視線の俳優・横浜流星が形成する“流星群”の輝き:『着飾る恋には理由があって』『君の瞳が問いかけている』ほか主演作から紐解く

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ライター:加賀谷 健
視線の俳優・横浜流星が形成する“流星群”の輝き:『着飾る恋には理由があって』『君の瞳が問いかけている』ほか主演作から紐解く
『着飾る恋には理由があって』©TBSスパークル/TBS

彗星の如く現れた彼は、またたく間にスターダムを駆け上がった。出演作のひとつひとつが流れ星のように映画館のスクリーンやテレビ画面を駆け巡り、それがひとつにまとまり大きな“流星群”を形成する。彼の名は、横浜流星。これほど神話的な響きを持った俳優が他にいるだろうか。遥か遠く、彗星が光の源となって彼の瞳に深い陰影を与えるようだ。ある場面、ある瞬間ごとにきらりと輝く流星群としての作品から代表的な3作品を取り上げ、流れ星の欠片をすくい取るようにして彼の魅力を紐解いてみたい。

『着飾る恋には理由があって』で発揮した“視線”のドラマ

2021年4月期にTBSで放送されたドラマ『着飾る恋には理由があって』は、横浜の特性をうまく反映させた作品だった。横浜が演じたのは、過去に大きな挫折を経験しながらも、今は勝手気ままにキッチンカーを走らせるミニマリストのシェフ・藤野駿。主演の川口春奈扮するインフルエンサー女子・真柴くるみとの対象的なライフスタイルが描かれ、わかり合えるはずのない二人が同じ屋根の下、ルームシェアを通じて次第に恋仲になっていく様子が描かれる。

『着飾る恋には理由があって』
発売日:2021年10月13日(水)
価格(DVD-BOX):22,990円/(Blu-ray-BOX):¥29,040
発売元:TBS 発売協力:TBSグロウディア
販売元:TCエンタテインメント
©TBSスパークル/TBS

全話を通じて印象的なのが、流れ星の欠片をひとつ嵌め込んだようにきらきら輝く横浜の瞳が注ぐ視線の美しさだ。全く性格が異なる相手に対して理解を求めるわけでもなく、ただ静かに美しい視線を投げかけ続ける駿。くるみがその視線に気がつかないことでドラマは展開に展開を重ね、いつでも彼女のことを気づかう駿の存在が浮き彫りになる。それでも二人の関係が深められた頃、毎話必ずエンディングに添えられる駿目線の「サイドB」が多くを物語りはじめる。その視線に声はないが、多くを語ってはいる。駿を演じる横浜の視線からは、キャラクターの感情の起伏や心情の意味が読み取れ、視聴者が自由に解釈出来るようになっている。それは言わば、「開かれた視線」としてあるのだ。

横浜のそうした視線のドラマは、心に秘めたものをひた隠しにしながらも、駿が時折発する意味深い言葉によって必ずストレートに表現される場面が設けられているのも本作の興味深い視点だろう。映画なら言葉による説明に頼ることなく、ひとつひとつのショットの画によって視覚的にみせていくところを、脚本家が心血を注いだ台詞表現が比較的自由に使えるテレビドラマだからこそ、ここぞという場面で視聴者の印象に残るような台詞が大きな意味を持つ。声のない視線が台詞によって雄弁さを得ているのだ。それが顕著なエンディングの「サイドB」場面は、ドラマ劇中では語られることのなかった駿の胸中が語られることで、彼の視線が追う先のほんとうの意味を一種の付録として視聴者にだけ垣間見せていたところがまたこのドラマの面白さであった。まさに横浜流星がストレートに表現する視線の演技の美しさをただただ愛でるための脚本構成ではなかっただろうか。

『初めて恋をした日に読む話』でSNSトレンド常連に

同じくTBSの「火曜22時」枠で2019年に深田恭子との共演が話題となった『初めて恋をした日に読む話』でも、横浜の視線が数々の名場面を生んでいる。

『初めて恋をした日に読む話』ブルーレイ&DVD
©持田あき/集英社・TBS・K-Factory
発売元:TBS 発売協力:TBSグロウディア 
販売元:TCエンタテインメント

恋愛に臆病なアラサー塾講師を演じる深田恭子が、その後の二人にとって思い出の場所となる夕日の階段で「ゆりゆり」という愛称を付けた不良高校生に扮する横浜流星の鮮やかなピンク色の髪をそっと撫でる瞬間、外見とは裏腹に純朴な少年のような眼差しを向ける名場面。あるいは、予備校の合宿場の外れにあるコテージで過ごす二人だけの夜、今度は子どものように甘えた表情を浮かべながらも、やけに大人びた男性としての燃えるような視線を送る場面など、ドラマ全話を通して忘れがたい瞬間は数え切れない。

この漫画的とも言える「無敵ピンク」の圧倒的なキャラクター性によって横浜の人気は爆発的に上がり、SNS上でのトレンド入り常連となった記念すべきドラマ作品だ。

『君の瞳が問いかけている』“見つめる”俳優のハマり役

このように横浜は、一貫して「見ること」に徹する俳優である。一体、横浜は何をそんなに見つめていているのだろうか。韓国映画『ただ君だけ』(2011年)を吉高由里子とのW主演でリメイクした映画『君の瞳が問いかけている』(2020年)では、その横浜のスタイルがはまり役となった。本作の三木孝浩監督は、不慮の事故で視力を失ってしまった明香里(吉高)とボクサー崩れの塁(横浜)の関係性を、塁から一方的に見られることのドラマとして構築していく。

きみの瞳が問いかけている

僅かに光だけは感じる明香里は、終始彼の視線を生きる活力としながら懸命に毎日を生き抜こうとする。光が差し込むように改装されたベッドルームで明香里が引用するシェークスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の名台詞は、本作のテーマを物語っている。「彼女の瞳が問いかけている。僕は応えなければ」とロミオがバルコニーの下で愛を温めたように、自分が寄り添うようにして視線を投げかけ続けることで、彼女がいつの日か視線を投げ返してくるのを待ち望んでいるのだ。

彼女の眼の手術費を用意するために危険な試合に出場する塁の姿は、韓国版のモティーフになった喜劇王チャップリンの名作『街の灯』(1931年)でひとりの盲目の女性のために慣れない拳闘に挑戦する放浪者チャーリーの奮闘と哀しさとも通ずるものがある。それは、視線の俳優としての横浜の比類なき演技力の証であった。

彗星のごとく現れ、流れ星のように輝く数々の視線のドラマを生み出してきた横浜流星。それはまるでファンタジーの世界での出来事のようだ。彼の視線の虜となった筆者としては、ひとつでも多くの星の欠片を拾い続け、今後も彼が作品に恵まれ、より大きな光の源となるような流星群を形成し続けることを願わずにはいられない。

文:加賀谷健

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