「韓国的ユーモアが世界に通じた」鬼才ポン・ジュノが語る『Parasite(英題)』

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ライター:石津文子
「韓国的ユーモアが世界に通じた」鬼才ポン・ジュノが語る『Parasite(英題)』
第72回目カンヌ映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞したポン・ジュノ監督『Parasite(英題)』は、文句なしの受賞だった。韓国映画界初となるパルム・ドール受賞となったポン・ジュノ監督がカンヌ映画祭で語った言葉を振り返ってみよう。

『Parasite(英題)』ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

「海外の観客には分からないだろう、という僕の考えは間違いと分かり嬉しい」

第72回カンヌ映画祭の授賞式で審査委員長のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは「いま世界は危機的な状況にある、ということを今回参加した巨匠たちは描いている。民主主義が失われつつある世の中で、私たち審査員は実に民主的に、全員一致でこの作品を選びました」と前置きしてその名を呼び、ポン・ジュノは主演のソン・ガンホと抱き合って喜んだ。プレゼンターのカトリーヌ・ドヌーヴからトロフィーを受け取ると一瞬、感極まった表情を見せたが、その後は満面の笑みで「まさかパルム・ドールを獲れると思わなかったので、フランス語のスピーチを用意していません」と英語で挨拶し、韓国語でスピーチを続けた。

「僕はフランス映画からは多大な影響を受けました。特にアンリ=ジョルジュ・クルーゾーとクロード・シャブロルに感謝します。『Parasite(英題)』は特別な冒険でした。すべてのアーティストに感謝します。そして何より素晴らしい俳優たちのおかげで出来た映画です」とソン・ガンホを紹介。

ソン・ガンホは「韓国のすべての俳優たちに感謝を捧げます。韓国には才能を持った俳優が沢山いるのです」と、目をうるませながら語った。

『Parasite(英題)』ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

私もポン・ジュノの受賞には胸が熱くなってしまった。彼の作品のファンだったし、数日前に取材したばかりだった、というのもある。さらに実はCS映画専門チャンネル ムービープラスの授賞式ライブ番組の中で生レポートをしているのだが、番組のMC別所哲也さんからパルム・ドール予想を聞かれ、「ポン・ジュノ!」と叫んでしまったので、獲ってくれてホッとしたというのもあったけれど。カンヌの場合、映画祭側から授賞式当日「式に出席してください」と連絡が来ると、何かしら受賞することを意味する。ただ、その時点では何を受賞したかは教えてもらえないので、ポン・ジュノも、ソン・ガンホも、なかなか名前を呼ばれないのでドキドキしたことだろう。

授賞式後の記者会見で、思い切って手を挙げたら一番最初に指名されたので、「少し前に“あまりに韓国的な映画なので、海外の人には細部がわからないかもしれない”というあなたの発言を読みましたが、ここまで受け入れられてどう思いますか?」と質問をしてみた。これに対して「韓国でカンヌ出発前の会見でそう言ったんです。韓国ならではの独特なユーモアを使って、この映画は作りました。だから、おそらく海外の観客にはわからない部分が多いだろうと僕は思っていたんです。でも、その考えは間違いだったとわかって、とても嬉しい。この映画が受け入れられたのは、家族の物語だったからではないかと思います」とポン・ジュノは答えてくれた。

また今年で100周年を迎えた韓国映画界にとって、史上初のパルム・ドールとなったが、それについては受賞会見で「韓国には僕以外にも、受賞に値するような素晴らしい監督がたくさんいます。これをきっかけに韓国映画が注目されれば嬉しいし、そうした機会を作っていきたい」と語ったポン・ジュノ。

2004年に、パク・チャヌクの『オールド・ボーイ』がカンヌで上映されたときも批評家、観客から絶賛されパルム・ドールを期待されたが、次席のグランプリで涙を呑んだことがあった。このことがポン・ジュノの脳裏をよぎったのかもしれない。当時、審査委員長だったクエンティン・タランティーノは「自分にとってのパルム・ドールは『オールド・ボーイ』だった」、と語ったほどだった。

会見の最初では、パルム・ドールを拭いてみせるなど、茶目っ気があるのがポン・ジュノの魅力。映画にもユーモアが溢れていて、失業中の一家が、IT社長の家に徐々に寄生していくというのが『Parasite(英題)』の導入だが、その先に思いもかけぬ笑いと衝撃が待っている。『Parasite(英題)』は、エンターテインメントと格差社会への批判を見事に両立させ、脚本と演出、そして俳優たちの見事な演技でフルコースを食べたような満足感のある映画だ。ポン・ジュノに、そしてソン・ガンホ、イ・ソンギュンら俳優チームに、心からおめでとうと言いたい。

文:石津文子

【BANGER!!!×MoviePlus】第72回カンヌ映画祭特集

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