『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』ついに公開! あの元ウルグアイ大統領が見た日本とは

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ライター:BANGER!!! 編集部
『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』ついに公開! あの元ウルグアイ大統領が見た日本とは
『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

フジテレビのディレクターで映像作家の田部井一真が、「世界一“貧しい”大統領」として知られるウルグアイの政治家ホセ・ムヒカ氏に迫ったドキュメンタリー作品『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』が2020年10月2日(金)より公開される。

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

まずは、元ウルグアイ大統領であるホセ・ムヒカという男について簡単に解説しておこう。貧困家庭に生まれたムヒカは、苦学してモンテビデオ大学を卒業した後、軍事独裁に反対して12年に渡り収監される。独裁政権の崩壊により釈放された後は下院議員を経て2010年に大統領に。貧困対策や住宅供給、大麻や同性婚の合法化といった弱者やマイノリティに寄り添った政策を推し進めると共に、大統領としての給料の9割を寄付して国民と同じレベルの生活をするなど、徹底的な清貧を貫いたことから「世界でいちばん貧しい(元)大統領」とも呼ばれている。

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

他のムヒカ映画とは異なるドメスティックなテーマ

現代を代表する聖人と言っても過言ではないムヒカを扱ったドキュメンタリー作品は数多い。最近では、カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを2度受賞している巨匠エミール・クストリッツァ監督によるムヒカのドキュメンタリー映画が公開されて注目を集めているが、本作のテーマはクストリッツァ版とは大きく異なっていると断言しておこう。

田部井版ムヒカ映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』は、タイトル通り日本人をターゲットとした非常にドメスティックな作品。ムヒカと日本の知られざる関係を紐解きつつ、現代日本に対してメッセージを発するという内容だ。

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

この映画は「日本すごい」系作品では決してない

監督が現役のテレビ局社員であること、作品冒頭の日本の技術や経済力を手放しで称賛するムヒカの姿、ムヒカと日本の関わりをドラマティックに表現した前半パートに「ゴールデンタイムのテレビ番組にありがちな“日本すごい”系か……」とゲンナリしかけた。が、その危惧は来日したムヒカを追った後半を見て跡形もなく吹き飛んだ。

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

来日後、日本各地を訪れたムヒカは、現代の日本社会の姿を眺めながら「現在の日本はこれからの世界を示唆している」と語る。その口調はソフトだが、銀座の商業施設に設置された欧米人モデルを起用したポスターや女性型アンドロイドを見る視点は冷たく、厳しい。

「日本人は西欧化の中で大切な何かを忘れてしまったのではないか」

そうムヒカはつぶやく。もちろん、かつての日本には現在とは比較にならないほど過酷な身分差別や貧富の差が存在し、国内の移動や西欧の学問を学ぶことなど個人の自由も大きく制限されていた。こうした問題を解決に導いたのは「西欧化」によるところが大きい。とはいえムヒカが指摘する通り、西欧文明はネガティブな側面も抱えており、それらが日本特有の強い企業規範や集団意識と合わさって、今この瞬間も我々を苦しめているのは否定しようのない事実だ。ただムヒカは日本を嫌っているわけでも、憎んでいるわけでもない。作品前半に映し出されているように、むしろ人並み以上に日本を、というよりも日本を含むこの世界を大切に思っているからこそ、苦言を呈しているのだろう。

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

単なる分析と批判だけでは終わらないのは、さすが世界的カリスマである。来日スケジュールの締めくくりとして東京外語大学で行った講演では、若者たちに向かって日本を含む全世界の危機的状況を寄り添うように、噛みしめるように説き、同時に優しさに満ちた普遍的な激励も送る。

「人間は自分たちのことを考えることができる動物」

「生まれたから生きるか、自分の人生を操縦して生きるか」

ウルグアイには「他人のために犠牲をいとわない偉大な人物」を意味する「ガウチョ」という言葉がある。日本国内では「サムライ」に当たる概念とされることもあるが、その語源は「孤児」「放浪者」。民衆の「上」ではなく、あくまで「横」に存在する人々なのだ。この作品は、常に民衆と共にあるムヒカという偉大なガウチョの姿を映し出した作品であり、また彼の視線を通じて日本に暮らす人々が日常の中で見逃している大事な何か、あるいは目をそらしたくなるような不都合な真実を炙り出している作品でもある。

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

作品はムヒカの「やあ、日本人よ」というたった一言の問いかけで締めくくられる。監督の田部井もまた、作中では多くを語らない。しかし映像をしっかりと見れば、ムヒカと監督の思い、そして上から目線でないメッセージが伝わってくるはずだろう。日本社会が混乱している今だからこそ観てほしい作品だ。

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』は2020年10月2日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開

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『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』

2012年、ブラジル・リオデジャネイロで開かれた国連会議にて、現代の消費社会を痛烈に批判し、人類にとっての幸せとは何かを問うたウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ。その感動的なスピーチ動画が瞬く間に世界中で話題になったことで、田部井監督は当時ディレクターを務めていたテレビ番組で彼を取り上げることになる。ウルグアイへ渡った監督はそこで一度も日本に訪れたことのないムヒカが、日本の歴史や文化にとても詳しく、尊敬していることに驚かされる。なぜ、ムヒカは日本のことをよく知っているのか? その後もその疑問の答えを突き止める為に監督は何度もウルグアイへと渡り、大統領退任後のムヒカへの取材を重ねる。ムヒカの言葉に心を動かされた監督は多くの日本人にムヒカの言葉を聞いてほしいと願うようになり、ムヒカ自身も訪日を熱望。絵本の出版社の協力を得て、彼の来日が実現する……。

制作年: 2020
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