年を取って変わった『えいがのおそ松さん』6つ子と、変わらなかった『T2 トレインスポッティング』4人組【アッチ(実写)もコッチ(アニメ)も】

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ライター:藤津亮太
年を取って変わった『えいがのおそ松さん』6つ子と、変わらなかった『T2 トレインスポッティング』4人組【アッチ(実写)もコッチ(アニメ)も】
『えいがのおそ松さん』©赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会
“まともなオトナ”って?ニートの6つ子が高校生時代にタイムスリップした『えいがのおそ松さん』と、20年ぶりに再会した『T2 トレインスポッティング』の4人組に見る、年をとって変わることと、変わらないこと。

過去の自分に会ったら、なんと言うだろうか?

ユニコーンの『すばらしい日々』の一節に、いつの間にか年をとっていた、というようなフレーズが出てくる。確かに「年をとる」というのはいつの間にかの出来事なのだ。気がつけば思春期を通り過ぎ、気がつけば中年になっている。そうやって人は年をとっていく。

レントンの現実に胸を締め付けられる『T2 トレインスポッティング』

2017年に公開された『T2 トレインスポッティング』は、『トレインスポッティング』(1996年)の20年ぶりの続編だ。キャスティングも前作と同じで、登場人物たちがきっちり20年分年をとった姿で現れるので、それだけに哀感はひとしおだった。

前作のラストは、主人公レントンがひとりで未来へ向かって歩いていく開放感の中に「人は変われるかもしれない」という予感を忍ばせたものだった。

『T2~』はそれから20年。逃亡先のオランダからレントンがエディンバラに戻ってくるところから始まっている。そして再会した仲間たちは、レントンも含め、誰もまともな“大人”になっていない。映画は「いや人間、そんなに変われないよ」という「現実」をつきつけてくる。

若い頃は、道を踏み外しても、失敗しても、それがある種の愛嬌になる。未来を投げ捨てた刹那的な行動も、若ければそれが一瞬を永遠にするような振る舞いに見える。でも中年になってしまったらそうはいかない。レントンが、前作のキーワードだった「Choose Life(人生を選べ)」の話題を出して、20年分の変化を皮肉っぽく語るシーンは胸を締め付ける。果たして僕らは人生を選べたのだろうか。いつの間にか20年分年をとってしまっただけではないか。レントンのセリフはそんなふうに観客をも撃つ。

「変わったつもりが変われなかった」という『T2~』に対し、「変わってなさそうで変わった」ところを描いたのが『えいがのおそ松さん』だった。

自分自身を励ます、おそ松たちにホロリ

『えいがのおそ松さん』©赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会

ギャグ漫画「おそ松くん」で描かれた6つ子が成長し、ニートで童貞の(ダメな)オトナになったという設定で始まったTVアニメ「おそ松さん」。『えいがのおそ松さん』はその劇場版にあたる。

映画冒頭、同窓会に出席したおそ松たちは、就職したと見栄をはるものの、ウソはすぐにバレてしまう。やけ酒を飲んだくれて、目を覚ますと、そこは高校の卒業式の前日。どうやら6つ子は“思い出の世界”の中に入り込んでしまったらしい。さらに“思い出の世界”は、どうやら過去に後悔を残した人物のせいで生まれたらしい。6人のうち誰が後悔を残しているのか。6つ子は18歳の頃の自分たちに対面するハメになる。

本作はこの18歳の6つ子の設定が秀逸だ。6人そっくりのままで幸せだった子供時代が終わり、ほかの5人と違う自分の“キャラ”をみつけようと迷走している時代。「ああ、あのキャラクターならこういう迷走をするよな」という納得感と、「多かれ少なかれ誰もがこういう経験あるよね」と思えるあるある感が、18歳の6つ子の中にちゃんと共存していた。

ダメな大人の6つ子も、実は思春期の迷路を越えて変化してきたからこそ、今があるんだなと思える。だから、クライマックスでダメな大人である自分たちを棚にあげて、18歳の自分たちを未来へ向けて励ましている彼らの姿を見ると、ちょっとホロリとしてしまう。こんなふうに、いつの間にか(ちょっとだけ)大人になるということもあるんだろうという気分になる。それは、いつの間にか年をとってしまう、観客にとっての「心の支え」でもある。

もし『おそ松さん』の6つ子がレントンたちのように20年経ったらどうなっているんだろうか。きっとちょっとだけ変わって、なんとか暮らしているんじゃないだろうか。第1期第24話の「手紙」で、チョロ松が就職する姿を描いたように。もし『T2~』のレントンが、おそ松たちと同じように“思い出の世界”で、20年前の自分に会ったらなんというだろうか。きっと「Choose Life」と言うんじゃないだろうか。
年をとるということは、たぶん、この2作が描いた「現実」と「心の支え」の間にある。

文:藤津亮太

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