『明日に向かって撃て!』と『スティング』でオスカーを席巻
『明日に向かって撃て!』キッド役で一躍トップ俳優へ
『明日に向かって撃て!』は当初、ポール・ニューマンとスティーヴ・マックィーンのダブル主演作として制作される予定だったが、マックィーンが都合で出演ができなくなってしまい、ニューマンの妻の推薦で当時まだ無名だったレッドフォードがサンダンス・キッド役に起用されることに。
ジョージ・ロイ・ヒルが監督したアメリカン・ニューシネマの代表作と称される本作は、公開と同時に大ヒットを記録。アカデミー賞7部門にノミネートされ、4部門を受賞するなど高い評価を受ける。
本作への主演によってレッドフォードの名は世界に広がり、一躍トップ俳優としての地位を確立。同年、ネイティブアメリカンの青年と恋人の逃避行を追う保安官を演じた『夕陽に向かって走れ』(1969年)にも主演。『明日に向かって撃て!』『白銀のレーサー』を含む3作品の演技を評価されて、無名の俳優がイギリスのアカデミー賞の主演男優賞を受賞する快挙を成し遂げたのだった。
『スティング』でアカデミー賞主演男優賞受賞
ニューマン&ヒル監督との『明日に向かって撃て!』トリオが再結成して話題となった『スティング』(1973年)では、師匠の仇を狙う若き詐欺師を好演。軽妙洒脱な本作はインフレ調整後の世界興収でトップ20に入るほどのメガヒットを記録しただけでなく、レッドフォード自身の主演男優賞を含むアカデミー賞10部門にノミネートされ、作品賞、ヒル監督の監督賞を含め7部門を受賞した。
『追憶』シドニー・ポラック監督と初タッグで大ヒット
また同年、ヒル監督と並んでレッドフォードの代表作を送り出すことになるシドニー・ポラック監督と初タッグを結成。バーブラ・ストライサンドとダブル主演を務めた『追憶』(1973年)は、愛し合いながらも政治運動にのめりこむ妻と仕事で世間に認められることをモチベーションにするノンポリWASPの、20年の愛を描く作品。
ストライサンドが歌う主題歌を含むサウンドトラックも大ヒットした本作は、アカデミー賞にもノミネート。レッドフォード主演2作が1973年のアカデミー賞を大いに盛り上げたのだった。
演技の幅を広げた『華麗なるヒコーキ野郎』
その後、ヒル監督と3度目のタッグとなる『華麗なるヒコーキ野郎』(1975年)に出演。初めて本格的に航空機が実戦に投入された第一次大戦後のパイロットたちの友情と空への憧憬を描く本作は、レッドフォードの演技の幅を広げた作品と言っても良いだろう。
レッドフォード出世作4作をイッキ観
さらにポラック監督の大傑作『コンドル』(1975年)、ウォーターゲート事件を基にした『大統領の陰謀』(1976年)、戦争大作『遠すぎた橋』(1977年)などの大作・話題作に次々と主演。1980年には初監督作『普通の人々』で念願のアカデミー賞監督賞を受賞するという快挙を成し遂げている。
その後も監督・俳優として精力的に活動しつつ、サンダンス映画祭を主宰するなど映画界のために活動していたレッドフォードだが、2018年に俳優引退を表明。惜しまれつつも偉大なる俳優レッドフォードは、その役者人生の幕を下ろしたのであった。
CS映画専門チャンネル ムービープラスでは9月、そんなレッドフォードの出世作4作品を「黄金のベスト・ムービー」として一挙放送。『夕陽に向かって走れ』『スティング』『追憶』『華麗なるヒコーキ野郎』を一挙見できる、この大チャンス。俳優レッドフォード初期の魅力を存分に堪能して頂きたい。
文:高橋ターヤン
『スティング』『追憶』『夕陽に向かって走れ』『華麗なるヒコーキ野郎』はCS映画専門チャンネル「黄金のベスト・ムービー」で2023年9月放送