シアタールーム併設のホテルでまったり過ごす贅沢 ホテル経営者が語る【映画とホテル】

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ライター:BANGER!!! 編集部
シアタールーム併設のホテルでまったり過ごす贅沢 ホテル経営者が語る【映画とホテル】
『アンダー・ザ・シルバーレイク』© 2017 Under the LL Sea, LLC

 

【映画と●●】として、映画と別のアイテムを掛け合わせた対談、第1回【映画とTシャツ】、第2回【映画と髪型】に続き、今回は【映画とホテル】として、日本全国で独自のコンセプトを貫くホテルを運営する<L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.>代表、龍崎翔子さんに話を聞いた。

龍崎さんは「HOTEL SHE, KYOTO」「HOTEL KUMOI」ほか5つのホテルを経営する敏腕ホテルプロデューサー。北海道上川町層雲峡の「HOTEL KUMOI」にはシアタールームを併設するなど、ユニークな展開はユーザーからの支持も厚い。

若き起業家/クリエイターとしての鋭い視点、そして激レアなシチュエーションで幼少期を過ごした龍崎さんならではのホテル/映画論は必読。ホテル×映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』のコラボのきっかけとなった、“着るアート”をコンセプトにヴィンテージTシャツを企画展示販売する「anytee」代表・9brickさんにも同席してもらった。

「映画を“観に行きたくないわけじゃない”という人たちが圧倒的マジョリティ」

『アンダー・ザ・シルバーレイク』© 2017 Under the LL Sea, LLC

―映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』とホテルのコラボレーションのきっかけは? どんな反応がありましたか?

龍崎:2018年の公開に合わせ、期間限定でコラボレーションしたんです。きっかけは9brickさんからお話をいただいて、私も映画の世界観が好きだったので実施にいたりました。ポップだけどハッピーすぎない、アンニュイな感じが、私たちのホテルにも近しいところがあるし、いい意味の“けだるさ”みたいな。

9brick:配給会社さんに伝用のパネルを用意していただいて、ホテルに飾っていたんですけど、上手くハマったよね、雰囲気が重なりあって。

龍崎:そうですね。で、9brickさんが映画をモチーフにセレクトしたビンテージTシャツをホテルに置いて、お客さまにパジャマとしてお貸ししたんです。結果的に多くの方に利用していただいて、作品のチラシを見て来てくださったお客さまもいました。評判はかなり良くて、(貸し出した)ビンテージTシャツはツイッターとかでも“ちょいバズ”みたいな感じで。

―そのとき用意したTシャツは、どんなテーマでピックアップされたんですか?

9brick:『アンダー・ザ・シルバーレイク』でモチーフにされてるものを全部ピックアップしました。例えばジェームズ・ディーンやマリリン・モンロー、エルヴィス・プレスリーとか昔のセレブリティのTシャツ、あとは本編でニルヴァーナなどグランジ系ロックがかなり使われているので、その世代のミュージシャン系Tシャツを揃えて。

龍崎:(ピックアップしたTシャツに)STUSSYをセレクトしたのは?

9brick:STUSSYは今の20代の女性に現行で流行ってるので、オールドSTUSSYで“朽ちた可愛さ”みたいなものを届けたかった。当時のスケートカルチャーみたいなノリが『アンダー・ザ・シルバーレイク』にあったのが2割、HOTEL SHE,のお客さんを意識したのが8割かな。

龍崎:実際めっちゃ人気で、STUSSYのTシャツを着ていく人が多かった印象はありますね。

―『アンダー・ザ・シルバーレイク』とコラボしてみて、若い皆さんに“映画が魅力的なコンテンツである”ということが伝わったと思いますか?

龍崎:ホテルのプロジェクターでも『アンダー・ザ・シルバーレイク』の映像を流していたんです。空間演出的にもマッチしていましたね。ホテルのスタッフも観て、感想を言い合ったりとか。

9brick:「これなんの映像ですか?」などお客様から質問をいただいて、説明することで、劇場に足を運ぶきっかけを作れたかな、と思います。

龍崎:今は映画の広告も、目にする機会があまりないじゃないですか。ただ、映画を“観に行きたくないわけじゃない”という人たちが圧倒的にマジョリティだとは思うんです。なので、自分の生活に広告が入り込んでくることで、そういう人たちがチャレンジする(映画館に行く)きっかけになったのかなって思いますね。“ひとつの世界観に没入できる”ものって、そんなに多くないと思っていて。それを2時間で手軽に体感できるという観点で見ると“映画”はすごく新しい魅力なんじゃないかなって思います。

龍崎翔子さん

―その後、HOTEL KUMOIにシアタールームを作った理由と感想を教えてください。

龍崎:北海道の層雲峡って典型的な“廃れた温泉街”なんで、HOTEL KUMOIだけが魅力的になっても、お客さまは層雲峡に来てくださらない。まず何をすべきか? と考えた時に、お客さまが夜遊びできる町にすることが大事だなと。雲や霧が多い町なので、“ヴェイパー(水蒸気)”、“ナイトアウト”、“夜遊び”をコンセプトにしました。その“ナイトアウト”を具体化していく中で映画が選択肢の一つとして出てきました。

また、“ヴェイパー”の視点から、HOTEL KUMOIのキラーコンテンツとして、シーシャ(水たばこ)を出しています。シーシャを楽しむシーンを考えた時に、シーシャを吸いながら1~2時間、友達と座ってダベリながら過ごす夜に映画があったらいいな、と。霞みがかった山奥の場所で、その中で非日常の世界を過ごす……みたいな旅行体験ができるので、それでシアタールームを作りました。支配人がもともと映画のプロデューサーになるためにニューヨークに勉強に行っていたところもすごくマッチしました。

多分、(場所が)京都とかだったら成立しないんですよ。お客さまがホテルの中にいる理由が全然ないので。層雲峡みたいに、周りにモノがないところだからこそできるサービスかなって。

9brick:空間とコンテンツを他人と共有することの効果はある?

龍崎:ホテルという空間の中で映画を観ることが、新たな空間体験になっているのかな、って思っています。映画館では喋っちゃいけないとかルールがありますけど、ホテルだったらリビングで観ているような感覚で気兼ねなく喋っていい。

9brick:途中から入ってもいいしね。

龍崎:オープンな空間、しかもフロントのすぐ近くで映画を上映しているのは、人が集まりやすくて、その中で出会いも生まれやすくなるだろうな、っていう狙いがありました。

9brick:映画のセレクトにテーマは?

龍崎:幅広い層で観られて、かつ空間と世界観がマッチしているものを選んでいます。ホテルが舞台の『グランド・ブダペスト・ホテル』(2013年)や『(500)日のサマー』(2009年)とか。

ホテルを経営していると『有頂天ホテル』に共感します

9brick:例えば、ホテルを舞台にした映画『有頂天ホテル』(2005年)では、スタッフが一丸となっていく中で、色んなお客さんのサイドストーリーが出てくるけど、実際、それに近いような感覚は?

龍崎:ホテル側としては時間の流れに沿って一つの大きなストーリーが進行しているけど、その中で客室ごとの個別ストーリーがあるのは面白いです。それは経営している上で実感することが多くて、本当に毎日が笑いあり涙ありのリアリティショーみたいな感じなので……。見た目は優雅にしているけど中はすごい必死。『有頂天ホテル』のそういう“白鳥感”に共感しました。

『ホテル・ルワンダ』(2004年)とか『グランド・ブダペスト・ホテル』は、“社会の大きな出来事をホテルで輪切りにして見る”みたいな感じ。「ホテルにこういう人が来た」「ホテルでこういう出来事があった」というものは、それぞれ社会に紐付いていますよね。

『グランド・ブダペスト・ホテル』には「社会主義化の流れでホテルが国有化される」というセリフがあったり、それこそ軍事拠点になったりとか、細かいエピソードの中で「ホテルに泊まった人が◯◯だった」みたいなシークエンスから、世の中の流れが追えているなぁと思いました。

―ホテルで再現してみたいと思った映画の世界観は?

龍崎:ソフィア・コッポラ監督の『SOMEWHERE』(2010年)は絶対やりたいですね。よく「ジャケ買いできるホテル」と例えることが多いんです。レストランで店構えを見て「雰囲気いい」と思って入ることもあるし、レコードもジャケットを見て買ったり、服も一目ぼれで買うことはある。ホテルもそういう感じで、雰囲気とかロゴ、写真1枚で「ここにしよう」って決めることをもっと促進していきたいと起業当初から思っていて。最近、割と普及してきてうれしいです。

9brick:龍崎さんの経営するホテルを見ていると、90年代のソフィア・コッポラとか、X-girl/キム・ゴードンとかの雰囲気を思い出させるものが多くて。(自分は)今年で41歳で、龍崎さんは22歳だけど、近しいものを感じるんだよね、ぐるっと回って。

龍崎:(ブームとして回る)スパンが早くなってますよね。

ホテルに興味を持ったのは「ズッコケ三人組」がきっかけ

9brickさん

9brick:龍崎さんは小さいころ、ご両親と一緒にアメリカの郊外のロードサイドを転々としてモーテルに泊まっていたんだよね? あれってすごく映画的だなと思った。

龍崎:私が8歳のとき、家族旅行で1か月くらいかけて(アメリカを)横断しました。父が運転して母が地図を読んで、たまにケンカして……景色も変わらないし、10時間ずっと座って毎日ステーキで、みたいな(笑)。夜は「またモーテルか」とすごくガッカリして。特にラスベガスが印象的でしたね。ラスベガスってコンセプトを持ったテーマパーク的なホテル群が有名で、そういうホテルに泊まるものだと思ってたんですけど、泊まったのはメキシコ人家族が経営している全10部屋ぐらいのモーテルで、ギャップがすごすぎて……。部屋にシャンプーもなくて、頼んだら石鹸をガン! って突き出されるみたいな。

9brick:それが一番最初にホテルに興味を持ったきっかけ?

龍崎:興味というか、不満ですね(笑)。興味を持ったのは、50巻くらい読んだ「ズッコケ三人組」にホテル経営者の人が出てきたときに、ふとホテルをやってみようかな、みたいなことを思いはじめて。

9brick:もしかして、きっかけは「ズッコケ三人組」!?

龍崎:ですね、間違いなく(笑)

大林宣彦監督の映画で街おこしを企画中!

龍崎:いま佐賀県唐津市に新しくオープンするホテルの開業支援をしています。そこは1階がミニシアター、2階がシェアオフィスで、3階だけがホテルです。唐津って25年くらい映画館がなかったので、このホテルの事業主である地域の街づくり会社の方がクラウド型の映画イベントを何年も行ってきていて、今回のプロジェクトでやっと本物の映画館が生まれます。2019年11月オープンを目処に進めています。

ただ映画を上映するだけじゃなくて、例えば監督を招いてトークショーをしたり、食事に関する映画だったら鑑賞後に実際に食べられたりとか、めちゃめちゃ面白いと思います。

―ゆくゆくは、ホテルの内装と上映作品のコンセプトを合わせて、みたいなことも考えていますか?

龍崎:そうですね。大林宣彦監督の『花筐/HANAGATAMI』(2017年)という映画があるんですが、唐津を舞台にした作品で。『花筐』をミニシアターのキラーコンテンツとして上映して、鑑賞されたお客さまが“聖地巡り”もできるようにしようと話し合っています。

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