「人間の美しい部分も醜い部分も表現する」 禁断の愛の名作『モーリス』に新たな声を吹き込んだ、梶裕貴&島﨑信長&内田雄馬が語る

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ライター:BANGER!!! 編集部
「人間の美しい部分も醜い部分も表現する」 禁断の愛の名作『モーリス』に新たな声を吹き込んだ、梶裕貴&島﨑信長&内田雄馬が語る
梶裕貴(写真中央)、島﨑信長(写真右)、内田雄馬(写真左)

 

20世紀初頭の青年たちの愛と苦悩を描く名作『モーリス』。まっすぐ喜怒哀楽を表現するモーリス(梶裕貴)、立場を考えるクライヴ(島﨑信長)、野性的に惑わせるアレック(内田雄馬)。現代の若手声優たちはどのように受け止め、演じたのか。

物語の時代感や、作品の空気感を大事にしながら声に乗せていく

──アニメのキャラクターを演じることが多いみなさんですが、“吹き替えならでは”の視点で気をつけたところはありますか?

:物語やキャラクターが違えば、お芝居に臨む気持ちも当然違ってくるわけですが・・・今作は20世紀初頭という時代の雰囲気だったり、それぞれが属している階級だったりが大きなポイントとして存在すると思うので、ある程度の品といいますか、喋り方ひとつとっても、「あまり投げっぱなしにしないように」というような意識はしましたね。
一方で、もっと上の階級の人と比較すると、モーリスはむしろ一般的な青年でもあると思うので、そのへんのバランスをとるのが『モーリス』では大事なんじゃないかと思いました。

島﨑:僕は普段からあまり「吹き替えだから」とか「アニメだから」とかって大きく何か意識をするようなことはないんですが、吹き替えとアニメの一番大きな違いって、“もともとの演技があるかどうか”だと思っているんです。
アニメーションの場合、声の演技に関して……「ゼロから」ということではありませんが、ある程度根っこの部分から作るようなイメージなんです。でも、吹き替えの場合は役者さんの演技がすでにあるので、そこをリスペクトしつつ、「どういったアプローチで、役者さんの演技に肉づけしていこうか」っていうことは考えますよね。
とはいえ、「今回は特別にこうした」ということはなく、いい意味でいつも通りにリラックスしつつ、集中もして……物語と俳優さんの演技が素晴らしいので、そこをリスペクトしながらクライヴを演じさせていただきました。

内田:アレックは自分の気持ちをまっすぐ伝えるキャラクターなので、そういう意味では演じる際に悩むことはそれほどなかったんですが……やっぱり時代感とか空気感は意識しましたね。
今回の物語は、僕らからすると違う時代の違う国で起こっていることなので……その雰囲気や空気感を『モーリス』のオリジナル映像で感じつつ、自分のお芝居にしっかり乗せられるといいなあと意識しながら演じさせていただきました。

 

──それぞれ演じた役どころについて、とくに意識された点は?

:『モーリス』というタイトルからもわかるように、モーリスの視点でストーリーが進んでいくということもあって、彼の感情の機微がとても丁寧に描かれているなと感じました。喜怒哀楽が本当に豊かに描かれていて・・・なかでもクライヴやアレックとの愛を貫くうえでの怒りや悲しみといった感情が強く出ているような気がするんですね。
もちろん、楽しいシーンや幸せなシーンも演じていてとても微笑ましいものがありましたが、やっぱり印象に残っているのは、モーリスが激昂したり、涙したりするシーンで……モーリス役のジェームズ・ウィルビーさんのエネルギーがすごく伝わってきたので、「このエネルギーを吹替版という形で、視聴者の方にしっかりお届けできるように」というのを、とにかく意識しました。

島﨑:クライヴは心のなかが見えにくいキャラクターなんですね。でも、『モーリス』は人間の機微や細かいやり取りまでをもしっかりと描いているので……僕らも役者として人間の心情を日々研究しますが、そういった視点から見ても「あ、こういうとき、人間ってこうするよね」とかって、すごく感じる部分があるんです。
だからこそ、クライヴは心情がわかりやすくなりすぎないように意識したかもしれません。観ている人が「あれ? ちょっとなんか、いまのは……?」って感じるくらいの、押し付けがましくない程度に彼らの機微を伝えられたらいいなあと。とくにクライヴは“立場のある人”でもあったので、取り繕った表面からわずかにこぼれ落ちるものをさりげなく表現したいと思いました。

