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日本映画界では異例のド迫力アクション!『サイレント・トーキョー』 事件の真相を二転三転させるキャスト陣の名演を見よ

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ライター:#斉藤博昭
日本映画界では異例のド迫力アクション!『サイレント・トーキョー』 事件の真相を二転三転させるキャスト陣の名演を見よ
『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

大ヒットシリーズの原作者×監督のタッグが実現!

「アンフェア」などで知られ、小説家や脚本家、映画監督としても活躍する秦建日子。そして日本映画界のアクションを革新したドラマ「SP」シリーズ(2007年~)を手がけた波多野貴文。大ヒットシリーズのクリエイターである原作者×監督のタッグが実現したというだけで、映画『サイレント・トーキョー』にはどんなサプライズや興奮が用意されているのか、期待が高まる。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

秦建日子による原作のタイトルが「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」とあるように、舞台となるのはクリスマス。誰もが心が浮き立つこの日、クリスマスの名曲とともに進行するのは、もちろんハッピーな物語ではない。東京の中心地で、多数の人々を巻き添えにしようとする爆弾テロが進行するのだ。警察やマスコミも翻弄する、犯人の巧妙な手口。その意外な犯人像と動機。さらに信じがたいほどの破壊力をもつ爆発物……。クリスマスが一瞬にして暗転する世界が、この『サイレント・トーキョー』では展開していく。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

12月24日、クリスマス・イヴ。テレビ局に「恵比寿に爆弾を仕掛けた」という電話が入り、半信半疑のニュース局が中継に向かうところから始まる物語。内容が内容だけに、詳しいプロットはここでは書かないが、最大の見せ場だけは「予告」しておきたい。それは渋谷駅が犯人の標的になる点だ。渋谷駅といえば、スクランブル交差点。ハロウィンやサッカーW杯、新年カウントダウンの際には若者たちで“密”状態になり、2020年現在は新型コロナウイルスの影響で落ち着いているものの、外国人観光客からも最も人気の高い観光スポットのひとつである。当然、クリスマスの時期はにぎわい、ここで大爆発が起これば国内はもとより、世界中の人々に多大なショックを与えることは間違いない。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

このシーンを見るためだけに劇場へ行く価値あり! 渋谷駅前スクランブル交差点の超リアル映像

『サイレント・トーキョー』には、人々が行き交う渋谷駅、およびスクランブル交差点で特大スペクタクルのシーンが登場する。ここには、主要登場人物を含め多数のエキストラが参加。過激なアクションも展開し、かなり長い時間が割かれる、本作の大きな見せ場だ。日常的に人や車が多いスクランブル交差点で、よくこんなシーンが撮影できたものだ……と思いきや、これはすべてセットで撮影された。その事実を知って本作を観れば、あまりにも正確な再現度に目を疑うことだろう。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

そもそも渋谷スクランブル交差点で、大規模な映画やドラマのロケを敢行するのは不可能だ。現在、正式な許可が下りることはない。ハリウッド映画の大作でも日本を舞台にすると、たまにスクランブル交差点が出てくるが、2010年の『バイオハザードIV アフターライフ』では渋谷での空撮が実際に行われたものの、スクランブルはカナダのトロントにセットを作って再現。周囲のビルの映像を合成した。『ワイルド・スピード』シリーズ(2001年~)にも何度かスクランブル交差点が登場するが、こちらも合成だ。外国人観光客の間にスクランブル交差点の存在を一気に広めた2003年の『ロスト・イン・トランスレーション』や、菊地凛子が出演した2006年の『バベル』のようにゲリラ撮影が行われた作品はあるものの、ドキュメンタリー『園子温という生きもの』(2016年)では渋谷ハチ公広場でゲリラ撮影を行おうとしたら、すぐに警察が来て止められるというシーンが挿入されている。正式には映画やドラマの撮影はNGなのである。

本作に登場する渋谷が再現されたのは、栃木県足利市の競馬場跡地を利用した巨大なオープンセットだ。敷地面積は15,000平方メートルもあるという。スクランブル交差点を中心に、ハチ公前広場、地下街への出入口、センター街のアーチ、渋谷駅改札とトイレなど、細部までリアルなセットを建設。何も知らずに映画を観たら実際に渋谷で撮影されたと信じてしまう、それくらい完璧なシーンなのだ。ちなみに、この足利のスクランブル交差点セットは、妻夫木聡、長澤まさみ、染谷将太らが出演した中国映画『僕はチャイナタウンの名探偵3』(日本公開は調整中)でも撮影に使われている。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

