河村康輔「『グッドフェローズ』はマフィアの弱さも見えて、“分かるな~人ってそうだよね”って(笑)」(2/5)

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ライター:BANGER!!! 編集部
河村康輔「『グッドフェローズ』はマフィアの弱さも見えて、“分かるな~人ってそうだよね”って(笑)」(2/5)
グラフィックデザイナー/アートディレクター/コラージュアーティスト、河村康輔さん。近年では『AKIRA』で知られる大友克洋氏との一連のコラボレーションを目にした人も多いはず。巨匠の作品を文字通り“切り刻む”ことが許されたアーティストなのです。
偏り気味と自称する映画嗜好やアーティストとしてのキャリアに影響を与えた“映画体験”と、それにまつわる人生の様々なエピソードをお届けします。

非の打ちどころがないくらいリアル

『THIS IS ENGLAND』(2006年)

これは青春時代に一番好きだった音楽とかシーンを描いた映画で、自分が高校生の頃とかに憧れていた世界というか。スキンヘッズの思想自体はあまり良いものだと思っていないんですが、でも高校生の頃ってスタイルだったり音楽だったり、表面的な部分なんですけど、やっぱりこの文化がすごく好きで。

スキンヘッズの映画って色々あると思うんですけど、何本も観てきた中で、これは本当によくできてるなと。本当にその場にいた人の話というか、描き方もすごくリアル。十代の頃にこのへんのカルチャーをすごく調べて色んな音楽を聴いたり、ファッションを真似したりしてきて。それでこの映画を観た時に、ものすごくリアリティがあったというか、現場にいないと多分これ作れなかっただろうなっていうくらい、大げさじゃなく、ちゃんとリアルが描かれている映画だなって。

そういうのを題材にした映画はいっぱいあるんだけど、掘ってる人間からすると「いや、これはないでしょ」っていうのが出てくるんですよね。服装一つとっても「この服は着ないよね」とかっていうのがあったりするんですけど、この映画はそれがなくて全部めちゃくちゃリアル。高校生の頃からいまだに……今は研究対象として掘ってるんですけど(笑)、色んな写真を見たり本を読んだり音楽を聴いたり細かく掘ってきた色んなものが入っていて、非の打ちどころがないというか。たぶん作った人(シェーン・メドウス監督)は、このシーンでリアルにそれを体験してきたんだろうな、と思いながら映画館で観ました。

あっちには子どものスキンヘッドが本当にいて、僕がすごく好きな写真集の表紙も子どもなんですよね。子どものスキンヘッドが2人並んでて、こういう格好をしてストリートで座ってる表紙の写真集。この映画も主人公が子どもで、イギリスの階級社会のすごく複雑な問題だったりを、そこで育った人が作ったんだなっていうリアルさが出ていて。役者が演じているのは分かってるんですけど、あまりにもリアルすぎて「これドキュメンタリーだったっけ?」みたいな感じで観ちゃいました(笑)

(サッチャー政権とか紛争の話も)いちいち説明しないじゃないですか。全く説明なく進んでいくし、その中でシビアな人種問題とかを普通に、当時マジでこうだったんだろうなっていうのが包み隠さず描かれている感じがして、観てて怖くなるくらい、ここに生まれなくてよかったなって思うくらいに(笑)、リアルな映画だなと思います。

僕の作品は、どう扱われても「ストリートで作ってるもの」という部分は変わらない

常に現場というか、自分が体験してきたこととか、いま体験していることをそのまま表に出すというか。“伝える”って言ったら大げさですけど、自分のフィルターを通してビジュアル化して、それで皆にちょっとでも何か考えてもらえたらいいなっていうところで(作品を)作ったりするので。

自分が生まれ育った場所も、田舎であんまり柄も良くない場所だったりして。そういうところで育って、引きこもってるわけでもなく街でも普通に遊んでいて、運良く周りに映画とか音楽が好きな先輩とかがいて、そういうカルチャーとかに触れて、それをずっと両立しながらやってきたっていう背景があるので。

で、いまだにそういうストリートの文化っていうものがすごく好きで。自分の作るものには、それが美術館に入ってもどこに行っても、お金持ちの方が買ってくれても、僕の中にはずっと“ストリートで作ってるもの”っていうのは変わりないかなっていう、始めた頃からそういう感じでやってます。

