仰天!! 生まれ変わったらハエだった!『バーフバリ』監督による“ハエ・アクション”『マッキー』

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ライター:松岡環
仰天!! 生まれ変わったらハエだった!『バーフバリ』監督による“ハエ・アクション”『マッキー』
『マッキー』©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM

だってインド映画だもん! ハエだって歌うし踊る!!

「♫マッキー、マッキー、マッキー♪」……インド映画は歌う。インド映画は踊る。インド映画ではハエだって歌う、しかも、ステッキを持ってラインダンスしながら。

「♫マッキー・フーン・マィン・マッキー(マッキー、俺はマッキーさ)♪」

映画『マッキー』(2012年)が公開された時、日本の観客を仰天させたのは「ハエがラインダンスを踊る!」という映像だった。さらに、「輪廻転生したらハエだった」という主人公の運命にも、驚きの声が上がった。

『マッキー』
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インドのヒンドゥー教では「人は亡くなったあと何らかの生類に転生する」と信じられており、そのために現世で徳を積んで、来世ではさらにいい人生を送りたいとみんな思っているわけだが、それを知っているインド映画ファンの度肝を抜いたのが、この結末だった。転生した結果が、“人生”どころか“ハエ生”だったなんて、最悪じゃん! ということである。

『マッキー』©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM

ただし本作『マッキー』は、ハエに生まれ変わったところからが断然面白くなるのだ。まずは、それまでのストーリーを簡単に書いておこう。

恋敵に殺害された青年、よりによってハエに転生するも復讐を開始!

お気楽な貧乏青年ジャニ(ナーニ)は、向かいの家に住む美女ビンドゥ(サマンサ・プラブー)に一目惚れ。彼女は珍しいマイクロ・アーティストで、細密な細工物作りを職業にしているのだが、そのかたわら、恵まれない子供たちのためのNGOでも活発に活動していた。

やっとジャニの気持ちが通じそうになったころ、ビンドゥは寄付の依頼で実業家スディープ(スディープ ※役者と役名が同じ!)の事務所に出向く。ところが、その時から悪辣なスディープに目を付けられてしまう。ジャニが恋心を打ち明け、二人が相思相愛になったことを知ったスディープは、ビンドゥをわがものにするため、ある夜、手下と共にジャニを亡き者にする。しかしジャニは何と、ハエに輪廻転生したのだった!

『マッキー』©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM

ここまでは、恋物語もベタなら、悪徳実業家スディープの描写もベタのひと言。ビンドゥがマイクロ・アーティストという点だけ「ほほう、珍しい」なのだが、この設定が輪廻転生以降に生きてくる。そして、殺されたジャニがハエに生まれ変わるシーンから、CGのすごさが牙をむいていく。開始35分からが、この映画の本編なのである。

ハエの精密なフォルムと動き、複眼の見え方の描写、この世に存在するものとの大小感覚の認識学習等々、CGアニメと実写を合体させた名シーンが次々に登場し、見る者はハエの世界に引き込まれる。そして、仇敵スディープとの再会からビンドゥに関する記憶が呼び覚まされ、彼女の元へ文字通り飛んでいくハエのジャニ。そのハエがジャニだとわかったビンドゥと感激の再会を果たした後は、彼女との二人三脚、じゃない、二人七脚(ハエの脚は6本ですからね)の復讐劇が始まるのである。そこでビンドゥのマイクロ・アーティストの手腕が生かされ、ハエのための筋トレ用具や武器等々、様々な物が登場するのだが、それも楽しくて、何度でも見返したくなる。

『マッキー』©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM

さらに、スディープへの復讐行動の数々がまたすごい。ハエの習性を生かした復讐シーンは、いずれもよくぞこれだけ考えたものよ、と感心してしまうほど。スディープをぎゃふんと言わせたらガッツポーズをするなど、ハエらしからぬ行動にも拍手パチパチ。メイキングで監督が語っていたのだが、「ハエのいろんな動きが何を意味するのか。それをわからせてくれるのが、スディープやビンドゥの反応なんだ」とのことで、受け手の人間たちも全員演技賞ものである。

『ハーフバリ』シリーズのS・S・ラージャマウリ監督の飛躍作!

で、本作の監督なのだが、これが何と! かの『バーフバリ』シリーズのS・S・ラージャマウリ監督なのである。『バーフバリ 伝説誕生』(2015年)に先立つ作品こそが『マッキー』だったのだ。

「マッキー」とは、もともとヒンディー語で「ハエ」という意味で、元のテルグ語版のタイトルは「Eega(イーガ/ハエ)」。ラージャマウリ監督は、『マッキー』の前作『あなたがいてこそ』(2010年)でもCGを使って自転車を擬人化しており、さらにその前作『マガディーラ 勇者転生』(2009年)でも「転生」をモチーフにし、かつCGを随所で使っている。この2作から『バーフバリ』へと大飛躍するジャンプ台となったのが、本作『マッキー』だったと言える。CG&VFX制作会社マクタVFXの本作での奮闘が、『バーフバリ』を作る実力を鍛えたのである。

『バーフバリ』へ繋がったと言えば、本作の演技巧者スディープは、『バーフバリ 伝説誕生』にも武器商人としてワンシーンだけ出演している。ラージャマウリ監督は、『バーフバリ 王の凱旋』(2017年)でもスディープに出演してほしかったとのことだが、彼にふさわしい見せ場を用意できなかったので、起用をあきらめたという。そんな因縁もある『マッキー』、『バーフバリ』ファンなら必見! の名作なんである。

『マッキー』©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM

文:松岡環

『マッキー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年3月放送

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『マッキー』

お調子者の貧乏青年ジャニは、向かいに住む美人のビンドゥに片思い中。一方、マフィアまがいの建設会社社長スディープもビンドゥの美貌に一目惚れ。ビンドゥが内心、ジャニに惹かれていると知ったスディープは、ジャニを殺してしまうが、死んだ彼の魂は1匹のハエに生まれ変わり……。

制作年: 2012
監督:
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