笑う子も泣き出す超ド変態!勧誘女子にマウント取りまくり?『異端者の家』が示すホラーの新たなアイデア
ロマコメの帝王→遅れてきた名悪役
あのヒュー・グラントが、ついに“悪役として主演”する映画がA24制作の『異端者の家』だ。たったこれだけの情報でも「鑑賞決定!」な映画ファンは少なくないだろう。なにしろグラントはハリウッドのロマコメ界でもっとも成功したイギリス俳優の一人だから、色んな意味で本作のキャスティングが公表されたときの衝撃は大きかった。
『異端者の家』© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.
ご存知の通り、近年のグラントのキャリアは“悪人寄り”になってきている。『パディントン2』(2017年)や『オペレーション・フォーチュン』(2023年)、『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(2023年)など、ひとクセある悪役や犯罪者役は、グラントのいかにも英国的なピリリとウィットな(※周囲のことに興味なさげな)性格にぴったりハマっていた。
そして『異端者の家』でのグラントは、そのキャリアの“正解”にたどり着いたようにすら見える。ロマコメ期に鬱憤があったとは思わないが、彼自身の“不機嫌”とか“神経質”といったイメージが良い意味で最大限発揮されたとも言えるだろう。とにかく本作を観れば、グラントの怪しい存在感に恐怖し、うっとり見惚れてしてしまう。
『異端者の家』© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.
迷える2人のシスターを襲う“恐怖”とは
急な土砂降りの中、郊外の一軒家に布教に訪れた末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)のシスター・パクストンとシスター・バーンズ。出迎えた中年男性はリードと名乗り、ひとまず中に入らないかと誘う。「妻がいる」と言うから戒律的にも問題ないし、物腰は柔らかく興味津々で話を聞いてくれる。しかも、すでにモルモン書を読み込んでいるようだ。これは手応えアリか?
『異端者の家』© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.
――モルモン教といえばコロナ禍以降は少なくなった気がするが、ワイシャツとネクタイにヘルメット姿で自転車に乗っている(なぜかいつも)2人組をよく街で見かけた、あるいは話しかけられたという経験はないだろうか。かれらは布教のため来日したわけだが総じてグイグイ勧誘するようなことはなく、新興宗教に対してなんとなく不信感を抱いていると、そのカラッとした爽やかさに不思議な感覚を覚えたりしたものだ。
本作のパクストンとバーンズも人当たりがよく、ややぎこちないが強引に勧誘するようなことはしない。が、青春まっさかりの年頃ゆえか教義に対してモヤッとしたものを抱えてもいる様子。そんな2人が出会ったミスター・リードは紳士的ではあるものの、言葉の端々に“さぐり”を入れるような攻撃性があり、その鋭さに居心地の悪さを感じはじめる。
『異端者の家』© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.
『異端者の家』
シスター・パクストンとシスター・バーンズは、布教のため森に囲まれた一軒家を訪れる。ドアベルを鳴らすと、出てきたのはリードという気さくな男性。妻が在宅中と聞いて安心した2人は家の中で話をすることに。早速説明を始めたところ、天才的な頭脳を持つリードは「どの宗教も真実とは思えない」と持論を展開する。
不穏な空気を感じた2人は密かに帰ろうとするが、玄関の鍵は閉ざされており、助けを呼ぼうにも携帯の電波は繋がらない。教会から呼び戻されたと嘘をつく2人に、帰るには家の奥にある2つの扉のどちらかから出るしかないとリードは言う。信仰心を試す扉の先で、彼女たちに待ち受ける悪夢のような「真相」とは――。
監督・脚本:スコット・ベック、 ブライアン・ウッズ
出演:ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー、クロエ・イースト
制作年: | 2024 |
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2025年4月25日(金)より全国公開中