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不倫、過剰束縛、バズ狙い……『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』から“ネットとの距離の測り方”を反面教師的に学ぶ

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ライター:#SYO
不倫、過剰束縛、バズ狙い……『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』から“ネットとの距離の測り方”を反面教師的に学ぶ
『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』© 2014, 2015 Paramount Pictures.

「つながりたい欲」に苦悩する4組の物語が交錯

いまだ新型コロナウイルスが収まらない2020年の終盤。日々の生活に不安や閉塞感を抱くと同時に、「孤独」をより強く感じるようになったのではないか。人に会えない、触れ合えない、近づけない。公共の場では口数を減らし、会話は控えめに。レジの金銭の受け渡しはトレーを介して。新しい生活様式――今の日本で順守されるべきマナーやルールは「感染防止」のために必要なものだが、同時に“人間性”を削り取ってしまう。

Photo by Mark Claus on Unsplash

さらに厄介なのは、現代に生きる私たちは「孤独への耐性」に関して非常に脆弱であること。リアルはもちろんだが、インターネットで「つながる」快楽を知ってしまった我々にとって、この欲求を止めることは難しい。とはいえ、やはりリアルでの触れ合いに勝るものはないわけで……。この心と身体のギャップ、あるいは膨張する孤独感は、いまや個々人の中でスタンダードな感覚になりつつある。「つながりたい欲」は多かれ少なかれ誰もが持っているもので、つい、すぐそばにあるネットに逃避してしまうものだ。「気づいてほしい」「つながりたい」欲求が募り、ネット上・SNS上で「話を聞いてくれる誰か」を探してしまう行動は、日常茶飯事といえるだろう。

今回ご紹介する映画『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』(2014年)も、そうしたSNS時代のリアルな「孤独感」と「つながりたい願望」を下敷きにしている。監督・共同脚本は、『JUNO/ジュノ』(2007年)や『マイレージ、マイライフ』(2009年)などで知られ、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021年公開予定)が控えるジェイソン・ライトマン。

『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』
販売元:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
価格:Blu-ray 2,381円+税/DVD 1,429円+税
発売中
© 2014, 2015 Paramount Pictures.

本作は「両親の離婚による心労で部活を辞めた男子学生」「母親にネット活動を管理・制限される女子学生」「スターになりたい娘を応援する母」「サイトで出会った異性と不倫・売春する夫婦」という4組の人々の物語が絡み合う群像劇だ。

キャストが豪華で、ジェニファー・ガーナーが病的に娘を心配する母親を演じ、娘役を『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019年)のケイトリン・デヴァーが務める。ベテラン俳優ディーン・ノリスと『ベイビー・ドライバー』(2017年)のアンセル・エルゴートが父子役、アダム・サンドラー、J・K・シモンズ等も出演。ナレーションを務めるのはエマ・トンプソンで、端役でティモシー・シャラメの姿も確認できる。

「ネットとの距離」を、私たちはいまも模索している

本作は『MEN, WOMEN & CHILDREN』の原題が示す通り、親子や夫婦の関係性の変容を描いている。そこに、ネットが絡んでくる構造だ。

フットボール部の花形選手だったティム(アンセル・エルゴート)は、母親が駆け落ちしたことで無気力になり、オンラインゲームに明け暮れる毎日。Facebookで母が婚約したことを知り、独り涙を流し、ゲーム仲間にチャットで苦悩を打ち明ける。「リアルの友人は部活を辞めたらほとんどいなくなった」という彼にとって、ネットは苦痛でもあり救済でもあるわけだ。

ここに、ネットとの距離の測り方が非常に難しい理由の一つが描かれている。ネットは世界中の人と「つながる」ことができる。ただ同時に、心無い言葉などで傷ついてしまう機会も増える。人間の善意にも、悪意にもダイレクトにつながってしまう空間なのだ。そのことを、より追求しているのがティムと恋仲になる同級生と、その母の関係である。

『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』© 2014, 2015 Paramount Pictures.

ティムは、同級生ブランデー(ケイトリン・デヴァー)と知り合うが、彼女は母親のパトリシア(ジェニファー・ガーナー)にすべてを監視されていた。位置情報は携帯電話のGPSで筒抜けであり、SNSの投稿やメールのやり取りもすべてチェックされ、ティムからのメッセージは、ブランデーが読む前にパトリシアによって削除されてしまう。挙句、彼女は娘を装ってティムに辛辣なメッセージを送りつけ、精神的に追い詰めていく。本人は「娘をネットの脅威から守りたい」一心だが、過干渉な毒親の側面もあり、現代における「子どもとネットの付き合い方」を改めて考えさせる。

この母娘と対照的なのは、ドナ(ジュディ・グリア)と娘ハナ(オリヴィア・クロチッチア)。娘が芸能界入りできるように応援したいドナは、宣伝サイトを立ち上げ、娘の様々な写真をアップしている(中には、際どいものも……)。その思い自体は責られるものではないが、次第にエスカレートしていく内容が芸能関係者に難色を示され、せっかくの芸能界入りのチャンスがつぶれてしまう。これをInstagramやYouTubeに置き換えて考えると、より突き刺さるのではないか。老いも若きも、承認欲求で身を滅ぼす人々が増え続けている昨今。1つの反面教師として見ることができそうだ。

『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』© 2014, 2015 Paramount Pictures.

個々人でネットをどう利用するか、適切な距離感はどこか。家族をネットの脅威から守るために、どこまで干渉すべきなのか――。画一的なルールはなく、「つながりたい欲」だけが募っていくいま。本作の制作から6年が経ち、事態はより深刻で複雑になってきているといっていい。

『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』は、宇宙を漂う人工衛星をとらえたカットから始まり、天文学者/作家カール・セーガンの「惑星へ」から引用された“我々は地球で頑張るしかない”という言葉で締めくくられる。画面に縛られて視界が狭くなっている私たちは、一度遠くから自らを見つめ直してみるべきなのかもしれない。

文:SYO

『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』はAmazon Prime Videoほか配信中

Presented by ジェイコム少額短期保険

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『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』

Facebookで母親の再婚を知ったティムは、同じ高校のブランディと知り合うが、彼女は過保護な母親パトリシアによって携帯にGPSをつけられていた。ある日、娘になりすました彼女は「もう会いたくない」とティムに伝えてしまう。一方、セックスレスな夫婦生活に不満を抱いていたドンとヘレンは、互いに出会い系サイトへ登録する。ひとり息子のクリスは学校で人気のチアリーダー、ハンナに好意を寄せていたが、彼女はネットに刺激的な写真をアップしていて……。

制作年: 2014
監督:
出演: