のデータ。ちなみに日本は55%弱)であることには、こうした嗜好性も要因としてあります。本作中で外国人や北インド人が全てタミル語を話すことについては、わざわざ冒頭で断わりがなされるのですが、これを言うためだけに出てくるナレーターは、タミル語映画界で絶大な人気を誇る“あの人”です。冒頭のこの1カットだけで、タミル語映画ファンは随分お得な感じを持つでしょう。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

古風さその2は、物語の舞台と実際のロケ地との乖離です。もちろん、ハリウッド大作であっても、様々な理由から設定とは違う場所でのロケというのはよくある話で、責められるべきものではないのですが、本作でのそれはなかなかに大胆です。「カリブ海の島」というテロップと共に画面に映るのはタイのピーピー諸島。ロンドンのシーンの大部分とイスタンブールのシーンの一部が撮影されたのは、カスピ海沿岸のアゼルバイジャンの首都バクー。後半の山場でパキスタンのラホールとして画面に映るのは、マンダーワーをはじめとしたインド国内ラージャスターン州の町であるようです。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

その3は、アクション・スリラーであっても何やかやと入り込んでくる、コメディ、家族センチメント、両手に花といった趣のツイン・ヒロイン(敵役の女性キャラも含めればトリプル・ヒロイン)、そのヒロインたちによるダンスなど。そうしたマサラ要素を盛り盛りにするためになのか、スリルを演出するはずのハッキングのシーンや空港保安システムの描写などはかなり大雑把なものになっています。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

肉体派のヴィシャール、妖艶なタマンナー、トップ・コメディアンのヨーギ・バーブ

突っ込みめいたことばかり書いてしまいましたが、こうした作風は、インド現地の幅広い観客にアピールするために必要な技法として意識的に採用されたのでしょう。そして、肉体派アクション・スターとしてのヴィシャールの魅力は、売れっ子アクション監督デュオのアンバリヴ(これまで手がけた作品には『マーヤー』[2015年]、『帝王カバーリ』『24』[2016年]、『双璧のアリバイ』『囚人ディリ』[2019年]など)によって十二分に引き出され、息もつかせぬチェイス・シーンの連続となっています。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

ヴィシャールの独り舞台に近い165分の中で、さすがの存在感を示すのが『バーフバリ』二部作(2015年/2017年)のタマンナー。軍服姿の凛々しさとダンスシーンでの妖艶さのコントラストが強烈です。そして中盤での限られた出演ながら、顔を出しただけで笑わせてくれるのが大人気コメディアンのヨーギ・バーブ(『キケンな誘拐』『チェンナイ・エクスプレス 〜愛と勇気のヒーロー参上〜』[2013年]、『僕の名はパリエルム・ペルマール』[2018年]ほか)です。本作での彼の役どころを聞くだけで思わず笑ってしまいますが、それが何かはお楽しみです。

『ACTION アクション!!』© TRIDENT ARTS

文:安宅直子

『ACTION アクション!!』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:ハマる!インド映画」で2021年7~8月放送

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『ACTION アクション!!』

インド陸軍大佐として活躍するスバッシュは、婚約者のミーラを爆破テロで亡くし、次期州首相である兄サラヴァナまでも不審な死を遂げた。選挙前の混乱で暴動が起こる中、監視カメラの映像から2人の死に共通する人物を見つけたスバッシュは、プロの殺し屋であるその女・カイラを追ってロンドンへ飛ぶ。

制作年: 2019
監督:
出演:
  • BANGER!!!
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