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「リアムはライブ前夜、眠れなかったそうです」プロデューサーが明かす『オアシス』ドキュメンタリーの舞台裏

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ライター:#佐藤久理子
「リアムはライブ前夜、眠れなかったそうです」プロデューサーが明かす『オアシス』ドキュメンタリーの舞台裏
『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー 』ロンドンプレミア Photo by StillMoving.Net for The Walt Disney Company Limited
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限定上映『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』
プロデューサーが明かす再結成ライブ&映画化の舞台裏

90年代イギリスを代表する人気バンドのひとつで、ツアー中に突然活動を休止したオアシスが、16年ぶりに再結成ワールドツアーを展開し成功を収めたのが2025年。その記念すべき過程を追ったドキュメンタリーが『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』だ。

『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』©︎2026 Disney. All Rights Reserved.

9月5日にヴェネチア国際映画祭でワールドプレミアを迎え現地を熱狂に包んだ本作の音頭を取ったのは、ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』(2013年~)シリーズなどで知られる脚本家にしてプロデューサー、スティーヴン・ナイト。オアシスのボーカリストであるリアム・ギャラガーと親交のあった彼が、兄弟からの依頼に応え、指揮を執った。

今回ヴェネチアで、ナイトに本作の製作のプロセス、ギャラガー兄弟の長年の確執と現在について訊いた。

スティーヴン・ナイト(撮影:佐藤久理子)

「ふたりとも、どこかで“また始めるべきだ”と感じていたのだと思います」

――映画に先立って、まずオアシス再結成自体がどのように持ち上がったのかはご存知ですか。

いえ、それは我々にとってもいまだに謎なのです。でもわたしが想像するに、ギャラガー兄弟にとって再結成は不可能であると同時に必要なことだったのだと思います。

“不可能”というのは、「いや、そんなこともうあり得ないだろう」という気持ち。一方で、兄弟ふたりにとってあの終わり方は最悪で、まだやり遂げていないことがあるという思いがあったと。ふたりとも、どこかで「また始めるべきだ」と感じていたのだと思います。

とはいえ、どうやってそれが可能になるのか、ふたりともそれがわからずにこの年月が過ぎていった。どんなきっかけでそれが可能になったのかはわかりませんが、そこから膝を突き合わせた話し合いや多くの電話のやりとりがありました。でも、これは兄弟の個人的な問題です。

『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』Simon Emmett

年を取るにつれ人は自分らしくなっていくとよく言われますが、まさにそういうことではないでしょうか。彼らも年を重ね、子供たちが成長するにつれ、自分らしくないもの、たとえば虚勢や見栄、あるいは世間体や「こうあるべき」といったものを脱ぎ捨てることができたんじゃないかと思います。

そして隔たりを超えて互いを見つめたとき、「結局のところ僕らは同じ思いを抱えているのだから、やってみてもいいんじゃないか」と考えたのかもしれません。もちろん、すべての家族がそういう展開になるとは限らないですが。

『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー 』© 2025 Harriet T K Bols

――本作以前に、ギャラガー兄弟とは面識がありましたか。

数年前、リアムのシングルのミュージックビデオを製作したことがありました。きっかけは『ピーキー・ブラインダーズ』のイベントで、彼にパフォーマンスをしてもらうことを企画して、コンタクトしたことでした。彼からはそれと引き換えに、ビデオを製作してくれないかと頼まれた。つまりまったくのバーターで、金銭的なやり取りがない形としてです。

わたしたちはとても気が合いました。でも、さすがに今回のドキュメンタリーの依頼がきたときは本当に驚いた。リアムのパートナーから連絡が来たのです。「お忙しいでしょうが、製作に興味はありませんか」と。わたしは「忙しいですけれど、そんなことは関係ありません。もちろんやりたいです」と答えました(笑)。そしてなんとかしてこれを実現させる方法を見つけ出していったのです。

『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー 』Courtesy of Oasis: Don’t Look Back in Anger

「日本、韓国、ブラジル、イギリス……そこにはたしかに“ピース・アンド・ラブ”があった」

――あなたは本作のプロデューサーであり脚本家というクレジットですが、オアシス兄弟は脚本通りに動く人たちではないですよね(笑)。実際の製作はどのようなプロセスだったのでしょうか。

もちろん、俳優のようにこちらの思い通りに動いてくれるわけじゃないですね(笑)。それどころか、彼らはいっさいコントロールが利かない(笑)。

ノエルと最初に会ったときのことですが、彼は再結成を発表したときの反響の大きさに心底驚いていました。ある程度はリアクションがあるだろうし、会場はアリーナクラスと予想していましたが、周囲からは「いやいや、スタジアム規模になるはずだ」と言われていた。で、実際の反響を知って、オアシスを当時経験していた世代だけでなく、次の世代、さらにそのまた次の世代までファンが広がっていることが明らかになった。

『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー 』

わたしはこれまでドキュメンタリーを製作したことはありませんでしたが、たんにカメラを向けるだけでは不十分で、明確な視点が必要だと思いました。その視点とは、「なぜそうなったのか?」という問いでなければならないと考えた。プロモーションやマーケティングなどの活動がいまほどではなかったにも拘らず、ある世代がその音楽を見出し、きわめて深い絆を築き上げてきたなかで、なぜあんなこと(活動停止)が起きたのか? という疑問。それはみんなが知りたいと思っていることだと考えました。

でも撮影を始めてすぐに、もうひとつの疑問が浮かびました。たとえばライブ初日のカーディフ(※ウェールズの首府)でのことですが、そこに親と子といったふたつの世代が居合わせ、感極まって涙を流し、お互いに抱き合う姿が見られた。そこに感じられたのは、この音楽がもたらしているもの――まるで彼らがそこに何かを見つけ出し、その歌を宝物として共有しているかのような感覚でした。そしてふと周りを見渡すと、他の誰もが同じ秘密を共有していることに気づく。すると突然、誰も予想していなかったような感情の波が押し寄せてきた。

ノエルは映画のなかで、ライブ中に何度も観客に背中を向けなければならなかったと語っています。父親と息子、あるいは母と子の姿を目の当たりにして、彼自身も感情がこみ上げてくるのを抑えきれなくなったからだと。

『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー 』ロンドンプレミア © 2026 Getty Images/Getty Images for Disney/Photo by StillMoving.Net for The Walt Disney Company Limited)

――その初めの問いを、あなた方は映像に収めることで答えを見つけようとしていたわけですね。それに対するあなた自身の答えはどのようなものですか。

そうですね。世界各地、南米やアジアでオアシスの音楽と特別な関わりを持つ人たちを見つけ出し、そこから答えを得ようとしました。ある韓国の女性がこんなことを言っていました。「落ち込んだとき、音楽が自分を立ち直らせてくれることはあるけれど、オアシスの場合は彼らが一緒に落ち込み、一緒に立ち上がってくれる」と。あまりに見事な表現で、わたしは自分には到底書けないような言葉だと思いました。

そして、そこから答えが見えてきた。ファンにとって、自分と同じ心境にあると感じられる彼らの存在こそが、「ここから抜け出せる」「もっと良くなれる」と信じさせてくれるものであるのだと。それこそが彼らの音楽なのです。ギャラガー兄弟はそれぞれその歌と向き合い、歌を介して互いに何かが伝わり合い、言葉を交わさずとも反応し合える。わたしたちが目の当たりにしたのはまさにそういうことでした。

また世界各地で人々が曲に反応する様子を見て、どこでもまったく同じなのだということに気づかされました。日本、韓国、ブラジル、イギリス……どこの国かということは重要ではない。こんなことを言うと、60年代のありきたりなメッセージと思われるかもしれませんが、そこにはたしかに「ピース・アンド・ラブ」があった。わたしたちはまさに「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」なのだという。この映画で、そういうメッセージを観る人に感じて頂けたら本当に嬉しいです。

『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー 』ワールドプレミア © 2026 Getty Images/Getty Images for Disney/Photo by StillMoving.Net for The Walt Disney Company Limited)

次ページ:「リアムは、ライブの前夜は眠れなかったと言っていました」
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『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー 』

世代を超えて熱狂的な人気を誇るオアシス。
オアシス奇跡の再結成ライブ「Oasis Live ’25」の興奮と感動が映画館で甦る!

全世界待望の再結成ライブとして、社会現象級の盛り上がりを見せた「Oasis Live ’25」。
世界中のスタジアムを埋め尽くす観客を歓喜と深い感動で包み込んだ圧巻のライブ・パフォーマンスに加えて、知られざる舞台裏、そしてリアムとノエルが20年ぶりに揃って応じた貴重なインタビュー映像と共に送る、奇跡のライブ・ドキュメンタリー。
15年越しの和解に至るまでの、兄弟2人の想いが今、明かされる―

バンドメンバー:リアム・ギャラガー, ノエル・ギャラガー, ポール“ボーンヘッド”アーサーズ, ゲム・アーチャー, アンディ・ベル, ジョーイ・ワロンカー, クリスチャン・マッデン

企画:スティーブン・ナイト
監督:ディラン・サザン, ウィル・ラブレース
プロデューサー:サム・ブリッジャー, ガイ・ヒーリー

制作年: 2026