内田:アレックは自分の気持ちをまっすぐ表現する人だったので、「ストレートに彼の気持ちを捉えていけばいいんじゃないか」と思いました。ただ、『モーリス』はとてもキレイな俳優さん方が出演されている耽美な世界観だったので、一見とても美しいものに見えるんですが……そもそも「美しさとは何ぞや?」みたいなことを考えさせられるような作品でもありましたね。
というのも、貴族の出ではないアレックを演じながら「美しさとは、どこに宿るものなんだろう?」と考えていて。この作品自体に、そういったテーマもあるような気がしたので、「アレックのまっすぐな心が、モーリスにとっての美しいものだったり、眩いものであったらいいのかなあ?」と考えながら収録させていただきました。

『モーリス 4K』
価格:DVD¥3,600+税
発売元・販売元:株式会社KADOKAWA

──それぞれ演じたキャラクターについて、魅力に感じる部分を教えてください。

:モーリスは本当に青年らしく人間らしい人で……その美しい部分も醜い部分も見せてくれるんですね。そんな彼を見ていると、誰もが自分を見ているような、気付かされるようなところがあるんじゃないかと感じました。だからこそ、彼に感情移入してドラマを楽しむことができると思いますし、本当に演じ甲斐のある役どころだなと思いました。

島﨑:僕もまったく同じことをクライヴにも思っていて。それがこの作品のすごいところだなって思うんです。3人がそれぞれ人間らしく、いい意味で“人間臭く”描かれていて、だからこそ共感できる部分があるんですよね。クライヴにはいい印象を抱かない方が多いかもしれませんが……。

:もしかすると、そうかもしれないね。

島﨑:「クライヴ、ちょっと酷いな」って思うこともいっぱいあるんですけど(笑)。

:でも「わからないでもない」っていうこともあるんだよね(笑)。

島﨑:そうなんです! そこが彼の魅力だと思うんです。個じゃなくて、家や立場といった、自分の背負っているものを考えることも必要だよねって。一方で、モーリスやアレックみたいに個を貫ける人も素敵だよね、みたいな。
どの角度から見ても面白いので、「自分は誰に共感するかな?」とか「自分は誰のどういったところが刺さるかな?」って考えながら観ていただいて……年代別で聞いてみてほしいですね。

内田:ははは!

島﨑:「30代は誰に共感するのか?」とか(笑)。

:アンケートをとってほしい?(笑)

島﨑:そうそう、「社長はクライヴに共感する人が多いんだ!」とか(笑)。そういうデータがあったら面白そうですよね。

内田:アレックは、若さゆえのまっすぐ進む感じが僕はいいなと思っています。相手を好きになっていって、手紙を書いたり、遠くまで会いに行ったりっていうひたむきな感じが、自分の小さい頃に重なるというか……「あの子好きだなあ」っていう気持ちが抑えられない感じといいますか(笑)。
そういった、誰しもが覚えのある気持ちを持った人だったので、自分が演じているのとは別に「アレック頑張れ!」って思いながら(笑)、彼を見ていたような気がします。アレックみたいにまっすぐ何かを選択できるというのは、かっこいいですよね。

<前編:梶裕貴&島﨑信長&内田雄馬が名作『モーリス』を新録吹替え 魅惑の2人にモーリス役の梶が惑わされる

取材・文:とみたまい

『モーリス 4K【ムービープラス新録吹替版】』

20世紀初頭イギリス。ケンブリッジ大学でモーリスは同性愛を肯定するクライヴと出会い、恋愛関係をはぐくむ。卒業後も関係は続くかに見えたが、同級生が同性愛者として逮捕され全てを失うのを目の当たりにしてクライヴは激しく動揺し…。
1988年日本公開当時センセーションを巻き起こし、英国美男子ブームの火付け役となった名作。

制作年: 1987
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