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『トップガン』より4年も早かった戦闘機映画『ファイヤーフォックス』なぜヒットしなかった?多大な影響と貢献

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ライター:#BANGER!!! 編集部
『トップガン』より4年も早かった戦闘機映画『ファイヤーフォックス』なぜヒットしなかった?多大な影響と貢献
『ファイヤーフォックス』© 1982 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

イーストウッドの戦闘機ムービー『ファイヤーフォックス』

1982年制作の映画『ファイヤーフォックス』は、あのクリント・イーストウッドが主演・監督・製作を務めたスパイアクション/ハイテクスリラー。クレイグ・トーマスによる1977年の同名小説が原作で、冷戦下の米ソ対立を背景に架空の超音速ハイテク戦闘機をめぐる攻防戦を描く。

まず本作のビジュアルを見て想起するのは、その4年後に公開され大ヒットした『トップガン』だろう。しかし当時50代なかば、監督としても脂が乗りつつあったイーストウッドによる『ファイヤーフォックス』は、興行的には“そこそこ”の成績に留まった。とはいえ本作が『トップガン』大ヒットの下地を作った重要作品であることは間違いない。

『ファイヤーフォックス』© 1982 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

ベテラン戦闘機パイロットが国家間の陰謀に巻き込まれる

『ファイヤーフォックス』の主人公は、ベトナム戦争によるPTSDを抱えるミッチェル・ガント少佐(クリント・イーストウッド)。彼は、パイロットの脳波を通じて攻撃できるというソ連のハイテク戦闘機<MiG-31 ファイヤーフォックス>を奪うためソ連に潜入することになる。

ロシア語を話せるガントは複数の偽装身分を使いながら、科学者らの支援を受けつつ極秘任務を遂行。諜報戦やKGBとの駆け引きを経て、敵の目をかいくぐりながらファイヤーフォックスの操縦席に乗り込み脱出を図るが、事態は予期せぬ展開へ。空と氷上、そして潜水艦との連携の中で、彼は思考で操る戦闘機を駆り、追撃をかわしていく。

『ファイヤーフォックス』© 1982 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

架空のハイテク戦闘機と、国防総省からレンタルしたリアル戦闘機

本作中に登場する戦闘機ファイヤーフォックスは、マッハ6の速度、レーダー不可視性、思考制御兵器など、当時としては超ハイテクな戦闘機として描かれている。そのデザインは実在のMiG-25やSR-71ブラックバードに影響を受けているそうで、映画用に特別に設計されたものだという。

撮影には全長約20メートルの実物大の模型が使用され、特殊効果には『スター・ウォーズ』にも参加したCG技術の先駆者ジョン・ダイクストラによる“リバース・ブルースクリーン技術”を開発・導入。この技術は、背景とモデルを分離するために蛍光塗料と紫外線を使う革新的な手法だった。

『ファイヤーフォックス』© 1982 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

一方、その4年後に登場した『トップガン』は、F-14トムキャットなど実在の戦闘機を使用した空撮を行っており、俳優が実際に搭乗もした(※もちろん操縦はしていない)。しかも、機密漏洩を懸念するアメリカ国防総省を説得し膨大なレンタル費用を支払って使用したという。

後発の『トップガン』に与えた影響とは?『ファイヤーフォックス』の技術的、映画的な貢献

やはり『ファイヤーフォックス』の飛行シーンは今観るとかなりチープで、見た目が猛烈にカッコいいのがせめてもの救い。また、国家間の陰謀がテーマなので基本的に重苦しいストーリーで、操縦シーンは中盤以降までお預け。冒頭から若いパイロットたちがバンバン戦闘機を飛ばす『トップガン』とは根本的に異なる。

そもそも 『ファイヤーフォックス』は冷戦下の心理戦と諜報活動を軸に、架空の超兵器を巡るスリラーとして構築されており、あくまで戦闘機はケイパー的な物語の象徴的存在。それはSFチックなアニメーションのティザー映像にも表れている。

ちなみに公開翌年にATARI社によってアーケードゲーム化されていて、こちらは時代を考えると凄まじいクオリティだったことがうかがえる。実際にはハードの故障が多く製品としては不完全だったようだが……。

そして『トップガン』は、若きパイロットたちの成長と葛藤を描く青春ドラマであり、戦闘機はキャラクターと一体化した“もう一人の主役”。こちらも当初はヘビーな物語が構想されていたそうだが、戦闘機レンタルに奔走したプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーと、まだ映画界に足を踏み入れたばかりのトニー・スコット監督それぞれのビジョン、さらに使用機材など様々な要因が結果的にプラスに作用し、奇跡的な傑作に仕上がった。

『トップガン』©1986 By Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.

両作品とも戦闘機を中心に据えたアクション映画であり、冷戦時代の緊張感を背景にしている点など共通する部分は少なくない。『ファイヤーフォックス』未来的な思考制御技術を描き、視覚効果やテーマ性においてもかなり先進的なSFスパイ・スリラーであり、のちの“戦闘機映画の商業的可能性を示したことトップガン』の成功を後押ししたと言っても過言ではないだろう。

『ファイヤーフォックス』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで202578放送

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© 2022 Paramount Pictures.

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