• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • なぜロバート・デ・ニーロは“コメディ映画にも出る”のか? オスカー2度受賞の名優が「マフィアなセルフパロディもOK」なワケ

なぜロバート・デ・ニーロは“コメディ映画にも出る”のか? オスカー2度受賞の名優が「マフィアなセルフパロディもOK」なワケ

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#谷川建司
なぜロバート・デ・ニーロは“コメディ映画にも出る”のか? オスカー2度受賞の名優が「マフィアなセルフパロディもOK」なワケ
『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』©2020 MARRO WWG LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
1 2 3

英国の名優たちの哲学「名優だからこそ、どんな映画にも出る」

こうした、名優の誉れ高い俳優がコメディ映画やアクション映画など、一般に重厚なドラマ作品やシェイクスピア物より偏差値が低いとされる映画に平気で出演するのは、実は英国においては当たり前だった気がする。サー・アレック・ギネスは『スター・ウォーズ』シリーズ(1977~1983年)でオビ=ワン・ケノービを演じたし、サー・ジョン・ギールグッドは執事役を演じたコメディ『ミスター・アーサー』(1981年)でアカデミー助演男優賞を受賞し、その続編(1988年)では幽霊となって再び登場している。

アカデミー賞ノミネート10回(うち1948年の『ハムレット』で主演男優賞受賞)の記録を持つローレンス・オリヴィエ(一代貴族の男爵)も、『マラソンマン』(1976年)や『ワイルド・ギースⅡ』(1985年)のナチスの悪役や、ホラー映画『ドラキュラ』(1979年)のヴァン・ヘルシング教授役なども演じている。

つまり、名優だからこそ高尚な映画を選んで出演するというのでなく、俳優という職業である者は、自分が望まれて出演する以上、それがどんなレベルの映画であろうとも与えられた役柄に対して最大限の努力をして演じ切ることこそが務めなのだ、という哲学というか、どんな役柄であってもきちんとこなせる者こそが名優だという考え方だ。

『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』©2020 MARRO WWG LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

コメディでも最善を尽くす!『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』

さて、話をデ・ニーロに戻そう。僕はデ・ニーロには30年近く前に一度インタビューしたことがあるだけだが、その時の印象は、演じることが好きでたまらない根っからの俳優、というものだった。ちなみに、大スターが持つオーラのようなものは彼には皆無で、こちらは一介の映画ジャーナリストに過ぎないものの、同じ映画という領域で仕事をする者同士対等で行こう、とばかりに「一緒にビール飲もうよ」と誘われてお付き合いした。

おそらく、彼にとっては英国の名優たちと同じく、そう呼ばれるからには高尚な映画だけを選んで出演するべきだというような考えは一切なく、くだらないと言われるコメディ映画だって巨匠の大作映画と同じように最善を尽くしたいのだろう。

『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』©2020 MARRO WWG LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』は、妻に先立たれて娘(ユマ・サーマン)一家に引き取られた老人(デ・ニーロ)が、自分の部屋を祖父に取られて屋根裏部屋に移らされた孫の少年から、部屋を取り戻すべく宣戦布告され、互いに相手を困らせようと度を越したいたずらを繰り広げる……というもの。

ウォーケンは、そのデ・ニーロとともに孫をやりこめるべく知恵を出す悪友の役で笑わせる。また、デ・ニーロが老いらくの恋に陥るスーパーのレジ係の年配女性役をジェーン・シーモアが演じているのも往年のファンには嬉しい限り。

『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』©2020 MARRO WWG LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

80歳となった名優デ・ニーロが今後の10年間で、どんな映画でどんな役を演じるのか、どんな新しいチャレンジをするのか楽しみな限りだ。

文:谷川建司

『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年10月放送

1 2 3
Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook