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『哀しみのベラドンナ』『PERFECT BLUE』『メガゾーン23』『うる星2』名作アニメを振り返る!

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ライター:#BANGER!!! 編集部
『哀しみのベラドンナ』『PERFECT BLUE』『メガゾーン23』『うる星2』名作アニメを振り返る!
『哀しみのベラドンナ』
日本コロムビアより発売中

中世を舞台にしたエロティックおとぎ話『哀しみのベラドンナ[4Kレストア版]』、名匠・今敏が現代社会の暗部を描いた『PERFECT BLUE』、斬新な世界設定のSFアクション『メガゾーン23』、押井守によるお茶の間妄想ファンタジー『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』という濃厚な名作アニメをご紹介!

『哀しみのベラドンナ[4Kレストア版]』(1973年)

まるで手塚治虫が抑え込んでいたエロを放出させたかのような「アニメラマ」シリーズ2作に続く『哀しみのベラドンナ』は、当時「アニメロマネスク」と称して劇場公開された大人向けアート・アニメ作品だ。

とはいえ手塚先生はノータッチだったそうで、『ジャングル大帝』などの手塚作品や『宇宙戦艦ヤマト』で知られる山本暎一が監督を務め、挿絵画家・深井国によるキャラクターデザイン、セル絵っぽさを排除した動く絵本のような見せ方など、とにかく“攻め”のスタイルが特徴的な作品。最小限のセリフとナレーションのみの「日本昔ばなし」スタイルでお話が進んでいく、いわゆる“萌え”とは一番遠いところにあるアニメでもある。

しかも原作は、19世紀フランスの歴史家/作家ジュール・ミシュレの「魔女」。劇中、主人公ジャンヌがしきりに「悪魔だ、魔女だ」と言われてはいるものの、一体どのへんが魔女なのか序盤はピンとこないかもしれない。やがて、仲代達矢が声をあてた悪魔(シルエットがあきらかに男性器!)との絡みによって分かりやすく魔女化していくわけだが、やはりジャンヌの魔女たる所以はミシュレを読んでおいたほうが詳細に理解できるはずだ。

ともあれ本作の白眉は日本版予告編にも引用されている、抽象的な演出でジャンヌの“痛み”を表現した序盤のシーン。そして中盤以降、怪しく儀式的な乱交パーティや色鮮やかにうねうねと動きまくるサイケデリック絵巻的なシーンも素晴らしい。水彩画風、ペンスケッチ風、ポップアート風と、物語に合わせて質感が目まぐるしく変わっていく様子を目で追いかけるだけでも楽しいくらいである。

とにかく終始ひどい目に遭いまくるジャンヌが訴えかけるのは世間から、そして民を救うべき宗教からも踏みにじられていた当時の女性たち。ジャンヌという名の通り、世界を変えるべく権力に挑み、革命を起こそうとした女性の物語なのである。このあたりへの理解が日本よりも深い欧米で評価されているのも頷けるし、米ポートランドのSSWアレクサンドラ・セイヴィアーが英題(「Belladonna of Sadness」)と同名のアルバムをリリースしていたりと、支持層も幅広いようだ。

フランスのルネ・ラルーによる『ファンタスティック・プラネット』(1973年)やベルギーのラウル・セルヴェによる『人魚』(1968年)、有名なところではビートルズの『イエロー・サブマリン』(1968年)や『ピンク・フロイド ザ・ウォール』(1982年)など、どこかダークでシュールな前衛アニメが好きな人には是非オススメしたい逸品。

 

『PERFECT BLUE』(1997年)

2010年に46歳という若さで亡くなった今敏監督の代表作にして、アニメの枠を超えて世界中で称賛されている『PERFECT BLUE』。華やかな芸能界、その裏で蠢くアイドルオタクやストーカー……ネット黎明期の世相を反映したストーリーとサスペンスフルな展開でアニメの歴史に名を刻んだ世紀の名作だ。

主人公の未麻は、女優へ転身しようと奮闘する中堅アイドル。清純なアイドルグループ時代には考えられなかった濡れ場演技にも果敢に挑む未麻だったが、なぜか関係者を狙った凶悪な事件が多発。さらに理想と現実の狭間にも苦しめられ、未麻は徐々に正気を失っていく。

近年は大所帯の男女アイドルグループが芸能界を席巻しているだけに、本作の設定はいわゆる歌って踊れる国民的アイドル不在の時代だった90年代らしいと言えばらしい(※その谷間の時代に登場したモーニング娘。のデビューが1997年)。とはいえ、いま観ても全く違和感がないのはスゴいというか恐ろしいというか、エンタメ業界の下世話な本質は変わっていないことを思い知らされる。

サスペンス要素の鍵となるオタク男性の描写も悪意たっぷりという感じだが、アイドルグループの運営と繋がったファンがメンバーと交際して云々……みたいな事件が起こってしまう現在のほうがよっぽど闇が深いのかもしれない。実際、本作でもスプラッタに近いバイオレンスシーンより、性を売り物にする芸能界のイメージに精神をすり減らされるだずだ。

メインストーリーと平行して描かれる劇中劇などのメタ構造は、メインストーリーとの境界を曖昧にする効果を生む。登場人物の心理を巧みに表現した構図も秀逸で、あのダーレン・アロノフスキー監督の『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年)や『ブラック・スワン』(2010年)にもストーリーを含め大きな影響を与えたほど。真相が明かされた時のインパクトはトラウマ級の恐怖である。

 

『メガゾーン23』(1985年)

『超時空要塞マクロス』(1982年~)のスタッフが集結し(こき使われ)制作されたという本作は、なんといってもその独特の世界設定が魅力。……なのだが、その設定は思いっきりネタバレになってしまうので解説できないのが残念(『マ◯リッ◯ス』の元ネタでは? と言われている)。

ビジュアル的な魅力で言えば、いわゆる金田バイクをさらにSF進化させたような大型バイク、ガーランドがロボットに変形するギミックは秀逸。これは当初アニメシリーズとして企画が進んでいた際(後にOVA化に変更)に、おもちゃ化が必須だった名残なんだとか。今も変型フィギュアとして販売されるなど、多くのロボット好きの心を掴むデザインだ。

マクロス直系のキャラクターデザインは、バリバリ80年代風ではあるものの官能的なベッドシーンや、国家機密という最大のタブーに首を突っ込むストーリーだけにヘビーな展開もあり、大人向けアニメとして根強い人気を持つ理由がよく分かる。一方で、政府の陰謀に立ち向かうアウトローな主人公のパワーの源がロボと女子(セックス)という分かりやすさも大きな魅力。

小ネタとしては、主人公・省吾の声優は某子ども番組でお馴染みのワクワクさんこと久保田雅人さんです! 意外すぎる!!

 

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)は、ミツメの川辺素さんによる紹介記事をどうぞ!

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