僕が“コラージュ”を意識したのは、やっぱりパンクのレコードジャケットが最初なので。もともと皮肉を込めるものだったので、特にジャケットでそれを表現するっていうのが一番最適な手法だったんだろうなって。何かひとつ普遍的なものを足すだけで全く違う意味合いになる、真逆のメッセージ性を持つものになるっていうのを、考えて絵で描くんじゃなくて……もちろんそれもすごいんですけど。高校生のときにそういうものを見て思ったのは、有りものをひとつ変えるだけで、それだけのメッセージ乗せるって逆にすごくリアルだなって。ちゃんとラフ画も描いてから女王陛下の目を隠すとか安全ピンを足した絵を描くよりも、全然関係ないものを組み合わせただけで、その2点だけでメッセージが出来上がるってすごいなと。

僕のすごく尊敬しているアメリカの作家、ほんとにお父さんかお爺ちゃんみたいな人なんですけど。最初に見たその人のコラージュが、たぶん60~70年代くらいのアメリカで色んなものが消費されてお金がバンバン飛び交ってる中で、下の層の人がお金もなくて格差がすごくあった頃の、何かの雑誌広告の1ページで。すごく幸せそうなお母さんが笑顔で子どもを抱いてる広告なんですけど、その子どもの部分を爆弾に変えただけのコラージュで、それを高校生のときに見て本当にすごいなと思って。抱えた爆弾を笑顔で見てる、それだけですごいメッセージだなと。

もちろんそれは絵でも描けるんですけど、もともとは幸せに見せる広告っていう背景があるところに、爆弾を持たせてメッセージを変えるって、何重構造にも意味合いが深まるなと思って、すごくそこに惹かれたんですよね。

当時はただ“悪い”ってカッコいいなって(笑)

『グッドフェローズ』(1990年)

初めて観たのは割と遅くて、多分ハタチ超えてからだと思います。いわゆるメジャー作品だと思ってたので最初は全然興味が向かなかったんですけど、深夜のテレビでたまたま観たのかな。途中から観ちゃってボーッと流し観してたら、これめちゃくちゃおもしろい! ってなって、そのまますぐDVD借りに行って通して観ました。

当時は単純にカッコいいなっていう感想しかなかったんですけど。“悪い”ってカッコいいなって(笑)。なんか『ゴッドファーザー』とかよりも全然好きです。たぶん心が弱くて、なんでもハイハイ言ってたらそっち(マフィア)のほうに入っちゃってたというか、根は悪くない奴なんだろうなっていうのが出てるじゃないですか(笑)。でも、いざ入ったらそういう方向に染まっていくっていうのも描かれていて、その複雑な感じというか。

途中でもともといた世界に気持ちが戻っていくけど、一回そっちに足を踏み入れたらもう自分でも戻れない、みたいな。あ~分かるな、人ってそうだよねっていう(笑)、これも観ていてすごくリアルに感じて。悲しかったですけど、「つらいな~」と思いながら観てるんですけど、でも8割方カッコいいので(笑)

絆みたいなものが重要なんですけど、それを裏切ったり、どんだけ悪い奴でも裏切られたほうもすごくショックを受けてたりとか(笑)。もちろん駆け引きとかも色々あったり……人間の心理が分かりやすく描かれてるなと思います。

ずっと“演じてる”だけなのかも知れない

(挙げた作品を)並べて見てると、やっぱりファッションが好きなのかなって思いましたね(笑)。なんか全体的に服がカッコいいんですよね、着てるものが。あとは人としてもカッコよかったり。でも、ただカッコつけてるだけじゃなくて、どこか人間味があるというか、どこか間抜けだったりとか、そういうのが好きなのかなって、いま思いました(笑)

最初はパリッと形から入っていって、表面的なところを見せていくじゃないですか。「これがマフィアだ」「だからこういうふうに振る舞わないきゃいけない」って演じているうちにどんどん当たり前になってきて、それが本当の自分になっちゃう。そういう過程って誰にでもあることじゃないですか。最初は真似ごとで作ってて、自分はデザイナーだとかアーティストなんだって思ってるうちに、気づいたら自然とそういう立ち居振る舞いになってたり。

そういうふうに“しなきゃいけない”と思ってやってたことが、あるときにはもう普通になっちゃう。それで思い返してみると「俺こんなだったっけな?」みたいな変なギャップが生まれて。そこは良くも悪くも、人間って自分の中で思い込んだら変わっちゃうものっていうか、ずっと演じてるのかなって、これを観てるとすごく思いますね。

 

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