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執念の麻薬取締官が一線を越える! ジョニー・トーの香港ノワールをリメイク『毒戦 BELIEVER』

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ライター:#BANGER!!! 編集部
執念の麻薬取締官が一線を越える! ジョニー・トーの香港ノワールをリメイク『毒戦 BELIEVER』
『毒戦 BELIEVER』©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.

ジョニー・トー先生の名作ノワール『毒戦』を韓国映画界期待の星が大胆リメイク!

香港ノワールの代表格、ジョニー・トー監督作『ドラッグ・ウォー 毒戦』(2012年)を大胆かつ挑戦的にリメイクした韓国映画『毒戦 BELIEVER』が2019年10月4日(金)公開された。日本統治時代の韓国を舞台に、まさかの『サスペリア』×『AKIRA』なSFバトルアクション(&百合)が繰り広げられる『京城学校:消えた少女たち』(2015年)で多くの映画ファンから注目を(そして一部のファンからは熱狂的な支持を)集めたイ・ヘヨン監督が、もはやリメイクとは思えないほどエキセントリックなネオ・ノワールに仕上げた意欲作だ。

『毒戦 BELIEVER』©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.

中国公安警察の麻薬捜査官による執念の潜入捜査を描いたオリジナル版は、ジョニー・トー先生だけあってポンポン死人が出るわウンゲロ描写も容赦なしのトー節が炸裂していたが、本作は近年の韓国映画らしいスタイリッシュな映像によって、オリジナル版をモダンに換骨奪胎。巨大麻薬組織のボスと言われている謎の存在、通称“イ先生”をブタ箱にぶち込むべく奮闘する麻薬取締局=“マトリ”たちの姿を、ケレン味たっぷりに描いている。

気になる改変点は? というか正直もうほとんどオリジナル作品になってます!

オリジナル版とはメインキャストの設定からがっつり変更していて、『初恋のきた道』(1999年)のスン・ホンレイが演じたジャン警部とチョ・ジヌン演じる麻薬取締局=“マトリ”のウォノ刑事には共通点もあるが、ルイス・クーが演じた死刑を免れるためマトリに情報を提供する裏切り者テンミンを、リュ・ジュンヨル演じる組織の下っ端ラクに置き換えたことで自由度が増し、ミステリー要素の醸成など全体的なムードにも影響を与えている。

『毒戦 BELIEVER』©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.

また、ラム・シューらが演じた“香港の七人衆”などのマンガ的な燃える設定もがっつり改変し、代わって登場するのはチャ・スンウォンやキム・ジュヒョクらが演じるクレイジーな売人集団。どこか『鮫肌男と桃尻女』(1998年)を思わせるキッチュなキャラ造形が楽しく、特にキム・ジュヒョク演じるハリムは大ボス役じゃないのがもったいないほどの強烈なインパクトだ。

『毒戦 BELIEVER』©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.

(※キム・ジュヒョクは2017年10月に交通事故によって逝去。本作が彼の遺作となった)

チョ・ジヌン&リュ・ジョンヨルのケミストリー! 主演2人の関係性はより複雑かつ濃厚に

チョ・ジヌン演じるウォノ刑事は、捜査の囮に使っていた少女を死なせてしまったことに自責の念がある重いキャラクターだが、潜入捜査時には売人になりきる必要があるためアッパーな言動が多く、「ツンデレ」という日本語を使ったりとファニーな一面も見せてくれる。なお、過剰摂取したクスリの禁断症状を抑えるために氷風呂に浸かるオリジナル版の名シーンはしっかり再現しているのでご安心を。

『毒戦 BELIEVER』©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.

そんなジヌンとW主演を担うのが、組織に見捨てられたラクを演じるリュ・ジュンヨル。『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』(2017年)の気の良い青年ジェシク役の彼だよ、と言われなければ気がつかないくらいのキャラ変ぶりで、終始無表情で感情が読めないラクを怪しい魅力たっぷりに演じてみせた。二人は捜査を進めていくうちに心を通じ合わせたようにも見えるが、ジュンヨルのミステリアスな演技のおかげでラクの心の底が読ず、最後までハラハラさせてくれる。

『毒戦 BELIEVER』©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.

あの強烈なキャラをどうリメイクしたのか? 監督のセンスの良さが光る好改変

そしてオリジナル版のファンが気になるのは、やはり強烈な意外性でシビれさせてくれた聾唖の最強兄弟だろう。本作では姉弟に変更されているが、めちゃくちゃ今っぽいレイドバックしたカッコよさで、こちらもやはり望月峯太郎的な雰囲気を漂わせている。オリジナル版の設定は武侠ものっぽさもあって非常に燃えたが、そこまんまなぞっても意味ないだろ! という監督の心意気はもちろん、なによりも画的にダサくならないセンスの良さは非常に信頼できる。

『毒戦 BELIEVER』©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.

最後の最後に「えっ……」と絶句してしまう衝撃展開を用意してあるあたりも流石だが、オリジナル版より精神的なダメージは少なめで、キツ~い仕事の後に先輩がメシを奢ってくれたみたいな複雑な清涼感を与えてくれる。オリジナル版を観たことがあるとラストの展開を思い出して戦々恐々……みたいな鑑賞モードになってしまう可能性もあるので、未見の人は本作を先に観ておくのも全然アリだ(当然ながら、結末もまったく違う展開なのでお楽しみに!!)。

『毒戦 BELIEVER』©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.

『毒戦 BELIEVER』は2019年10月4日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開

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『毒戦 BELIEVER』

巨大麻薬組織に君臨し、その悪名を轟かせているにも関わらず、誰ひとり本名も経歴も、顔さえ知らない麻薬王“イ先生”。麻薬取締局のウォノ刑事は、組織破滅のため長年イ先生を追っているが、いまだにその尻尾すら掴めない。ある日、麻薬製造工場が爆破され、事故現場から一人の生存者・ラクが発見される。ウォノ刑事は組織に見捨てられたという青年ラクと手を組み、大胆かつ危険極まりない筋書きによる、組織への潜入捜査を決意する。そこは麻薬に魅入られた狂人たちの巣窟だった―。

制作年: 2018
監督:
出演: