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フィリピンの印象が変わる? 青春(&呪)物語
たとえばブリランテ・メンドーサ監督作品では“とにかく怖いフィリピンのリアル”が映し出されるが、そうした先人たちに続く新たな才能、ティミー・ハーン監督による本作はシャーマニックな土着文化と輸入されたストリート文化をミックスしているようにも見える。監督は現在30代後半というから00年代ポップカルチャーを通過していることは間違いないが、自国の歴史やオカルティズムへの興味が勝っている印象だ。
『ウリリは黒魔術の夢をみた』
物語はマイケルが(彼女とイチャつきつつ)バスケの才能を証明する前半を経て、彼が初めてドラッグ(おそらくクリスタルメス?)を吸引したあたりからドラッギーな後半へと突き進んでいく。ちょくちょく差し込んでくる流血描写は、もしモノクロでなかったらバンコクを舞台にした『オンリー・ゴッド』(2013年)ぽさも感じたかもしれない。
『ウリリは黒魔術の夢をみた』
タガログ語と英語が混じり合うセリフ、全編モノクロで、しかし静謐とか重厚というよりも、とにかく怪しさが増強される。親の愛、血縁のしがらみ、人種差別、貧困と犯罪、経済的成功……。「俺は無敵」と自信満々なのに終始ブーたれてヒーヒー言ってばかりのウリリは、最後の最後に“何を”見るのか?
『ウリリは黒魔術の夢をみた』
ぜひ劇場で鑑賞してパンフレットを購入し、フィリピンの歴史・文化~映画事情に精通した識者の解説を読んで俯瞰し、反芻し、補完してほしい。門外漢にとってはフィリピンだけでなく、東南アジア映画全体のイメージが良い意味でガラリと変わるかもしれない作品だ。
『ウリリは黒魔術の夢をみた』は4月5日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
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