笑う子も泣き出す超ド変態!勧誘女子にマウント取りまくり?『異端者の家』が示すホラーの新たなアイデア
宗教マウントおじさんか、凶悪な社会病質者か
3者(2対1)のやり取りは次第に激しさを増し、ついにリードが牙を剥きはじめる。冒頭はまさに“つばぜり合い”な宗教・哲学議論が繰り広げられるが、ヒュー・グラントの可笑しみすら搭載した怪しさ、今にも“爆弾”を落とすのではないかという緊張感、どちらかが“ファイナル・ガール”になるのだろうソフィー・サッチャーとクロエ・イーストの微妙な凸凹感の醸し出す危うさ……そうしたすべてが調和して、ゾワゾワとしたスリルがじんわりと足元から昇ってくる。
シチュエーション的には『ソウ』や『CUBE』のような密室だが、黒幕が早々に姿を表して講釈を垂れまくるバージョンとでも例えたらいいだろうか。基本は会話劇ながら、人畜無害な仮面を被った超ヤバいおっさんに監禁されるという、どんなスリラーやホラーよりも“リアル(有り得そう)”な設定。さらにシスターたちの身体に表れる“緊張のサイン”にクローズアップし、観客もつられてゴクリと息を呑む。
『異端者の家』© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.
若き才能に注目! サッチャー&イーストの儚くも力強い存在感
スリラーとしてはやや地味な序盤の展開をガマンと感じる観客もいるかもしれないが、シスターたちが“ある選択”を迫られてからは、ショッキングなホラー描写がバシバシ投下され、これはちょっとどうしたものかと慌ててしまうほど面白くなっていく。アンチ宗教説教、あるいは変態オヤジの理詰めマウントとして始まりながら、いったい何が目的なのか? これから何が起こるのか? と心臓は常にバクバク。しかし分かりやすいジャンプスケアな描写はなく、恐怖に備えて脳味噌もフル回転せざるをえない。
『異端者の家』© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.
本作を“挑戦的”と捉える人も少なくいないと思うが、じつはアンチ宗教な視点はそれほど感じない。それはヒュー・グラントの怪演、そして彼を喰いかねないほどのソフィー・サッチャーとクロエ・イーストの存在感が観客を釘付けにし、新鮮なアイデア~展開によってジャンル映画として抜群の面白さを提供してくれるから。正直、信仰が求める意味での“救い”は与えられないかもしれないが、それも含めて個々人の“選択”であるのならば、迷わず映画館へ行くべき傑作だ。
『異端者の家』は4月25日(金)より全国公開中
『異端者の家』
シスター・パクストンとシスター・バーンズは、布教のため森に囲まれた一軒家を訪れる。ドアベルを鳴らすと、出てきたのはリードという気さくな男性。妻が在宅中と聞いて安心した2人は家の中で話をすることに。早速説明を始めたところ、天才的な頭脳を持つリードは「どの宗教も真実とは思えない」と持論を展開する。
不穏な空気を感じた2人は密かに帰ろうとするが、玄関の鍵は閉ざされており、助けを呼ぼうにも携帯の電波は繋がらない。教会から呼び戻されたと嘘をつく2人に、帰るには家の奥にある2つの扉のどちらかから出るしかないとリードは言う。信仰心を試す扉の先で、彼女たちに待ち受ける悪夢のような「真相」とは――。
監督・脚本:スコット・ベック、 ブライアン・ウッズ
出演:ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー、クロエ・イースト
制作年: | 2024 |
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2025年4月25日(金)より全国公開中