規制だらけの80年代ソ連――ロックに乗せて自由を歌った若者たちの真実の物語『LETO -レト-』

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規制だらけの80年代ソ連――ロックに乗せて自由を歌った若者たちの真実の物語『LETO -レト-』
『LETO -レト-』© HYPE FILM, 2018

まるでパンデミック禍の日本!?“ロックな現場”も規制まみれ

『LETO -レト-』はバンドをやっている、もしくは昔やっていた人は特に共感できる部分が多い映画ではないだろうか。

『LETO -レト-』© HYPE FILM, 2018

1980年代前半、ソ連統治下のレニングラード・ロック・クラブでは、バンド「ズーパーク」のライブが行われていた。しかし、観客は静かに座ってライブを見なければいけない。少しでも音楽にノッていると、共産党青年部に注意されるのだ。僕が感じたことのない、その異様なライブの光景。でも2020年現在、新型コロナウイルスの影響でライブハウスに求められているお客さんの様子と、とても近いように感じた。

『LETO -レト-』© HYPE FILM, 2018

この映画はロシアに実在したバンド「Kino(キノ)」のボーカル、ヴィクトル・ツォイ(ユ・テオ)と、ズーパークのボーカル、マイク・ナウメンコ(ローマン・ビールィク)を通して、西側の文化に憧れ、窮屈な時代からの自由を願う若者たちの姿を描いている。その中で、マイクの妻ナタリヤ(イリーナ・ストラシェンバウム)とヴィクトルの淡い恋や、つかず離れずなマイクとナタリヤの共生関係も描かれるが、その不思議な三角関係はドロドロしたものではなく、とても儚い感性の中で揺れている。

『LETO -レト-』© HYPE FILM, 2018

ヴィクトルとマイクが初めて出会う海辺。そこでは仲間たちが騒ぎ、酒を飲み、裸で泳ぎ、マイクの歌を、ヴィクトルの歌をみんなで歌う。このシーンで、僕が10代の頃に幼馴染と組んだバンドで、初めてオリジナルソングを作った時のことを思い出した。僕たちの場合、海ではなく川で、電池式の小さいアンプ、友達から借りたボロボロのドラムセットで。演奏は酷いものだったけど、そこには完全なる自由と無敵感があった。

『LETO -レト-』© HYPE FILM, 2018

劇中歌がストーリーを代弁! ロックの名曲に彩られた淡い恋と自由への希求

本作は基本モノクロで描かれる。「モノクロはこの世代を語る唯一の手法」とキリル・セレブレンニコフ監督が語るとおり、主人公たちが体験している社会の厳しさ、寒々しさをモノクロ映像が見事に表現している。だからこそ、時折カラーになるシーンに自由と温かさを感じることができる。

『LETO -レト-』© HYPE FILM, 2018

劇中、ロックの名曲が流れるシーンは遊び心たっぷりで、まるでミュージックビデオのようだったり、ミュージカル風だったりする。しかも歌うのはアーティスト本人でもメインキャストでもなく、そこに映っている通行人やバスの乗客たちだ。特に“すべての若き野郎ども 声を上げろ”“何かを伝えろ” と歌われるモット・ザ・フープルの「All the Young Dudes」をバックに、主人公たちがロックの名作のジャケットを再現するシーンはとても印象的だった。使用楽曲の歌詞はすべて字幕で出るので、各シーンに込められた主人公/監督の想いを深読みしてみたくなる。

『LETO -レト-』© HYPE FILM, 2018

『LETO』は、まるで名盤のライナーノーツを読んでいるような感覚になる映画だった。とはいえ、音楽に詳しい/詳しくないにかかわらず誰でも楽しめる映画だ。もちろん1980年代当時の社会情勢や、ソ連について詳しくなくても大丈夫。不自由の中で自由に生きようとする主人公たちを見て、思わず自分と重ねたりもした。みなさんは本作を観て、何を感じるだろうか。ぜひ観てみてほしい。

『LETO -レト-』© HYPE FILM, 2018

文:ゾニー(KING BROTHERS)

『LETO -レト-』は2020年7月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

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『LETO -レト-』

ときは1980年代前半。西側諸国(資本主義諸国)の文化は禁忌とされていたソ連時代のレニングラードでは、L・ツェッペリンやT・レックスなど西側のロックスターの影響を受けたアンダーグラウンド・ロックが花開こうとしていた。その最前線で人気を博していたバンド「ズーパーク」のリーダーであるマイクのもとにある日、ロックスターを夢見るヴィクトルが訪ねてくる。彼の才能を見出したマイクは、共に音楽活動を行うようになるが、その一方で、マイクの妻ナターシャとヴィクトルの間には淡い恋心が芽生え始めていた……。

制作年: 2018
監督:
出演:
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