戦車も恐竜も見たことないのに「リアル!」と思わせるワザ 『ガールズ&パンツァー』と『ジュラシック・パーク』

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ライター:藤津亮太
戦車も恐竜も見たことないのに「リアル!」と思わせるワザ 『ガールズ&パンツァー』と『ジュラシック・パーク』
『ガールズ&パンツァー』© GIRLS und PANZER Projekt

 

鑑賞後、思わず「リアルだった!」と感想を漏らしてしまう作品がある。それが、『ガールズ&パンツァー』と『ジュラシック・パーク』のシリーズだ。だが、恐竜も戦車の戦いも実際に見たことがないのに「リアル」と言ってしまうのは、なぜなのだろうか?【実写(アッチ)もアニメ(コッチ)も】

見たことがないのに…「恐竜がリアル」と言わしめる『ジュラシック』シリーズ

最新作『ジュラシックワールド/炎の王国』(2018年)まで全5作が公開されている『ジュラシック』シリーズ。ご存知の通り、バイオテクノロジーを駆使して現代に蘇らせた恐竜たちを飼育するパークが舞台となって、そこでなにがしかのトラブルが起き……というのが同シリーズの定番ストーリーだ。

『ジュラシック・ワールド』© 2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

ここまでシリーズが継続した一因は、やはりスティーヴン・スピルバーグが監督した第1作『ジュラシック・パーク』(1993年)のインパクトがとても大きかったことにあるだろう。後ろ足で立ち上がって、悠然と高い木の葉を食べるブラキオサウルス。草原を猛スピードで駈けていくガリミムス。そして、王たる名にふさわしいティラノサウルス・レックス(T-REX)の獰猛な牙と、ヴェロキラプトルの鋭くえぐるような爪という、タイプの違う2つの恐怖。映画の中の恐竜たちは、本当に現代に蘇ったかのような存在感があった。

『ジュラシック・ワールド』© 2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

その存在感を支えたのが3DCGだ。第1作の時点では3DCGを使ったカットは全編中10分にも満たなかったが、例えば登場人物の近くを疾走していくガリミムスのカットの臨場感などは、3DCGでなければ得られなかったものだ。こうして3DCGとアニマトロニクス(生物を模したロボット)の合わせ技により『ジュラシック・パーク』の恐竜は魅力的に出来上がったのだ。

『ジュラシック・ワールド』© 2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

それにしても興味深いのは、このシリーズを見た観客の中に「恐竜がすごくリアルだった」と語る人がしばしばいることだ。冷静に考えてみれば、恐竜ははるか太古に絶滅しており、誰も本物など見たことがない。にもかかわらず、つい出てしまう「リアル」という言葉。例えば、ブラキオサウルスは本来骨格の構造上、後ろ足で立てないという。そういう“ウソ”がありながらも、あたかも“本物”を見たように感じさせてしまう。

『ジュラシック・ワールド』
Blu-ray:1,886円+税/DVD:1,429円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

逆に言うと、そこにこそ『ジュラシック』シリーズのおもしろさが宿っていると言ってもいいかもしれない。

精密に再現された戦車とケレン味あふれる『ガルパン』のアクション

そして、この“映画のウソ”でうまく担いでくれる作品のひとつに『ガールズ&パンツァー』がある。

『ガールズ&パンツァー』© GIRLS und PANZER Projekt

『ガールズ&パンツァー』(以下『ガルパン』)は、女子高生が戦車を使った武道“戦車道”で試合を繰り広げていく様子を描いた人気シリーズで、現在は『ガールズ&パンツァー 最終章』シリーズ(2017年~)の第2話が公開されたばかりだ(2019年6月15日より公開中)。

戦車道で使用が許されているのは、大雑把にいうと第二次世界大戦中に使用・開発されていた戦車のみ。『ガルパン』の3DCGスタッフは戦車を表現するにあたり、当たれる限りの資料に当たり、専門家の考証も受けて、非常に精密な戦車の姿を3DCGで再現している。

そうしたリアルな形状の戦車を扱い、その挙動も基本的に実物を踏まえているにもかかわらず、『ガルパン』はそこにピンポイントで強烈にケレン味あるアクションも盛り込んでくるのである。そして観客は、第二次大戦中の戦車が実際に動くところなどちゃんと見たことはないのに、つい「リアルだ」と口にしてしまったりするのだ。

『ガールズ&パンツァー』© GIRLS und PANZER Projekt

『ガルパン』のアクションがかなりケレン味にあふれても、ナンデモアリの荒唐無稽と思われないのは、観客の「こういうアクションが展開したら楽しいだろうな」という気持ちに応えるようなタイミングでそれが描かれるからだ。

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それは「恐竜がペットのようになついてくれたらうれしい」「ブラキオサウルスが象のように振る舞ってくれたら楽しい」という観客の気持ちが、画面の中で実現するとついうれしくなってしまうのと同じだ。そうした感情が生まれることで、描写としてはウソでも、戦車や恐竜をより身近に感じることができる。だから、つい口をついて出る言葉が「リアル」になってしまうわけだ。

恐竜と戦車を“キャラクター”に昇華させた、ウソという味付け

これはつまり『ジュラシック』シリーズの恐竜も『ガルパン』の戦車も、どちらも“キャラクター”ということなのだ。人間をリアルに模倣したからといって、キャラクターが魅力的になるわけではない。フィクションとしての味付け(ウソ)があるから、キャラクターが立って、魅力がそこに生まれるのだ。

『ジュラシック・ワールド』© 2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

その時、ウソはウソであっても、そのまま「そのキャラクターとしてはリアル」という形で観客には届くことになる。そんな目線で『ジュラシック』シリーズや『ガルパン』を見てみるのもおもしろいはずだ。

文:藤津亮太

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