そんなオープンセットに1日最大1200人というエキストラを集め、そこに西島秀俊、中村倫也、広瀬アリスら主要キャストが混じり、群衆が大パニックと化すという、実際のロケでは絶対に不可能なシーンを撮影。そのスケール感、衝撃度は予想を上回る仕上がりであり、このシークエンスをスクリーンで目撃、体感するためだけでも劇場に足を運ぶ価値はある。それだけ日本映画としては異例の映像が完成されたわけだ。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

観客の不安感を高め、サスペンス展開を深める手練キャスト陣の名演に脱帽!

そして『サイレント・トーキョー』のもうひとつのポイントは、東京全体を震撼させる真犯人の素顔と計画、その動機だ。とくに映画の前半では、センセーショナルな爆破計画がどの方向に進んでいくのか、われわれ観客にもまったく見えないスリルが充満していく。こうした不安感を高め、サスペンスを深めるのが俳優たちの演技だ。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

最初の爆破予告現場である恵比寿のショッピングモールで、ベンチに座ったまま「いまベンチを離れれば大爆発が起こる」と謎めいたことを口にする主婦・山口アイコ役の石田ゆり子。その現場に到着するテレビ局のクルー、来栖公太役の井之脇海。事件に翻弄され、どこか不可解な言動もみせる彼らの演技が、われわれ観客を不穏な空気に浸らせる。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

この最初の犯行予告現場には、なぜか無関係と思われるキャラクターも姿をみせる。何かを思いつめたような表情のIT企業家、須永基樹。演じる中村倫也が、本心を決して顔に出さないという複雑な役どころにハマりまくっている。その後の須永の行動から、明らかに事件の核心に近いキャラクターだと思われるのだが……。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

さらに最初の現場に出てくるのが、事件の容疑者として浮上した、これまた謎めいたムードをかもし出す中年男性、朝比奈仁。この男、登場シーンでは顔も映らないのだが、佐藤浩市が「背中で演じている」ことに圧倒される。後ろ姿だけで役が背負っている“何か”を伝えるのは、さすが、常に日本映画の第一線を歩んできた名優のなせる業(わざ)。前半は出番がそれほど多くないにもかかわらず、朝比奈の幻影がドラマにまとわりついてくる感覚だ。そのほかにも、一瞬だけ出てくる人物が怪しげに絡んできたりと、演技派キャストのアンサンブルが、カウントダウンで進む爆破テロ事件の謎と緊迫感を加速させていく。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

1年で最もハッピーなはずの風景が、次の瞬間、予想もしないクライシスで一変する……。日常と大事件が紙一重という世界が、じつはリアルであることを、『サイレント・トーキョー』は、われわれ観客に突きつけてくるはずだ。

『サイレント・トーキョー』Ⓒ2020 Silent Tokyo Film Partners

文:斉藤博昭

『サイレント・トーキョー』は2020年12月4日(金)より全国公開

Presented by Silent Tokyo Film Partners

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『サイレント・トーキョー』

12月24日、東京。恵比寿に爆弾を仕掛けたとTV局に電話が入る。半信半疑で中継に向かった来栖公太は、そこにいた主婦・山口アイコとともに犯人の罠にはまり、実行犯へと仕立てられてゆく。その様子を朝比奈仁が静かに見つめるなか、爆発は起きた。そして次の犯行予告が動画サイトに上げられる。「標的は渋谷・ハチ公前。要求は首相との生対談。期限は午後6時」。独自の捜査を行う刑事・世田志乃夫と泉大輝、不可解な行動をとるIT企業家・須永基樹、イヴの夜を楽しみたい会社員・高梨真奈美、そして一帯を封鎖する警察、事件を一層煽るマスコミ、騒ぎを聞きつけた野次馬たち。様々な思惑が交差する渋谷に“その時”が訪れる。それは、日本中を巻き込む運命のXmasの始まりだった。

制作年: 2020
監督:
出演: