想定外のラスト! 永瀬正敏出演 母娘の“愛と秘密”のサスペンス『ホテルニュームーン』

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ライター:BANGER!!! 編集部
想定外のラスト! 永瀬正敏出演 母娘の“愛と秘密”のサスペンス『ホテルニュームーン』
『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

国境や文化を超えて作られた、注目の合作映画が誕生

『孤独な惑星』(2011年)の筒井武文監督がイランを舞台に、日本・イラン合作で制作した最新作『ホテルニュームーン』が、2020年9月18日(金)より公開される。「イランの風景と人々にひと目惚れした」という監督の熱い想いから生まれた本作のテーマは、「母と娘の愛の絆」。日本に滞在経験のあるイラン人のナグメ・サミニが脚本を担当し、実際のイランの人々の生活を捉えたリアリティあふれる物語に仕上がっている。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

大学生のモナは、教師の母・ヌシンと2人でテヘランで暮らしている。シングルマザーで一人娘のモナを溺愛するあまり、門限から交友関係まで厳しく教育するヌシンに対して、モナは自分に恋人がいることも、将来の夢も正直に明かせずにいた。それでも母娘で互いに支え合い、想い合いながら幸せに生活していたある日。モナは自宅で、ヌシンと幼き日の自分、そして日本人の男・田中が一緒に写っている写真を発見する。さらに、写真の男・田中とヌシンがホテルで密かに会っているところを目撃。「あの男は一体何者なのか?」「自分や母との関係は?」「母はなぜ日本に住んでいたのか?」――疑惑を膨らませるモナは、次第に母親が何者かさえ分からなくなっていく。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

ヌシンは過去を隠してまで、一体何を守ろうとしたのか。その秘密にモナが迫る様子がサスペンスタッチで描かれ、静かなスリルを味わえると共に、最後には母娘の本当の絆を感じ取れる感動的な物語に仕上がっている。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

母が秘密にしてきた、予想もつかない過去とは?

本作はサスペンス調ではあるものの、大どんでん返しがあるわけでも、特に誰かが殺されるわけでもなく、母と娘の心の機微を丁寧に描いていく、どちらかといえば静かな作品だ。ドキドキ&ゾクっとするような展開を期待した人は少々肩透かしを食うかもしれないが、核となる「ヌシンの過去」「田中との関係性」については、予告編やあらすじを通して多くの人が予想するであろうものとはかなり違った答えが返ってくるので、サスペンス映画としては十分に楽しめはず。冒頭15分くらいで「まぁだいたいこういうオチだろうな」と思っていると、終盤でかなり意外性のある過去が明かされ「おお、そういうことですか……」と軽く衝撃を受けることだろう。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

ヌシン役を務めるのは、イランを代表する国民的女優マーナズ・アフシャル。そして娘のモナ役には、期待の新人女優ラレ・マルズバンを起用。さらに、ヌシンの過去に深い関係を持つ日本人の田中役に永瀬正敏、その妻エツコ役に小林綾子と、日本・イランを代表する名優たちがキャスティングされ、物語に説得力と重厚感をプラスしている点も大きな魅力だ。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

「母性」が狂わせる女の運命、そして男が犯す過ち

「母親が子へ注ぐ深い愛情」がテーマとなっている本作。特にそれを、ヌシンとエツコという2人の女性を通して描写しているのが秀逸だ。ネタバレになるので詳しい説明はできないが、物語の中でヌシンとエツコは対極にあるような存在として描かれ、どちらも子に対する深い愛情を持っている。しかし、その母性が引き金となり、悲しくも2人の人生は一変していく。特にエツコを演じた小林綾子の「失」と「狂」の演技は圧巻で、同じような境遇にある女性が見るといたたまれない気持ちになるだろう。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

また図らずしも、ヌシンvsエツコという対立構造を生み出してしまう田中役の永瀬正敏の存在感も、さすがの一言。子を想う女性たちを前に、何もすることができない男の不甲斐なさを緻密な演技で表現しており、永瀬の役者としての凄味に多くの観客が魅了されるはずだ。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

日本人が知らない、イランのリアルな生活文化

「母親の深い愛」「母娘の絆」を丁寧に紡ぎ出していく本作だが、同時に、映画を通して“現代イランの文化”を学べるのも魅力の一つ。多くの人が「イラン」と聞いて思い浮かべることといえば、アメリカと長きに渡り対立関係にあり、かつてブッシュ前大統領に「世界の悪の枢軸の一つ」と名指しされ、イスラム教の中でも少数派のシーア派が多い国……といったあたりだろうか。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

日本人にとっては遠く、「自由のない怖い国」というイメージがあるかもしれないが、本作で描かれるイランの文化を見れば、衣食住ともに豊かで優れていることに気づくだろう。特に、ヌシンの家は家具や食器などインテリアが洗練されているし、モナの服装もとても現代的だ。イランの女性はスカーフ(ヒジャブ)で頭を覆うことを法律で義務付けられているが、大学生のモナはフーディをスカーフ代わりに被っていたりと、その姿には欧米人・アジア人と変わらない、等身大の若者像が見て取れる。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

さらにイランではiPhoneやUberも普及していて、敵対関係にありながらもアメリカ文化から色濃く影響を受けている様子も印象的だった。我々日本人が知ることのない異国の社会情勢を学べるという意味でも、日・イ合作映画として非常に文化的価値の高い作品と言えるだろう。筒井監督も魅せられた国、イラン。本作をきっかけに、その文化に興味を持ってみるのも良いかもしれない。

『ホテルニュームーン』© Small Talk Inc.

『ホテルニュームーン』は2020年9月18日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

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『ホテルニュームーン』

大学生のモナは、教師をしている母ヌシンと二人暮らし。ヌシンはモナに、父親は彼女が生まれる前、山の中で登山家の友人を助けようとして事故に遭い、命を落としたと伝えていた。二人は、新居への引っ越しの準備を進めていた。まるで友達のように仲のいい親子だが、一人娘の交友関係に厳しく目を光らせる母に、モナは少々辟易気味。同じ大学に通う恋人サハンドの存在もいまだ打ち明けられずにいた。

モナにはもう一つ秘密がある。サハンドと共にカナダに留学する計画を立てていたのだ。ヌシンにばれないようパスポートを探すモナは、ある日、地下室に隠されていた箱の中に、見知らぬ日本人男性と母、そしてまだ幼児期の自分が写った写真を見つける。そこには日本語が書かれたノートも入っていた。一方のヌシンは、ある電話を受け、不安な思いを抱えていた。ある夜こっそり家を抜け出し、ホテルで田中と会ったヌシンは、封筒に入った金を渡し、「お金は返すからモナには絶対に会わないでほしい」と頼み込む。それを聞いた田中は「お金が目的じゃない」と答えるしかない。

ヌシンの後をつけその様子を見ていたモナは、田中が写真に写っていた日本人だと気づき、母との関係に強い疑念を抱く。思い切って田中に声をかけるが、彼は何も言わず、謎は深まるばかり。何も語らない母をあやしんだモナは、自分の出生にまつわる秘密を感じ取り、自力で調べようと決意する。一方、恋人のサハンドは、何かを思い詰めている様子のモナに不信感を抱き始める。

ヌシンの抱えている秘密とは何なのか。モナの父親は誰なのか。田中は何を伝えにイランへやってきたのか。母と娘が抱えた秘密と噓は、やがて悲しい真実へとたどり着く――。

制作年: 2019
監督:
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