ヒトラーと東條英機がガーナを征服!?『アフリカン・カンフー・ナチス』はコダワリとツッコミどころ満載のパンクな怪作

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ヒトラーと東條英機がガーナを征服!?『アフリカン・カンフー・ナチス』はコダワリとツッコミどころ満載のパンクな怪作
『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

『アフリカン・カンフー・ナチス』、なかなかにすごい映画だった! 第二次大戦後、あのアドルフ・ヒトラーと東條英機が生きていた!? そんなトンデモから始まる本作。うん、ヒトラー……似てないぞ! 東條英機……似てないぞ! だがそれでいい! この映画は、それでいい!!

人によっては「けしからん!」と怒り出しそうなツッコミどころ満載。さて、どこから手をつけようか……。

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

ガーナ人キャストのアクションは必見!

実は生きていたヒトラーと東條。逃げ延びた先のガーナを制圧すると、空手と魔術的パワーを持つ日独同盟旗「血染めの党旗」を用いて現地の人々を「ガーナアーリア人」として洗脳し、世界を侵略するための拠点を築いていく。圧政の中、心優しき地元の青年アデーは、ヒトラーたちに地元のカンフー道場を潰され、愛する恋人を奪われてしまう。復讐を誓ったアデーは最強のカンフーを習得するため、過酷な修行に身を投じていくが……。

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

そんな本作の脚本を手掛けたセバスチャン・スタインは、「ガーナのジョージ・ルーカス」と呼ばれているらしい“ニンジャマン”なる人物と共同監督を務めている。ヒトラー役として出演もしているスタイン監督は酩酊しながら本作の脚本を書いたそうで、本人いわく「神のインスピレーション」によって突き動かされ、たった2日間で仕上げたそうだ。

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

幼少期にブルース・リーよりジャッキー・チェンの方が好きだったと語る監督は、当時の憧れをたっぷりと本作に盛り込んでいる。カンフーの師匠はどこかで見たことのある風貌だし、お馴染みの“指でクルミを割る”シーンにはやはり心が躍る。カンフーの流派? 型? の名前もなかなかセンスがよく、影蛇拳、月輝拳、鋼輪拳など「魁!!男塾」や「北斗の拳」に出てきそうな、俺の心をくすぐるネーミングセンス!(一応調べましたが実際にはそんな流派はあリませんでした! 当たり前か!)

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

また、B級映画の殺陣やアクションはクオリティが低くゲンナリしがちだが、『アフリカン・カンフー・ナチス』は一味違う。そう、アクションがちゃんとカッコいいのよ! 全身バネのように飛んだり跳ねたりしながらカンフーを繰り出す様は、そこいらのアクション映画にも負けてない!!

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

パンクバンド出身の監督のこだわり(と思いつき)満載

スタイン監督の父親はドイツ人で、強制労働をさせるためにドイツに連行されてきたウクライナ人の祖母とロシア人の祖父の間に生まれた母を持つ。その祖父は反スターリン派だったため亡命生活を余儀なくされ、母の継父はホロコーストサバイバーのユダヤ人だそうだ。

そんな複雑な家系で育ち、幼少期にナチスの歴史や自国の暗い歴史を学んだ監督ならではの皮肉たっぷりなユーモアが、自身にヒトラーを演じさせたのだろう。作中のヒトラーのスピーチも、ほとんど当時彼が実際に行ったスピーチと同内容で、「ドイツ」を「ガーナ」に置き換えているだけだそう。一見するとバカみたいなタイトルと内容だが、こだわりと情熱と勢いで突き進んでいる映画なのだ!

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

また、思春期にパンクバンドで活動していたという監督は、ヒトラーのモノマネをしながら女性ものの下着とブーツ(時にはブーツだけ)を履いて、演説するように歌うパフォーマンスをしていたんだとか。その当時、ミュンヘン郊外の村でライブをしたとき、そのパフォーマンスに怒り狂った地元の右翼青年たちに顔面パンチされたという話は、とっても共感できる!(笑)。

KING BROTHERSが2018年にヨーロッパツアーをした時、ドイツのある町でライブ中に盛り上がったお客さんがオイタをしてケンカ騒ぎになったのを思い出した。あれは最高に楽しかったな!

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

とにかく(映画の内容とは直接関係ない)情報量がすごい

話を映画に戻そう。本作の日本語字幕は全編なぜか関西弁で構成されているのだが、意外にもテンポ感や言葉選びのテキトーさが映画の内容と好相性。それでも少し違和感を感じてしまうのは、いま僕が関西在住だからなのか、単に関西弁字幕に慣れていないのか……たぶん後者だろう!

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

そして忘れてはならない重要なキーマン、お腹だるんだるんの東條英機を演じたのは、日本人の秋元義人という人。もちろん全編バリバリの日本語を話す(お前は関西弁じゃないんかい!)。彼は日本で便利屋をしているそうだが、わざわざガーナまで渡って出演する熱意! なんかもう、いちいちカオスだなぁ(笑)。

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

ガーナの国民的なお酒だという「アドンコ」をすごく推してるのも、ひょんな出会いからアドンコとのタイアップが決まり、宣伝大使である“アドンコマン”が映画に出ることになったそうで、とにかく(内容とは直接関係ない)情報量がすごい!!

東條役の秋元氏がよく分からない色んな動物に噛まれたり、小道具の機関銃のせいでニンジャマンがガーナ警察に捕まったり、製作担当の“プロデューサーマン”が警察をなだめようとアドンコを勧めて逮捕されたりと、珍エピソードが出るわ出るわ。カオスなガーナ体験をした撮影隊のエピソードをもっと知りたい方は、ぜひパンフレット(がもしあれば書いてあると思うので)を買って読んでください!

『アフリカン・カンフー・ナチス』©2020 BUSCH MEDIA GROUP. ALL RIGHTS RESERVED

ちょっと僕の中でタブーとしていることが面白おかしく表現されていて、普通の映画だったらイラッときてしまうところだけれど、この映画は許す!(上から目線)。監督の熱意とパンク精神が盛り沢山の極上B級映画! できれば一度見てから、監督のインタビューや撮影の裏側について知って、もう一度見ることをオススメします!

文:ゾニー(KING BROTHERS)

『アフリカン・カンフー・ナチス』は2021年6月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

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『アフリカン・カンフー・ナチス』

第二次大戦後、ヒトラーと東條英機はまだ生きていた。彼らは逃げ延びた先のガーナを制圧すると、空手と魔術的な国旗を用いながら現地の人々を新たな人種「ガーナ・アーリア人」として洗脳し、世界を侵略するための拠点を築いていく。圧政の中、心優しき地元の青年アデーは、ヒトラー達に地元のカンフー道場を潰され、愛する恋人を奪われてしまう。復讐を誓うアデーは最強のカンフーを習得するため、過酷な修行に身を投じていくが……。

制作年: 2019
監督:
出演:
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