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『007』原作者は元スパイ！ 戦中の数奇な半生を描くドラマ『フレミング ジェームズ・ボンドを夢見た男』
映画好きならば『007』シリーズについて説明の必要はないと思うが、その原作者であるイアン・フレミングについては、どの程度ご存知だろうか。そこそこ『007』にハマった人でもないかぎり、フレミングの小説シリーズまで押さえるのは少々ハードルが高いはずだ。
ということで、シリーズ最新作にしてダニエル・クレイグ版ボンドの最終作『007／ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開（2020年11月20日）を待つ間に、フレミング自身の若かりし姿を描いたBBCのドラマシリーズ『フレミング ジェームズ・ボンドを夢見た男』（2014年）を観て、ジェームズ・ボンドが生まれた背景に想いを馳せようではないか。
どこまでホント!?『007』の小ネタ満載で思わずニヤリ
物語の舞台は1930年代後半から。軽薄なナンパ野郎のフレミング（ドミニク・クーパー）が、やがて英秘密情報部で活躍する様子が描かれていく。フレミングは実際には現場に出るタイプの任務には就いていなかったようだが、わざわざ冒頭で「私の小説はすべて事実に基づいている」と謳っているので、そのつもりで観たほうが楽しめるだろう。
さて、本作でフレミングは『007』シリーズの“M”のモデルになったとされる海軍諜報部のボス、ジョン・ゴドフリー提督に語学スキルと自信満々の口八丁のドヤっぷりを買われ、諜報部の職員として働くことになる。このあたり、（一応）事実に基づいているだけあってそれほどドラマチックには描かれないのだが、後々ボンドさながらの激しいアクションやイカしたガジェット（麻酔ペンやライター型カメラなど）を披露してくれるのでご安心を。
序盤はとにかくフレミングのボンクラぶりが強調され、何かと駄々をこねるボンボンのロクデナシ描写が続く。亡き父や口うるさい母、優秀な兄ピーターからのプレッシャーを撥ねつけ、芸術品に浪費し女遊びを繰り返すフレミング。ロイター通信の記者としてバリバリ働いていたこともあったようだが、いまでは立派な女好きになってしまっていた。あと、所かまわずタバコをガンガン吸いまくるので、さすがに身体が心配になる……（しかしフレミングは血管の疾患により56歳で亡くなったそうだ）。
海軍諜報部でスパイ活動開始！ どちらかと言えば下半身のほうで大活躍!!
そんなフレミングも（母親のコネで）諜報部に雇われ、秘めた才能を徐々に発揮。やがて第二次大戦が勃発すると、他国上層部との交渉や敵対するナチスドイツへの工作活動など重要な任務を担当するようになるが、お偉方にミッションを提案するところから始まるので、ボンドのようにクールに活躍することはそうそうできないのだった。とはいえ、そのあたりのアイデアが後に作家として活かされたのだろうと夢想すると胸アツだ。
妖艶な人妻アン（夫の戦死後にフレミングと結婚）やカノジョのミュリエル（ボンドガールのモデルになったとされる。後に空襲で死亡）など、関係を持つ女性たちも個性豊かで魅力的。提督の秘書マンデーだけが一線を引いて関係を持たないあたりは、『007』のミス・マネーペニーへの影響も伺える。ただし、フレミングの女性への態度が過剰にオラついていて、感情移入を許さないクズっぷり。もはやボンドのほうが100倍マシなレベルである。
ともあれ、非『007』者にとっては映画シリーズを楽しむ一助になるだろうし、ファンにとっては元ネタやオマージュ探しが楽しめるスパイ・ドラマであることには間違いない。『ノー・タイム・トゥ・ダイ』公開までたっぷり時間があるので、ぜひ本シリーズを鑑賞してスタンバイしておこう。
『フレミング ジェームズ・ボンドを夢見た男』はAmazon Prime Videoほか配信中
『フレミング ジェームズ・ボンドを夢見た男』
名家の生まれであり、ロンドン随一のプレイボーイであるフレミングが、英国海軍諜報部として第二次世界大戦の渦中に飛び込み、スパイの才能を開花させていく。甘いマスクで女性を誘惑し、クールに諜報活動を行い、時には非情な判断をも厭わない……。クレバーにして野蛮なそのスパイの栄光と挫折は、やがて世界最強のスパイ“ジェームズ・ボンド”を誕生させる――。
| 制作年： | 2014 |
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| 監督： | |
| 出演： |