多彩なギターサウンドとエンジン音が融合『フォードvsフェラーリ』のパワフルな音楽

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
ライター:森本康治
多彩なギターサウンドとエンジン音が融合『フォードvsフェラーリ』のパワフルな音楽
『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

『LOGAN/ローガン』の監督・作曲家コンビが再び熱い男のドラマを描く!

『君に逢いたくて』(1995年)で監督デビューを果たし、スタローンやデ・ニーロなどオールスターキャストが勢揃いしたクライムスリラー『コップランド』(1997年)で注目を集めた鬼才ジェームズ・マンゴールド。伝記映画、ロマコメ、ミステリー、西部劇、アクションコメディ、『X-MEN』シリーズのスピンオフなど、20年以上のキャリアの中で様々なジャンルを手掛け、その演出手腕を高く評価されている監督・脚本家である。

当初は作品ごとに異なる映画音楽家と仕事をしてきたマンゴールドだったが、近年はマルコ・ベルトラミに作曲を依頼する機会が増えている。彼らが初めてタッグを組んだ『3時10分、決断のとき』(2007年)はアカデミー賞作曲賞にノミネートされ、その後『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)と『LOGAN/ローガン』(2017年)を経て、今回の『フォードvsフェラーリ』(2019年)で4度目の顔合わせとなる。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

こうして両者のコラボ作品を見てみると、マンゴールドが男のドラマを描く時にベルトラミが招聘される傾向があるようだ。ベルトラミは本作でも男の友情とプロフェッショナルの意地、そしてカーレースの興奮を観客に伝える熱い音楽を聴かせてくれている。

パワフルで荒削りなギターロック・サウンドが大迫力のカーレース・シーンを盛り上げる!

今回ベルトラミはシンフォニックなオーケストラ・スコアではなく、ギター、ベース、打楽器(ドラムス/パーカッション)、鍵盤楽器(ピアノ/ハモンドオルガン)とホーンセクションで編成された、15人前後のバンドによるアグレッシブなスコアを作曲している。とりわけファズギターが唸るパワフルなギターロック・サウンドが印象的だ。本作のメイン楽器となるギターの使い方にはかなりこだわりがあったようで、アコースティックギター、エレクトリックギター、ラップ・スティール・ギターをシチュエーションに応じて巧みに使い分けている。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

物語の舞台である60年代テイストのサウンドに仕上げたベルトラミのスコアは、ジェームズ・バートンの「Polk Salad Annie」やリンク・レイの「Ace of Spades」、ザ・バーズの「Stranger in a Strange Land」、ソニックスの「Have Love Will Travel」など、映画の中で使われているクラシック・ロックとも抜群の相性を見せている。またベルトラミの音楽は、時にレーシング・カーのエンジン音と渾然一体となり、「エンジン音が音楽的に聞こえる」という化学反応まで起こしてみせる。本作は第92回アカデミー賞で録音賞と音響編集賞を含む4部門にノミネートされているが、それも納得のサウンドデザインである。

『フォードVSフェラーリ』オリジナル・サウンドトラック

「スピードの向こう側」の世界を疑似体験させる神秘的な楽曲

エネルギッシュで荒削りなギタープレイが炸裂するロック・テイストの楽曲、そしてスコア・アルバム1曲目の「Le Mans 66」で聴かれる「マイルズのテーマ」の熱いメロディで、激しいカーレースと男たちのドラマを盛り上げる一方、「7000 RPM」や「Walk the Track」などの楽曲では、アンビエント・ミュージック風の深遠なサウンドを聴かせている。ラップ・スティール・ギターなどの持続音を用いたこれらのスコアは、天才的カーレーサーのマイルズ(クリスチャン・ベイル)とカー・デザイナーのシェルビー(マット・デイモン)が劇中で語る「完璧なラップ」と「7000 RPMの世界」に、ある種の神秘性をもたらしていると言えるだろう。主に企業ドラマのシーンで使われる、ラロ・シフリン風のグルーヴィーなジャズ・スコアも大人の味わいを醸し出している。

映画音楽界の巨匠、故ジェリー・ゴールドスミス(『オーメン』『スター・トレック』『グレムリン』ほか)を師と仰ぐベルトラミは、本来ゴールドスミス譲りの倹約的なオーケストラ・スコアが持ち味の作曲家である。しかし、長年の相棒バック・サンダースと共同名義で作曲を手掛ける際は、『ハート・ロッカー』(2008年)のような音響系スコアで、音楽表現の幅を広げている。本作を鑑賞の際は、緻密に計算されたベルトラミの音楽にも是非注目して頂きたいと思う。

『フォードvsフェラーリ』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

文:森本康治

Share On
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

『フォードvsフェラーリ』

元レーサーのカーデザイナー、キャロル・シェルビーのもとに、巨大企業フォードから信じがたいオファーが届く。それはル・マン24時間レースで6連覇中の王者、フェラーリに対抗できる新たなレースカーを開発してほしいとの依頼だった。心臓の病でレース界から身を退いた苦い過去を持つシェルビーは、そのあまりにも困難な任務に挑むため、型破りなドライバー、ケン・マイルズをチームに招き入れる。しかし彼らの行く手には、開発におけるメカニックなトラブルにとどまらない幾多の難題が待ち受けていた。それでもレースへの純粋な情熱を共有する男たちは、いつしか固い友情で結ばれ、フェラーリとの決戦の地、ル・マンに乗り込んでいくのだった……。

制作年: 2019
監督:
音楽:
出演:
  • BANGER!!!
  • 映画
  • 多彩なギターサウンドとエンジン音が融合『フォードvsフェラーリ』のパワフルな音楽