激渋テーマなのに批評サイトで「97%高評価」の理由とは?実在の開拓者をマッツ・ミケルセンが熱演『愛を耕すひと』
開拓者マッツ、わるい貴族に邪魔されまくる
たったひとり手動のドリルで地面を掘り、手強い雑草を根こそぎ刈り、開墾に適した土壌を確認したケーレン。使用人も雇い、やっと生活基盤が整いはじめたところで、悪徳領主のデ・シンケル(シモン・ベンネビヤーグ)が“悪人でござい”とばかりに分かりやすく登場。タランティーノの『ジャンゴ 繋がれざる者』でディカプリオが演じた領主キャンディが優しく見えてくるほどの悪辣ぶりで、観客の憎悪を一手に引き受ける。
『愛を耕すひと』© 2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB
虐げられるタタール人のコミューンと交流し、たびたび盗みをしていたロマ族の少女を家族として受け入れる展開は微笑ましく、いわゆる“わるい貴族”の横暴に辟易している婚約者、忠誠心のない手下といった設定にはマンガ的なケレンみもある。例えば、漫画「ヴィンランド・サガ」とは時代背景こそ違うが実在の開拓者という点で共通しているので、開拓の過酷さや不条理な身分制度などもイメージしやすいだろう。ちなみに時代も時代なので容赦なく血を見せるし、顔を背けたくなるようなシーンもなくはない。
『愛を耕すひと』© 2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB
アマンダ・コリンの“血まみれ”熱演に注目
絵に描いたようなカタブツから次第に滲み出る人情を見事に表現したマッツと並んで素晴らしいのが、ロマンス展開も担う使用人アン・バーバラを演じたアマンダ・コリン。本作のアーセル監督が脚本を務めた『特捜部Q』シリーズや、リドリー・スコットがプロデュースするドラマ『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』で知られつつある彼女だが、本作での鬼気迫る存在感はとくに必見だ。
『愛を耕すひと』© 2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB
「18世紀デンマークの……」と聞くと小難しい歴史ものかと思うかもしれない。だが日本人も世界名作劇場や連続テレビ小説といった下地があるので、主人公が不条理なほどヒドい目に遭うお話はある意味とても受け入れやすかったりする。本作のキービジュアルにもなっているマッツの複雑な表情がどのシーンのものか、そして“愛を耕す”の意味するものが分かったとき、悔しさや悲しさに安堵が混じったような感情に涙を堪えられないだろう。史実ベースながらしっかりエンタメもしているので、安心して劇場へ“マッツ詣で”に行ってほしい。
『愛を耕すひと』は2月14日(金)より全国公開中
『愛を耕すひと』
第62回ベルリン国際映画祭でふたつの銀熊賞に輝いた、18世紀デンマーク王宮を舞台にしたラブストーリー『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)以来となる、ニコライ・アーセル監督と“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンの二度目のタッグが実現。ふたりが再び描くのは、時を同じくしたデンマーク開拓史の裏に隠された、ある愛の物語。
監督:ニコライ・アーセル
脚本:ニコライ・アーセル、アナス・トマス・イェンセン
原作:イダ・ジェッセン「The Captain and Ann Barbara(英題)」
出演:マッツ・ミケルセン、アマンダ・コリン、シモン・ベンネビヤーグ
制作年: | 2023 |
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2025年2月14日(金)より全国公開中