「賛否両論が激しすぎ」「むしろ期待値が爆上がり」前代未聞のUMA映画『サスカッチ・サンセット』の衝撃
こんな映画、観たことない!『サスカッチ・サンセット』の衝撃
映画『サスカッチ・サンセット』にはセリフがない。主人公がサスカッチだからだ。いわゆるウホウホ的な鳴き声だけで、もちろん字幕もない。ゆえに人類との交流は描かれず直接的に登場することもない。まさか2025年に、こんな映画が観られるなんて……と面食らっていると、そうした描写の連続にじわじわ没入していることに驚かされ、そしてプリミティブな汚ネタの数々に膝から崩れ落ちそうになる。
『サスカッチ・サンセット』Copyright 2023 Cos Mor IV, LLC. All rights reserved
あまりに衝撃的なので“出オチ”映画なのではと穿ってしまうが、その不安はすぐに払拭される。サスカッチたちの生態、営みをただ見守るしかないのに、なぜかスクリーンに釘付けになってしまう。互いに愛情深く、好奇心旺盛で、大いに笑わせてくれて、なにより自由。大自然の中で精一杯生きるライフスタイル(?)は、羨ましいとすら感じさせる。思わず私たちニンゲンを投映してしまう個性/関係性の描写も秀逸だ。
『サスカッチ・サンセット』Copyright 2023 Cos Mor IV, LLC. All rights reserved
ちなみに辛口で知られる某批評サイトでは賛否の差がすさまじいのだが、むしろ興味をそそられるだろう。多くの批評家は、SF大作や人気シリーズに占領された映画業界でこんなにも奇妙な作品が完成したこと自体を称賛し、その挑戦や大胆さを評価している模様。そこには“新鮮に驚き感動できる、新しいものを見せてくれた”という純粋な喜びも感じられる。
『サスカッチ・サンセット』Copyright 2023 Cos Mor IV, LLC. All rights reserved
気鋭兄弟監督の「サスカッチへの積年の想い」が長編映画で爆発
監督のデヴィッド&ネイサンのゼルナー兄弟は、菊地凛子が主演した『トレジャーハンター クミコ』(2014年)、そして話題沸騰のドラマ『THE CURSE/ザ・カース』を手がけていると聞けば、この奇妙なバイブスにも納得せざるを得ない。過去作から引き続き、The Octopus Projectが本作でも素晴らしい音楽を提供している。
『サスカッチ・サンセット』Copyright 2023 Cos Mor IV, LLC. All rights reserved
なお、いまや業界最注目の気鋭クリエイターとなったゼルナー兄弟監督は10年以上も前にサンダンス映画祭にサスカッチをテーマにした短編を出品していて、この当時から基本的には変わっていないということが、なんだか嬉しい。
キャストに施された特殊メイクはかなり凝ってはいるのだが、同時に80~90年代のチープな着ぐるみ感をしっかり残していて、ドキュメンタリーとして観ることを許してくれない。『大草原の小さな家』とか『北の国から』を彷彿させ……なくもないが、なんだか全身が弛緩するような、サイケなトリップ映画とかヒーリング映像に近いものも感じさせる。
『サスカッチ・サンセット』Copyright 2023 Cos Mor IV, LLC. All rights reserved
これまで経験したことのない、未知の感情の扉を開いてくれる本作。いわゆる“怖いもの見たさ”で鑑賞するのもアリだろう。中盤以降はスリラーのような緊張感が出てくるが、最後の最後には“人類”としての自らを省みることになるというか、なんとも例え難い、ぐぐっと切ない感情に襲われるのは間違いない。この先なかなか出会えないであろう、傑作UMA映画の誕生だ。
『サスカッチ・サンセット』Copyright 2023 Cos Mor IV, LLC. All rights reserved
『サスカッチ・サンセット』は5月23日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
『サスカッチ・サンセット』
北米の霧深い森に生きる4頭のサスカッチ。彼らは寝床をつくり、食料を探し、交尾をするといういつもの営みを繰り返しながら、どこかにいると信じる仲間探しの旅を続けている。そして、絶えず変化する世界に直面しながら、生き残りをかけて必死に戦うことになる。果たして彼らが辿る運命とはー
監督:デヴィッド・ゼルナー&ネイサン・ゼルナー
出演:ジェシー・アイゼンバーグ(『ソーシャル・ネットワーク』)、ライリー・キーオ(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』)
製作:アリ・アスター(『ミッドサマー』『ボーはおそれている』)
音楽:The Octopus Project
| 制作年: | 2025 |
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2025年5月23日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー