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『ゴジラ-1.0』公開記念! 平成ゴジラに“悪役”は存在しない?『ゴジラVSスペースゴジラ』『ゴジラVSデストロイア』イッキ観再考察

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ライター:#青井邦夫
『ゴジラ-1.0』公開記念! 平成ゴジラに“悪役”は存在しない?『ゴジラVSスペースゴジラ』『ゴジラVSデストロイア』イッキ観再考察
『ゴジラVSスペースゴジラ』©1994 TOHO STUDIOS CO., LTD.
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平成ゴジラに“悪役”は存在しない? VSシリーズ最終作『ゴジラVSデストロイア』

VSシリーズ最終作の『ゴジラVSデストロイア』は1995年の12月に公開された。この年の1月には阪神淡路大震災が起き、さらに3月にはオウム真理教による地下鉄サリン事件が勃発という大変な年だった。そして3月に公開された金子修介監督の『ガメラ 大怪獣空中決戦』は多くの怪獣映画ファンに絶賛され、10月には『新世紀エヴァンゲリオン』の放送が始まっている。

『ゴジラVSデストロイア』は最初からVSシリーズの最終作と決まっており、宣伝のキャッチフレーズは「ゴジラ死す」だった。登場人物には一作目の山根博士の娘である恵美子が含まれており、当時と同じ河内桃子が演ずることで一作目とのつながりも強調され、ひとつの輪が閉じることが実感された。

『ゴジラVSデストロイア』©1995 TOHO STUDIOS CO., LTD.

VSシリーズでは常に人間はゴジラを倒そうと様々な手を考えてきたが、観客はゴジラが倒れないことを望んでいたのかもしれない。VSシリーズの発端となった1984年の『ゴジラ』は70年代の人間の味方となったゴジラではなく、原点に回帰した怖いゴジラを復活させるという企画だった。しかし、ラストシーンでゴジラが三原山の火口に落ちていくとき、小林桂樹演ずる首相はうっすら涙を浮かべている。それは、現代に出現した故に人間から攻撃されるゴジラを哀れんでいるようにも見えた。

ゴジラ ('84)

©1984 TOHO CO.,LTD.

そして『ゴジラVSビオランテ』以降、人間は様々な手段でゴジラに立ち向かうが、せいぜい日本の国土から追い払うくらいしかできない。『ゴジラVSキングギドラ』では主人公たちは真剣にゴジラを倒すことを模索するが、『ゴジラVSモスラ』ではモスラとバトラの戦いがメインで、ゴジラは脇役的な座に回ってしまう。さらに『ゴジラVSメカゴジラ』ではベビーゴジラが登場したこともあり、主人公側もメカゴジラでゴジラを倒すことにいささかためらいがあるように見受けられる。続く『ゴジラVSスペースゴジラ』では明らかに悪役はスペースゴジラだ。

ゴジラVSメカゴジラ

©1993 TOHO CO.,LTD.

では、ゴジラ以外の怪獣は恐ろしい悪役なのだろうか? ビオランテは白神博士の妄執により生み出された哀れな生命体だ。キングギドラも未来人が身勝手に作り出した怪獣であり、中盤で一度倒されてしまう。バトラも地球のために人類を滅ぼそうとするわけで、「悪」とは言い切れない。ラドンもスペースゴジラも厳密には善悪はなく、現代の地球に身の置き場がないというだけだろう。つまりVSシリーズには、かつてのガイガンやメカゴジラのような単純明快な悪役は存在しないのだ。

『ゴジラVSスペースゴジラ』©1994 TOHO STUDIOS CO., LTD.

世界情勢における原子力とゴジラの相関性

本当にゴジラを倒すことは望まれていないのに、ゴジラは死んでしまう。それはゴジラ自身が身体の暴走を止められなくなり、メルトダウンしてしまうということだった。ゴジラが一度メルトダウンを起こすと今まで以上に人類に大きな被害を及ぼすことが想定されたため、本作で皮肉なことに人類はなんとかゴジラの暴走を食い止めようとする。

『ゴジラVSデストロイア』©1995 TOHO STUDIOS CO., LTD.

対戦相手としては1954年の最初の『ゴジラ』でゴジラを倒したオキシジェン・デストロイヤーの影響で変異した先カンブリア紀の甲殻類であるデストロイアが登場するが、正直言ってデストロイアとゴジラの対戦は本作のハイライトではない。そのためかデストロイアの最後に関しては曖昧な描き方となっている。これはやはりゴジラのメルトダウンが本作最大のテーマであったからだろう。

『ゴジラVSデストロイア』©1995 TOHO STUDIOS CO., LTD.

1954年の『ゴジラ』以降、ゴジラは“核兵器のメタファー”だと言われてきた。当時は膨大な核エネルギーの用途は原子爆弾くらいしかなかった。しかし同じ頃、アメリカでは原子力の平和利用が提案され実用原子炉の開発が始まった。そして1960年代なかば、日本でも最初の原子炉が稼働する。面白いことにそのころからゴジラは人類の味方となっていく。

原発事故から生まれた『シン・ゴジラ』、そして『ゴジラ-1.0』へ

1984年の『ゴジラ』から始まる平成のVSシリーズでは、ゴジラにカドミウム弾を打ち込んで活動を停止させたり抗核バクテリアで活動を抑えようとした。また、サイボーグ怪獣やロボットといったテクノロジーでゴジラを抹殺できないとしても、なんとか抑え込もうとした。しかし最終的にゴジラはコントロールを失いメルトダウンを起こしてしまう。このシリーズでは、ゴジラは核兵器というよりは人類の原子力利用の困難さの象徴と捉えることもできそうだ。

『ゴジラVSデストロイア』©1995 TOHO STUDIOS CO., LTD.

ゴジラのメルトダウンによる災厄は結局もう一頭のゴジラであるジュニアが放射線をすべて吸収してしまうことで事なきを得、ゴジラの物語は次のシリーズへと引き継がれていった。

しかし皮肉なことに2011年の3月、我々は実際に原子力エネルギーのコントロールがいかに難しいかを思い知らされることとなった。そして、その体験から2017年に『シン・ゴジラ』が誕生した。

シン・ゴジラ

©2016 TOHO CO.,LTD.

さらに今年、その『シン・ゴジラ』と全く異なる新たなゴジラ映画『ゴジラ-1.0』が公開される。この映画を楽しむためには事前に多くを知らない方が良いのだが、一つ言えるのは今度の物語は『ゴジラVSスペースゴジラ』のように最初から最後まで人間とゴジラの直接の戦いを今までにないようなアイデアで描ききった映画だと言うことだ。大いに期待して良いと思う。

 

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