デ・ニーロが保険金詐欺を画策!?『カムバック・トゥ・ハリウッド！！』 M・フリーマン＆トミー・リーと競演の風刺コメディ

ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、トミー・リー・ジョーンズ――平均年齢78歳の豪華オスカー俳優陣が集結した映画『カムバック・トゥ・ハリウッド！！』は、巨大化する映画産業への風刺と愛にあふれたハートフル（ブラック）コメディだ。

『カムバック・トゥ・ハリウッド！！』© 2020 The Comeback Trail, LLC All rights Reserved

やっぱりデ・ニーロは不謹慎が最高

監督は『ミッドナイト・ラン』（1988年）でデ・ニーロと組んだジョージ・ギャロだが、実はオリジナル脚本を手掛けたハリー・ハーウィッツによるお蔵入り作品と偶然出逢ったギャロ監督が、まるで運命に導かれたかのように映画化することになったというリメイク作品でもある（このあたり、詳しくは公式サイトでご確認を）。

『カムバック・トゥ・ハリウッド！！』© 2020 The Comeback Trail, LLC All rights Reserved

物語の舞台は70年代ハリウッド。鳴かず飛ばずのモックバスター系映画製作会社を経営するマックス（デ・ニーロ）は、映画マニアの老ギャング、レジー（フリーマン）から借りた大金を返せず文字通り絶体絶命の状況だった。そんなとき、ある映画スターが事故死し多額の保険金が支払われたことを知ったマックスは、かつての西部劇スターで自殺願望のあるデューク（ジョーンズ）を口八丁で担ぎ出し、（彼の死亡を前提とした）ド派手な西部劇アクション大作の製作を開始。しかし、いざ撮影が始まるとヨボヨボだったはずのデュークは人間離れした生命力を発揮し……。

『カムバック・トゥ・ハリウッド！！』© 2020 The Comeback Trail, LLC All rights Reserved

いぶし銀トミー・リーに思わず涙!?

老俳優をスタント事故で死なせて保険金で儲けよう！ という不謹慎にもほどがあるお話だが、超ブラックな役柄を嬉々として演じるデ・ニーロはここ最近で一番輝いている。まさかニセ撮影とは知らず真剣に取り組もうとするクルーを愛想笑いで適当にあしらう姿が最高で、すさまじい大事故がカジュアルに頻発する展開には思わず笑ってしまう。恐ろしいギャングを演じるフリーマンとの軽妙なやり取りはさすがの安定感ながら、その関係性やキャラ設定が最後の最後までしっかり効いてくるあたりも流石だ。

『カムバック・トゥ・ハリウッド！！』© 2020 The Comeback Trail, LLC All rights Reserved

しかし、なんといってもトミー・リーこそが本作のキモ。しょぼくれ自殺志願ジジイだったデュークが、俳優として再びパワーを漲らせる様子はとてもギンギンギラギラしていて、それだけでなんだか泣けてくる。昔から微妙に不謹慎だったギャロが本作をブラックコメディに振り切らなかったのは、デュークというキャラクターを大事にしたくなったからかもしれない。まあ多様性への目配せの雑さなどにギャロ本来のテキトーぶりが現れてはいるのだが、過去監督作『ダブル・テイク』（2001年）のエディ・グリフィンが顔を出しているあたりは嬉しいところだ。

ともあれ、デ・ニーロ、フリーマン、トミー・リーの競演という以上の“何か”が奇跡的ににじみ出ている本作。サクッと映画館で鑑賞するのにも最適なので、ぜひ気軽に劇場へ足を運んでほしい。

『カムバック・トゥ・ハリウッド！！』は2021年6月4日（金）より全国公開