梶裕貴、声優の新境地! 島﨑信長&内田雄馬が脇を固め、禁断の愛を描いた名作『モーリス』が蘇る!

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ライター:藤津亮太
梶裕貴、声優の新境地! 島﨑信長&内田雄馬が脇を固め、禁断の愛を描いた名作『モーリス』が蘇る!
『モーリス』©1987 Merchant Ivory Productions Ltd. A Merchant Ivory Film in association with Film Four International and Cinecom Pictures

初の全長版吹替を制作・放送! 現代の視点から『モーリス』を読み解く

『モーリス』(1987年)は、E・M・フォースターの同名小説を『眺めのいい部屋』(1986年)の ジェームズ・アイヴォリー監督が映画化した作品だ。日本では1988年に公開された。CS映画専門チャンネル ムービープラス「吹替王国スペシャル」で2019年7月21日(日)に放送される4Kレストア版『モーリス』は、新録の吹替版である。

『モーリス 4K』
価格:DVD¥3,600+税
発売元・販売元:株式会社KADOKAWA

翻訳に新訳があるように、吹替にも新録があるのは、とてもよいことだ。言葉は時代によって変わるし、時代が変われば映画の解釈、描いている事柄への観客の理解度も変わってくる。『モーリス』の場合、1995年に地上波放送された時に吹替版が作られていたが、これは放送用の短縮版(約95分)だった。およそ四半世紀ぶりとなる今回の新録は、初の全長版の吹替でもある。

なお、原作も2018年に新訳が出版されており、現代の視点から『モーリス』を再見・再読するにはちょうどいいタイミングと言えそうだ。

主要人物3名の社会的地位や言動の相違が物語に奥行きを与える

物語は20世紀初頭イギリス、ケンブリッジから始まる。中産階級出身のモーリスはある日、全寮制のキングス・カレッジの同期生の部屋でクライヴと出会い意気投合する。上流階級の生まれのクライヴはギリシャ哲学に心酔し、同性愛を肯定していた。

『モーリス4K』写真:Album/アフロ 左からモーリス、アレックス、クライブ

やがてクライヴはモーリスに愛の告白をし、2人はプラトニックな関係を育むことになる。それはモーリスが学校を離れ、それぞれの道を歩むようになってからも変わらなかった。しかしその後、同級生が同性愛者として逮捕され大きく報道されたことが、モーリスとクライヴの関係に大きな影を落とすことになる。

この物語の重要人物は、モーリス、クライヴ、そして後半に登場しモーリスと愛し合うようになるアレックス(クライヴの使用人)の3人。この3人はそれぞれ中産階級、上流階級、労働者階級と立場が違い、プラトニックなのか実際に愛し合うのか、など行動も対照的。それが本作の奥行きになっている。そして、この3人を吹き替えているのが、現在アニメを中心に人気を集めている梶裕貴(モーリス)、島﨑信長(クライヴ)、内田雄馬(アレックス)だ。

梶裕貴の新境地 モーリスのキャラクターを浮かび上がらせる

モーリス役:梶裕貴

新録の聞きどころは、やはり梶のモーリスだ。しばしば「凡庸」と評されるモーリスは、原音を聞くと抑揚も抑えめで、視線も伏し目がちの時が多い。だからモーリスの言葉は、どこか自分の内側に向かっているようなトーンを帯びている。梶は、『クラシカロイド』(2016年~)のモーツァルトのようなハイトーンで少年っぽいかわいい役から、『進撃の巨人』(2013年~)のエレンのような低めの音域でヒーロー性を感じさせる役まで幅広く演じている。

梶裕貴(写真中央)、島﨑信長(写真右)、内田雄馬(写真左)

そうした役と比べるとモーリスは、トーンが低く抑えられており、感情を開放的に表現することはほぼなく、梶がこれまで演じてきた中では、あまり例のない役なのだ。それだけに新鮮な梶の演技を楽しむことができる。なお、モーリス役の俳優ジェームズ・ウィルビーは童顔で、それも梶の抑えた声からにじむ若干のかわいらしさとマッチしている。吹替のほうが原音よりもモーリスのキャラクター性が浮かび上がった感じにもなっていて、そういった点も吹替のおもしろさといえる。

島﨑信長演じる品のいいクライヴ、内田雄馬演じる野性味溢れるアレックス

梶裕貴(写真中央)、島﨑信長(写真右)、内田雄馬(写真左)

一方、島﨑演じるクライヴ、内田演じるアレックスは、2人がアニメで演じてきたキャラクターとそう遠くないキャラクターだ。もちろん吹替だから、当然アニメの時ほどメリハリのついた演技はしていないが、それでも、理知的で理性的なクライヴの品のよさと、情熱的で野性味のあるアレックスの熱さ、というコントラストは非常に楽しむことができる。

ゼロから自分でキャラクターを構築するアニメと、もとの役者の演技を尊重しながら演じていく吹替は、同じ声の演技でも大きく異なる。アニメを通じて本作に興味を持った人は、3人が演じたアニメのキャラクターと本作の登場人物たちの吹替の演技の“距離”を考えながら観るのも一興だろう。さらには1995年版の吹替(Blu-rayBOXなどに収録)と比較して、演出や演技の違い、あるいは共通点を探してみてもいいかもしれない。

文:藤津亮太

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『モーリス 4K【ムービープラス新録吹替版】』

20世紀初頭イギリス。ケンブリッジ大学でモーリスは同性愛を肯定するクライヴと出会い、恋愛関係をはぐくむ。卒業後も関係は続くかに見えたが、同級生が同性愛者として逮捕され全てを失うのを目の当たりにしてクライヴは激しく動揺し…。
1988年日本公開当時センセーションを巻き起こし、英国美男子ブームの火付け役となった名作。

制作年: 1987
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