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インド版『ランボー』⁉ 無敵の肉体で躍り舞い戦う次世代スター、タイガー・シュロフ主演『タイガー・バレット』

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ライター:#松岡環
インド版『ランボー』⁉ 無敵の肉体で躍り舞い戦う次世代スター、タイガー・シュロフ主演『タイガー・バレット』
『タイガー・バレット』

インド映画界の次世代スター! あなたはタイガー・シュロフを知っているか?

日本で、タイガー・シュロフを知っている人はまだ少ないだろう。出演作の日本公開はゼロ、ソフト発売作が『タイガー・バレット』(2018年)の1作で、映画祭での上映作品も『フライング・ジャット』(2016年)のみ。Netflixで、デビュー作『ヒーロー気取り』(2014年)が一時期配信されていたが、現在は見当たらない(※2020年3月時点)。というわけで、一部熱狂的ファンがいるものの、知名度は高くない。ところがインドでは今、最も勢いのあるボリウッド・スターの1人として注目を浴びているのだ。

そもそもの注目されたきっかけは、デビュー2作目となる『Baaghi/バーギー(原題)』(2016年。バーギーは「反逆者」の意)。インド武術の修業をした青年が、誘拐された元カノを取り戻そうと闘いを繰り広げるストーリーで、タイガー・シュロフの身体能力がフルに発揮された作品だった。笑いも取り入れ、ジャッキー・チェンの『ドランク・モンキー/酔拳』(1978年)的テイストを持つこの作品は、ヒット作の目安である100カロール(1カロール=1千万ルピー)、つまり10億ルピー(約15億円)を軽く超える世界興収を挙げて人々を驚かせた。

この身体能力を放っておく手はない、と2018年に作られた続編『Baaghi 2』が、この『タイガー・バレット』である。笑いは抑え、アクション満載のサスペンス映画に仕上げられた本作は、何と25億ルピー超えという大ヒットとなる。インド国内興収だけでも16億ルピーで第7位、デビュー4年目のスターとしてはまさに快挙だ。ところがさらに翌2019年、リティク・ローシャンとタイガー・シュロフの主演作『War(原題)』が興収第1位を獲得、しかも世界興収47億5千万ルピー(約70億円)という、ぶっちぎりの成績を残す。先輩人気スターとのダブル主演作とはいえ、タイガー・シュロフへの注目度が跳ね上がったのは自然の成り行きだろう。

※インドルピーは2020年2月末のレートで換算

かつて結婚を誓った愛する女性の「HELP」にケンカ最強のマッチョな主人公が大暴れ!

『タイガー・バレット』の原題は『Baaghi 2』だが、前作『Baaghi』とは特にストーリーはつながっていない。主人公の名前がランビール・プラタープ・シン、通称ロニーだということが共通しているだけで、主人公の職業やキャラクターも全く別だ。

そのロニー(タイガー・シュロフ)が軍人として駐屯しているインド北部の紛争地帯、カシミール地方から物語は始まる。ある日、軍宿舎にいるロニーのもとに、大学時代の恋人ネーハ(ディシャ・パタニ)から電話がかかってくる。「助けて」という彼女の切羽詰まった声を聞いて、ロニーは7日間の休暇をもらい、彼女の住むインド西海岸のゴアへと赴く。

『タイガー・バレット』
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発売・販売元:ギャガ

ロニーとネーハは大学時代、結婚まで考えた仲だった。だが、ネーハの父のせいで、彼女は別の男性シェーカル(ダルシャン・クマール)と結婚する。ネーハ夫婦にはリアという女の子がいたが、幼稚園の初登園日に園の前で襲われ、ネーハは負傷、リアは車ごと誘拐されたとネーハは主張する。しかし、ロニーが調査すると誰もリアの存在を知らず、シェーカルは「子供なんかいなかった。妻の妄想だ」と言うではないか。警察もネーハの訴えを受理したものの、2ヶ月で捜査を打ち切るという。

『タイガー・バレット』

ネーハと共に警察署に行ったロニーは、警官の態度にブチ切れて大立ち回りを演じ、投獄されたところを副総監のシェルギル(マノージ・バージパイ)に助けられる。シェーカルの弟でヤク中毒のサニー(プラティーク・バッバル)や、レンタカーの店を経営しながら裏で麻薬取引にも手を染めているウスマーン(ディーパク・ドブリヤ)ら、あやしい人物が浮かび上がる中、警察署にはヒッピーまがいの格好をした新しい署長LSDことローハー・シン・ドゥル(ランディープ・フーダー)が赴任してくる。何が真実かを探っていくうちに、ロニーは思いもよらぬ事態に直面することになる……。

ダンスのような壮絶アクションはまるでインド版『ランボー』!? 原作はあの『バーフバリ』キャスト

見どころはやはり、タイガー・シュロフが繰り出す様々な壮絶アクションだ。ムキムキの肉体なのに身が軽く、身体技、特に脚技が見事で、目を奪われる。中には「ないない!」と首を横に振りたくなるアクション振り付けもあるが、インド映画の水準からすれば、かなり高度でリアリティのあるアクション・シーンが揃っている。中でも終盤に登場する密林のアジトでの闘いは、ワン・マン・アーミーといい、上半身裸のスタイルといい、まさにインド版『ランボー』(1982年)。ロニーが若い肉体をしならせて、バク転しながら銃を撃つシーンなどは、『ランボー』以上の迫力だ。

『タイガー・バレット』

それと共に、少々入り組みすぎのきらいはあるが、ストーリーやプロットもよく練られている。実は、本作は2016年のテルグ語映画『Kshanam(2016年:原題)』(※クシャナム=瞬間)のリメイクで、この作品の原案と脚本を担当し、主演を務めたアディヴィ・セッシュが『タイガー・バレット』でも原作者としてクレジットされている。アディヴィ・セッシュは『バーフバリ 伝説誕生』(2015年)でバラーラデーヴァの息子バドラを演じた俳優で、若手ながら脚本家、監督としても活躍中。『Kshanam』はヒンディー語映画の本作のほか、タミル語やカンナダ語の映画にもリメイクされている人気作だ。

また、本作の監督アフメド・カーンは、もともと舞踊監督として活躍していた人で、そのためか豪華なダンスシーンがアクションの合間に登場するのも楽しい。タイガー・シュロフはダンスの名手でもあり、細かなステップの刻み方やユニークな手振りなど、魅せる要素がいっぱいだ。本作の中に1曲、『フライング・ジャット』でタイガー・シュロフと共演したジャクリーン・フェルナンデスがカメオ出演する曲があるが、これは1988年に大ヒットした映画『Tezaab(原題)』(※テーザーブ=劇薬)の歌「Ek Do Teen」(※エーク・ドー・ティーン=1、2、3)のカバー。あれやこれや、見どころ満載の『タイガー・バレット』なのである。

タイガー・シュロフの父は、1980~90年代のトップスターで、現在もその存在感からいろんな映画にひっぱりだこの名優、ジャッキー・シュロフ。

『バーフバリ』シリーズのプラバース主演作で2020年3月27日(金)に日本公開される『サーホー』にも、重要な役で出演している。だが、デビュー当時は「ジャッキー・シュロフの息子」と宣伝されたタイガー・シュロフも、今や冠はまったく不要。2020年は『Baaghi 3(原題)』の公開を3月に控えており、シリアを舞台にアクションもさらにスケールアップしているという。インド映画を代表するアクションスター、タイガー・シュロフの魅力に『タイガー・バレット』で出会っておくべし、である。

文:松岡環

<訂正>

本記事について、以下の誤りがございましたのでお詫びして訂正いたします。

(誤)『Kshanam(2016年:原題)』(※クシャナム=瞬間)のリメイク作品の原案 → (正)『Kshanam/クシャナム(瞬間)』のリメイクで、この作品の原案
(誤)タミル語やテルグ語の映画にもリメイク→(正)タミル語やカンナダ語の映画にもリメイク

『タイガー・バレット』はCS映画専門チャンネル ムービープラスにて2020年3月放送

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『タイガー・バレット』

陸軍に在籍するロニーは、大学時代の元恋人ネーハーから突然助けを求める電話を受け彼女の住むゴアに向かう。実業家と結婚して一児の母となっていたネーハーは、娘が誘拐されたから救い出してほしいと頼む。警察も取り合ってくれず、頼みの綱はロニーだけという彼女に心を揺さぶられ引き受けるが、捜査を進めるうちにロニーは徐々に事件に違和感を覚え、彼女自身の証言までも疑い始める……。警察や軍をも巻き込む恐るべき陰謀があらわになったとき、ロニーの怒りはマシンガンの銃弾となって降り注ぐ!

制作年: 2018
監督:
出演: