ゾンビに噛まれたら……若返る!? 老人向けゾンビ・ビジネス開始！ ゾンビあるある満載の『感染家族』が秀逸!!

予想を裏切る面白さ！ 歴代の名作に並ぶゾンビ・コメディが韓国から登場!!

ごめんなさい。観る前までは、こんなに面白いとは思わなかった……！ というのが正直なところな、『ゾンビランド』（2009年）『ショーン・オブ・ザ・デッド』（2004年）などと肩を並べるゾンビ・コメディが、韓国からやってきてくれた！

『感染家族』© 2019 Megabox JoongAng Plus M & Cinezoo, Oscar 10studio, all rights reserved.

『感染家族』の舞台は、ど田舎の寂れた村にポツンと建つ潰れたガソリンスタンド。そこに住む一家は、都会からやってきた車に罠を仕掛けて事故を起こし、修理代をぼったくる、というダーティなマッチポンプ商法で食いつないでいた。すごい設定だ。倫理観の欠落というのは物語を面白い方向にグイグイ引っ張ってくれる。

そんなヤバい一家の暮らす村に、ゾンビ（チョン・ガラム）がやってきた。唐突である。そして、ガソスタ一家のハワイ大好き親父マンドク（パク・イナン）の頭に噛みついた！ 噛まれりゃゾンビだ。誰だって知ってる。もう殺すしかないよな。グッバイ親父……と思ったら、次の日にはどういうわけか親父の傷口は綺麗サッパリもとどおり。しかも、これまで以上に元気いっぱい若返りやがった。

『感染家族』© 2019 Megabox JoongAng Plus M & Cinezoo, Oscar 10studio, all rights reserved.

当然、村の老人たちは親父がいきなり若返ったので不思議でしょうがない。老人にしつこく理由を聞かれた親父は、ハワイ行きのチケットと引き換えにゾンビのことを話してしまう。するともちろん噂はすぐに広まり、村中の老人がわらわらと大集合。これを見たガソスタ一家の次男坊で頭のキレるミンゴル（キム・ナムギル）は商売にしちまおうと、一攫千金のビジネスに乗りすことに。ゾンビに噛まれたジジイたちが元気いっぱい走り回るシーンでは、笑いとともに妙なカタルシスがあった。

ゾンビが繋ぐ家族の絆！ もちろんお約束展開もオマージュも満載!!

それまではどうしようもないゴロツキ集団みたいなものだったのが、1体のゾンビの混入によってしっかりとした家族となり、それぞれの人生がちょっとずつ上向いていく。長男のジュンゴル（チョン・ジェヨン）はガソリンスタンド再建に奔走し、末娘ヘゴル（イ・スギョン）なんてゾンビを“チョンビ”と名付けてペット以上人間以下として可愛がり、徐々に淡い恋心みたいなものまで抱く始末。しかし、なんてったってゾンビがすぐそばにいる。平穏なんてものはすぐに音を立て崩れ去ってしまう。

『感染家族』© 2019 Megabox JoongAng Plus M & Cinezoo, Oscar 10studio, all rights reserved.

後半には、長男ジュンゴルの妻ナムジュ（オム・ジウォン）の出産騒動も、阿鼻叫喚のゾンビ大発生もあり、身の回りのもので武装して戦う展開もしっかりご用意。これまでのゾンビ映画へのオマージュがふんだんに散りばめられ「ゾンビは音と光に反応する」というお約束からの『ランド・オブ・ザ・デッド』（2005年）オマージュなんて、ちょっと感動的ですらある。

『感染家族』© 2019 Megabox JoongAng Plus M & Cinezoo, Oscar 10studio, all rights reserved.

とはいえ、ゾンビ好きにちゃんとお伝えしておきたいことがありまして……本作はグロい描写はほぼ皆無です。ま、「グロ成分は他に任せた！」という潔いスタイルなので、あまり気にならないかも。なにより、たくさんの要素を詰め込みながらもスムーズな物語展開と終始飽きさせない監督・脚本イ・ミンジェの手腕！ 参りました。

文：市川力夫

『感染家族』は2019年8月16日（金）よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかロードショー