VRゴーグルで映画を観るも近い “浮遊する”革新的なムービーをカンヌで初披露

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ライター:佐藤久理子
VRゴーグルで映画を観るも近い “浮遊する”革新的なムービーをカンヌで初披露
ローリー・アンダーソン(中央)とシン=チャン・ユアン(左)
2019年のカンヌ映画祭で審査員長を務めた、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが2年前にカンヌで披露したVR展は大きな話題となるほど、映画界もVRを使った作品に興味津々。先日、閉幕した第72カンヌ映画祭<監督週間部門>のVR展示が現地で話題を呼んでいたのでご紹介します。

“飛行”をテーマにした三作の短編を発表

2019年のカンヌ映画祭<監督週間部門>のVR展示が話題だった。今回もっとも面白かったのは、ニューヨーク在住のアーティスト、ローリー・アンダーソンとシン=チャン・ユアンが共同で手がけた監督週間部門のVR展、「Go Where You Look! Falling Off Snow Mountain」だ。飛行をテーマにした三作の短編(『Chalkroom』『Aloft』『To the Moon』)で、三作まとめて紹介されるのはカンヌ映画祭が初だという。

ローリー・アンダーソンといえば2013年に逝去した夫で、ミュージシャンのルー・リードのパートナーとして知られ、自身も現代音楽のミュージシャンにしてパフォーマーとしても活躍を続けている。そんな彼女が映像作家のユアンとともに作り上げた作品は、まだまだ技術的な面ばかりがクローズアップされがちなVRに、詩的でアーティスティックなクリエーションの広がりを加味した、革新的なものとなった。

大空や宇宙を自由に飛行体験!

『Chalkroom』は文字通り壁にチョークでさまざまな文字が書かれたいくつもの小部屋の旅だ。宇宙に浮遊するようなブロックが集まった建物のなかに、それぞれ「飛行」「音楽」「ダンス」「犬」などといったテーマの部屋が設けられ、レバーの操作によって自由に建物のなかを浮遊しながら自分で行きたい部屋を選んで探訪する。たとえば「ダンス」の部屋では、人形たちがぐるぐるとダンスで回っているなかを自由な角度から眺められる、ユーモラスで楽しい雰囲気。自分で好きな楽器を演奏できる「音楽」の部屋や、アンダーソンの朗読する詩が流れる、よりパーソナルな趣を感じさせる「犬」の部屋など、その内容の豊富さに驚く。

『Aloft』では、乗っている飛行機がばらばらに崩壊し(いささか怖い)、空に放り出された後、まるで鳥になったように自由な飛行を体験できる。

『To the Moon』は、宇宙飛行士になって月に向かうという趣旨。もっとも、アンダーソンのイメージする月は、まるで「千一夜物語」のようにエキゾティックで幻想的だ。

カンヌ映画祭期間中に一般に開放された本展のオープニングでスピーチをしたアンダーソンは、「わたしは子供の時から空を飛ぶことに憧れていました。VRは、まずはゴーグルが必要で、一度に多くの人々が鑑賞できなかったり、まだまだ時間的、技術的な制約が多いですが、同時に、飛ぶ感覚を視覚的、肉体的に味わえる唯一の分野だと思います。今回の作品では、わたしの飛行への憧れをもとにその刺激的な旅を、音楽、文学、記憶などのテーマを通して味わってもらえたらと思いました」と語った。

日本で「Go Where You Look! Falling Off Snow Mountain」のVRが展示される機会があれば、是非体験してみて下さい。

写真・文:佐藤久理子

【BANGER!!!×MoviePlus】第72回カンヌ映画祭特集

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