山下智久の“強さ”を紐解く！ Huluオリジナル『THE HEAD』『神の雫』ほか国際プロジェクトに続々出演「キャリアの原点に戻ったよう」

海外進出と国内活動の狭間で生じるジレンマ

その後も山下は、2020年にトロントで『マン・フロム・トロント』の撮影を、2021年8月からフランスで『神の雫／Drops of God』の撮影に入り、イタリアやタイに移動しつつ、4カ月の長期海外ロケを行っている。

その間、2021年後半からは日本でNetflix『今際の国のアリス』Season2の撮影も始まり、新曲のリリースやコンサートなど、過酷なスケジュールとなっていたと思われる。しかし、彼自身は過密スケジュールを送っているにもかかわらず、しばらく日本のテレビメディアに登場せずにいると、「彼の身に何が起きたのか？」と騒がれることになる。海外作品に出るようになった人気俳優のほとんどが経験するジレンマだ。

Huluオリジナル『THE HEAD』Season１ ©Hulu Japan

山下のメンタルの強靭さがわかるのは、こういうときだ。彼はまったく動じていない。自身が発信するSNSで近況を伝え、平然と日々を送っている、ように見える。いや、たぶん釈然としない何かを抱えることはあるだろう。でも、それについての感情をほとんど表に出さない。持て余した感情を抑え込むことを美徳とは思わないが、泰然と生きているようにセルフプロデュースしてきた、かつてのスターのようにも見える。

より良くするにはどうしたらいいか。議論を重ねながら、楽しく撮影しております。😊#映画#撮影 pic.twitter.com/mKghrhsIOi

— 山下智久 TOMOHISA YAMASHITA (@Tomohisanine) February 9, 2023

子どもの頃から芸能界に身を置いてきたからこそ、むしろ「自分を解放できるのはコンサートのステージ上だったり、演技をしているとき」なのだという山下は、解放できる場――コンサートや演技――の構築のためならストイックになることを厭わないのかもしれない。または「自分と向き合って、役と向き合って、どんどん内に入っていく内面的な作業」という演技を重ねるうちに、心と体が鍛えられ、余分な感情を放出する方法を見つけたのかも。

フランスの雑誌の表紙。
嬉しくて、共有させてもらいました。😆

雨だけど頑張ろ pic.twitter.com/pmIkOIEffp

— 山下智久 TOMOHISA YAMASHITA (@Tomohisanine) March 26, 2023

まるでバウムクーヘンのように何層にも重ねられた役作り

ドラマ『野ブタ。をプロデュース』（日本テレビ系）では当初、優等生だった彰というキャラクターを、自らの判断でチャラい高校生に変えたという。そうなった理由は、まだ19歳だった山下が「反抗期だったから」とされているが、それだけではないだろう。大人との駆け引きの術を知らない中で、一番有効に希望を叶える方法を一か八か試した結果、ここにたどり着いたのだろう。下手をすると降ろされることもあるというのに潔く。

Huluオリジナル『THE HEAD』Season１ ©Hulu Japan

山下智久の演技で印象的な人物像は、表情を崩さないクールな人間。映画では、まだそのイメージを大きく裏切る作品はないように思う。だが、それも年齢とともに変化していくのだろう。いまの山下は、表面に見えている以外の要素をバウムクーヘンのように何層にも重ねて一つの役を作ろうとしているように思う。

Huluオリジナル『THE HEAD』Season１ ©Hulu Japan

『近キョリ恋愛』（2014年）で山下が演じた英語教師の櫻井ハルカが「人の気持ちなんていつも一つじゃねえよな。楽しいと思ってもどこか退屈していたり、めんどくせえと思ってもどこか楽しかったり複雑じゃん」と言うように。『THE HEAD』のアキには少なくとも、その片りんが感じられた。

文：関口裕子

Huluオリジナル『THE HEAD』Season１・Season２はHuluにて全話独占配信中（各シーズン 全6話）

Presented by Hulu Japan