全身で感じろ！ ツッコミは無粋！ 人気Web小説＆ゲームを映画化した超ド級ファンタジー・アクション『ジェイド・ダイナスティ　破壊王、降臨。』

何もかもが過剰積載気味な伝奇ファンタジー・アクション！

「LEGEND of CHUSEN －誅仙－」としてオンラインゲーム化もされた中国の人気Web小説の映画化作品『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。』は、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』シリーズ（1987～1991年）で知られるチン・シウトン監督の最新作。映画ファンの中でもシウトン監督の名を知っている人は多くないかもしれないが、『少林サッカー』（2001年）などのチャウ・シンチー作品や、日本映画『どろろ』（2007年）などのアクション監督も務めているスゴい人である。

『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。』© 2019 New Classics Media Corporation

とにかくポスタービジュアルだけで壮大なファンタジーものということだけはビシビシ伝わってくる本作、ゲーム化されただけあってディティールにこだわりまくった世界観が印象的だ。「星雲門は誅仙剣を得て武術会の正義の門派となり、通天峰、大竹峰など7派に継承された――」というオープニングのテロップに早くもクラクラしてくるが、その数秒後には「あ、これは無条件で受け入れないと置いてかれるな」と観客の早分かりを促すぶっ飛びビジュアルが映し出されるので、心を強く持って鑑賞に挑んでいただきたい。

『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。』© 2019 New Classics Media Corporation

本作の主人公は両親を殺されて孤児となり、敵討ちを心に誓い武術界の正義の門派・青雲門に弟子入りした小凡（しょうはん）。師匠の娘・霊児（れいじ）や兄弟子たちに支えられ、厳しい修行を経て成長した小凡は魔教の神器「摂魂棒」を偶然手に入れる。ついに宿敵、雪琪（せつき）との死闘に挑むことになるが、想像を絶する“善と悪”の激闘が小凡を待ち構えていた！ ……すんなりとは理解できない設定かもしれないが、数々のカンフー伝奇ドラマを手がけてきたシウトンのひさしぶりの監督作品というだけでファンにはたまらないだろう。

『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。』© 2019 New Classics Media Corporation

まるで狂った打ち上げ花火だ！ 超強引展開のクライマックスは必見

ファンタジー世界を表現するのに必須なCGだけでなく、まるでシルク・ドゥ・ソレイユなエアリアル演舞まで飛び出すあたりは、さすがシウトン作品といったところか。本格的な中国武術云々こそ少ないものの、東洋医学の“気”にちなんだ設定がぶっ飛びファンタジー設定に強度をもたらしている。いわゆるラノベ的な世界観からのRPG的展開にポカーンな世代の映画ファンも、余計なことは考えずにじ～っと観ていれば理解できるように出来ているのでご安心を。

『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。』© 2019 New Classics Media Corporation

本格的なバトル展開までにユル～いツンデレ描写やイチャイチャシーンが過剰に盛り込まれていて、途中で何を観せられているのか分からなくなってくるものの、そもそもがラノベなのでそのあたりはお約束みたいなもの。中盤の武術大会シークエンスからは『グリーン・デスティニー』（2000年）のワイヤーアクションばりのド派手バトルが堪能できるし、終盤からは「無限の住人」と『妖怪大戦争』（1968年）をミックスしたような超展開に突入する。

『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。』© 2019 New Classics Media Corporation

あまりに壮大っぽいお話なので3時間超えくらいは覚悟していたが、クライマックスの狂った打ち上げ花火みたいな超強引展開で2時間弱に収めてしまうシウトンの豪腕に拍手。主演のシャオ・ジャンは高橋一生ぽさもあるナヨイケメンだし、霊児、雪琪、碧瑶を演じるタン・イーシン、リー・チン、モン・メイチーの美しさは拝礼もの。あと犬と猿がかわいいので動物好きにもオススメ（？）だ。

『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。』© 2019 New Classics Media Corporation

『ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。』は2020年7月24日（金）よりシネマカリテほか公開