戦国時代の意外な“死因No.1”武器とは?「世界のクロサワ」の傑作『隠し砦の三悪人』を足軽になったつもりで観てみる

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『隠し砦の三悪人<東宝DVD名作セレクション>』
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発売・販売元:東宝
©1958 TOHO CO.,LTD ALL RIGHTS RESERVED.

桐畑少年の“隠し砦”な切ない思い出

おそらく最近の子供たちは全くやらなくなったであろう遊びの一つ、それは“秘密基地”を作る遊びだ。昭和の男の子ならば、都会の子でも田舎の子でも必ずやったと思う。滋賀の田舎の野山を駆け回って育った私にとっては、家の裏山が秘密基地だった。最初は、竹藪の中に段ボールを敷いて竹藪の竹に紐を縛り、各部屋を仕切って、どの部屋が自分で、ここが玄関だから靴を脱いで入るなどと取り決めを設けたりして、友達数人で楽しく作ったものだ。

秘密基地と言っても何をするわけでもなく、お菓子を持ち寄ってみんなで食べたり、マンガを持ち寄ってみんなで回し読みをしたりするぐらいなもの。それでも学校から帰って、友達と秘密基地に集まるのがなんだか楽しかったのは、親や近所の大人たちからの隔離と友達と秘密を共有することが特別なことに思えたからかもしれない。しかし、屋根がない秘密基地は雨が降ると敷き詰めた段ボールがぐちゃぐちゃになり、秘密基地としての機能は崩壊する。そこで今度は、普段あまり使われていない小屋を見つけて、そこを勝手に我々の秘密基地として使わせてもらうことに。おもいっきり不法侵入なのだが、そこは昭和の時代、伴(かぎ)もかかってなければ、人も滅多に来ないので出入り自由。もう持ち寄ったマンガが濡れる心配もなくなった。

そんなある日、僕たちは一匹の仔犬と出会う。昭和のあの頃は、けっこう野良犬がどこにでもいて、学校なんかに入ってくるのも日常茶飯事。廊下を走り回る野良犬を、教頭先生が追いかけ回すといった光景は年に何回かあり、授業が中断するのでテンションも上がる、イベントのようなものだった。

僕たちが出会った仔犬も首輪などついておらず、コロコロとまん丸い茶色の仔犬で、学校の帰りによちよちとついて来たのだ。そうなるとあの頃の昭和の子供たちは必ず、この仔犬をみんなで飼おうということになる。そして、そのまま秘密基地に連れて行き、みんなでありきたりなコロという名前をつけた。これでまたみんなとの共有の秘密ができたわけだ。その日から、これまた誰しもがやる学校給食のパンと牛乳を残し、学校の帰りに秘密基地に立ち寄って、コロにご飯をあげるのだ。みんなによく懐いて走り回るコロ。どこからか見つけてきたビニール紐を繋いで散歩にも行った。

もちろん、そんな楽しくて仕方がない秘密基地の活動がいつまでも続くわけもなく、コロがちょっと大きくなった頃に小屋の持ち主に見つかり、マンガやオモチャとコロを出さなくてはいけなくなった。私もコロに愛情を持っていたので、母親に犬を飼うことの承諾を求めたがダメ。他の友達も親に相談するが、飼えないとの報告。どうしようかと困っていたところに、近所の一つ年上のMくんが「うちで飼ってもいいって!」という朗報をもってきた。「良かった~! これでコロを捨てなくて済む」とみんなで喜んだものだ。

それからしばらくはMくんの家に立ち寄って、家の前に繋がれた(昭和のあの頃の犬はほとんどが家の前に犬小屋があって、そこに繋がれていた)コロを可愛がりに行ったのだが、次第に行くことも減っていった。するとコロも大きくなるにつれて、Mくん家の番犬に成長していき、久し振りに僕らが近づくと完全に吠えるように変わっていた。なんだか悲しかった。仔犬の頃はあんなに可愛がってあげたのに……犬は一度受けた恩を一生忘れないんじゃないのかよ……。

現代人には見えない!「世界のミフネ」の異様なオーラと見事な殺陣

こんな切ない秘密基地の思い出から、今回のオススメ戦国映画は黒澤明映画の中でも特に好きな『隠し砦の三悪人』を。この作品は1958年(昭和33年)公開のモノクロ映画で、戦国時代を舞台に、戦に負けた国の侍大将が跡取りの姫と軍用金とともに、二人の百姓を従えて敵中突破をしていく物語。

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この侍大将、真壁六郎太を「世界のミフネ」こと三船敏郎さんが演じているのだが、もうお見事としか言いようがない! まず三船さんのお顔。濃いめの髭面に立派な眉毛! どこからどう見ても戦国時代の人にしか見えない。ドラマや映画で役者さんが髷のカツラをかぶったり、最近の映画や大河ドラマなんかは前髪だけ自前の髪で、後ろに髷をつけたりするようになってきたが、やっぱり顔が現代人の顔なのだ。それは仕方ないことなのだが、この映画の三船さんの場合、おそらく自髪の毛で総髪になされてると思うのだが、そこにあの面構え! とても昭和の現代人には全く見えない。そこがすごい!

さらに三船さんの殺陣がまたすごい! 敵にバレそうになった場面で、三人組の敵の一人の腰の刀を素早く抜き、一刀両断! さらに馬で逃げようとする残りの二人を馬で追いかけるのだが、手綱も持たずに刀を上段に構えて追いかけて行き、馬上から切り倒す姿がまたカッコいい! このシーンのスピード感は、いま観てもすごいと誰もが思うはずである。

その他、やっぱり百姓の太平と又七がいい味を出している。セコくて臆病で、すぐ裏切るどうしょうもない二人だが、人間の本質をさらけ出しているかのようで、どこか憎めない。さらに、物語を要所要所で盛り上げているのも太平と又七であることは間違いない。そして、この二人の凸凹コンビがジョージ・ルーカス監督の『スター・ウ ォーズ』(1977年)に出てくるC-3POとR2-D2のモデルになったことは有名である。

あとはやっぱり上原美佐さん演じる雪姫。上原さんはこの作品がデビュー作で、まだ現役大学生だったそうだ。お世辞にも演技が上手いとは言えないが、それでもおてんば姫様の雰囲気はしっかりと出ていて、逃走中にお城の中では味わえない庶民の暮らしに触れられたことで満足し、囚われたあと打首に向かう死への覚悟を決めるシーンにはグッとくるものがあった。

“突く”だけじゃない足軽たちの槍使いトリビア!

もう一つ私が好きなシーンが、三船さん演じる真壁六郎太が、かつての盟友でありライバルでもある敵方の侍大将、田所兵衛との槍での一騎打ち! お互い陣幕を切り裂き、構えを変えつつにじり寄る一騎打ちは、戦国好きにはたまらないシーンだ。

しかし、当時の槍はどんな風に使っていたのか? もちろん馬に乗っているような侍大将は、映画のように見事な槍さばきで闘っていたであろうが、足軽のような普段は農民の兵隊には武士のような槍さばきは、ほとんど出来ないのである。では、どうやって戦ったのか? それは騎馬武者よりも長い槍にして、突くのではなく上に振り上げて、下に叩き下ろす相手の頭を叩く使い方だったのだ。これならば槍術の心得がない足軽でも、なんとかできる。このように、槍は突きもするが、メインは叩くものだったのだ。

意外!? 戦の「死因No.1」武器

さらに話を派生させると戦国時代、戦場で最も死因に繋がった武器は槍でも刀でもなく、弓矢なのだ。

まず、刀などは戦さ場でほとんど使われず、せいぜい倒した敵の首を取る時ぐらいで、それも腰に下げた短刀程度。長い刀ではなかなか甲冑の隙間を縫って致命傷を与えるのは難しい。槍も同じく槍先で上手く刺せればいいが、動く標的を仕留めるのは至難の業で、せいぜい頭を叩いて脳震盪かムチウチ程度。

そこで弓矢の登場だ。ただ、弓矢の矢で敵を一撃に倒すかというと、そんなわけはない。よほど致命的なところに刺さらないと矢では殺せないのだ。むしろ、矢が刺さったまま戦う武将もいただろう。ではなぜ弓矢が死因の大半を占めるかというと、それは弓矢の矢を抜いた後、その傷口からバイ菌が入り、破傷風などにかかって命を落とすことが多かったからなのだ。当時はマキロンなんかあるはずもなく、傷口を綺麗に消毒できない上に、傷口を縫合することもできない。だから戦国時代の戦場での死因の一位が、弓矢の矢というわけなのだ。甲州武田の鏃(やじり)には釣り針の様な返しが付いていて、矢を抜く時には肉をえぐり取る効果があったとも言われている。なんとも恐ろしい弓矢だ。

そんなわけで皆さんも、槍の使い方や弓矢の刺さり方にも注目しながら、戦国映画をご覧になってはいかがでしょうか。

文:桐畑トール(ほたるゲンジ)

『隠し砦の三悪人』はAmazon Prime Videoほか配信中

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『隠し砦の三悪人』

戦国の乱世、秋月家は隣国の山名家と戦って敗れる。秋月家の侍大将・真壁六郎太は、世継ぎの姫君・雪姫を擁して隠し砦にこもる。六郎太はお家再興のための軍資金を運び出す脱出計画を練るが、敵地を横断突破するより他に道はない。六郎太、雪姫ら一行は奇策に満ちた敵中突破作戦を開始する。

制作年: 1958
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