是枝裕和監督や西川美和監督の監督助手を務めてきた、映像制作集団分福の新鋭・孫明雅(そんみょんあ)監督の長編デビュー作『トロフィー』が、7月10日(金)より公開される。このたび、追加キャストと本予告が解禁となった。
在日コリアンのひとつの“今”を描くオリジナルストーリー
主人公は在日コリアンの14歳の少女・ソヒ。朝鮮学校に通い、部活で朝鮮舞踊に打ち込む日々を送っている。ある日、日本学校との交流会で日本人の未来とK-POP好きという共通点で仲良くなり、ソヒは少しずつ外の世界と繋がりを持っていく。そんな中、ふたりは推しのK-POPアイドルのライブチケット代を稼ぐために、ソヒの家にある不用品をフリマサイトで売ることに。そこで意外にも高値で売れたのは、朝鮮学校の校長である父・サンジュが持っていた一枚の北朝鮮のCDだった。それに味をしめたソヒたちは、サンジュが祖国・北朝鮮から授与された”勲章”までも売ってしまう—。
近くても分かり合えない父との関係、朝鮮舞踊に対する社会からの視線。そして思春期ならではの未熟さ。家族、友達、そして朝鮮舞踊。そのすべての間で揺れながら、少女は少しずつ自分自身の世界を見つけていく。波立つ少女の日常と心を美しく繊細な感性で紡ぎ出した映画『トロフィー』が誕生した。
『トロフィー』©2026 K2Pictures
K-POPをきっかけに仲良くなったソヒと未来が足繁く通う甘味屋の店主・さっちゃん役を演じるのは、是枝裕和監督の『誰も知らない』にて映画デビューし、その後も同じく是枝監督の『そして父になる』など、数々の映画・ドラマ・バラエティで存在感を放ち続けているYOU。YOUは、どこか子どもたちと同じ高さに立っているような自由さを持ちながらも、時に大きく包み込むような頼もしさを感じさせる、駄菓子屋のさっちゃんを自然体で演じた。無邪気に甘味屋へ遊びにくるソヒと未来を温かく見守りながら、本作にやわらかな光を添えている。
ソヒの友達の未来の祖父役を演じるのは、数々の映画・ドラマで唯一無二の存在感を放ち、ユーモアと人間味が共存する演技で長年愛され続けてきた名俳優、きたろう。きたろうは、少し頑固で職人気質な一面を持ちながらも、その厳しさの奥に不器用な優しさをもつ存在としての祖父を演じた。時にぶつかりながらも、まだ未熟なソヒと未来を静かに導き、家族のぬくもりと確かな支えを感じさせる存在として物語を支えている。
焼肉店を営むソヒの叔父役を演じたのは、『港に灯がともる』『燕』『福田村事件』をはじめ、社会の中で生きる人々の葛藤や、その奥にある感情を丁寧に描く作品にも数多く出演してきた山中崇。繊細さと確かな存在感を併せ持つ演技で人物たちの現実を静かに立ち上げてきた山中は、本作では家族を支える側としての余裕と温かさを持つ叔父役として、ソヒたちを少し離れた場所から見守る、大人ならではの包容力で作品に軽やかな空気をもたらしている。
ソヒの祖母役を演じるのは1967年のデビューから映画界で長年にわたり活躍し、その芯のある確かな存在感で数々の作品を支えてきた白川和子。白川は、本作では、多くを語らずとも家族を静かに見守り、そこにいるだけで安心感を与える祖母を演じる。そのあたたかなまなざしが、揺れ動くソヒの日々にそっと寄り添っている。
ソヒと未来がある出来事をきっかけに訪れるバーのマスター役を演じるのは、言葉以上に人物の背景や存在感を滲ませる演技で数々の作品に強烈な印象を残してきた黒田大輔。本作では、一見すると何を考えているのか掴めない、物好きで不思議な空気を纏うマスターを演じる。
ソヒがよく行く乾物屋「丸萬商店」の店主を演じるのは、Apple TV+『PACHINKO』、HBO/WOWOW『TOKYO VICE』をはじめ国内外の作品で活躍するソウジ・アライ。日本で生きる在日コリアンとしての現実を、時に飾らない言葉でソヒへ投げかけながら、生活の中に根付いたリアリティと静かな説得力を持つ演技で、彼女が自身のルーツやこれからにふと向き合っていく瞬間を静かに生み出している。
主演・恒那演じるソヒの取り巻く世界に、父役・井浦新、母役・市川実和子、舞踊部の先生役・ちすん、そして朝鮮学校の担任役・笠松将に加えて、きたろう、YOU、山中崇、白川和子、黒田大輔、ソウジ・アライなどの演技派・実力派俳優も加わり、さらに繊細に、深く描いていく。
本予告では、K-POP好き同士として友人の未来(梨里花)と笑い合いながら過ごす、ソヒ(恒那)の思春期の等身大の日常と、朝鮮舞踊に真っ直ぐ向き合う凛とした姿が映し出される。一方で、朝鮮学校の校長として生きる父・サンジュ(井浦新)との、分かり合えなさも徐々に浮かび上がっていく。
“父が大切にしていた祖国・北朝鮮の勲章を売った——”父の大切なものを売ってしまったソヒが、さまざまな大人たちと出会いながら見つけていくものとは。無邪気さ、未熟さ、そして瑞々しさ。誰もが通り過ぎてきた青春の一片を思い起こさせるような映像となっている。
さらに、追加キャストとして解禁されたYOU、きたろう、山中崇、白川和子、黒田大輔、ソウジ・アライら実力派キャスト陣も登場し、作品世界にさらなる奥行きを与えている。華やかな朝鮮舞踊、躍動する身体、そして揺れ動く感情。それらを静かに、鮮烈に、瑞々しい感性で切り取った本予告から、少女の青春と家族の物語への期待が高まる—。
<コメント>
YOU(甘味屋の店主 さっちゃん役)
ものすごく暑かった現場で、監督がその想いを一つ一つ丁寧に形にしてゆこうとする姿、もう全てを理解し、いつものようにじっくりと狙いを定め一寸の狂いもなく舐めるように(笑)取り納めてゆく山崎さんがいらして、真っ白な子鹿のようなソヒは、その時期の少女の全てを纏っていて。始終キラキラとした清流が流れているような駄菓子屋の風景は、それだけで感慨深いものでした。全編に描かれているであろう、監督の想いや、役者さん達の表現に触れるのがとても楽しみです。その一欠片に携われたこと、心から感謝しております。楽しみです!ありがとうございます!
きたろう(未来の祖父役)
脚本を読ませてもらって、ぜひ参加したいと思った。
テーマに真正面から向かう姿勢に心打たれた。
在日コリアンの少女と日本の少女の友情が実に透明だ。
理由なき差別は二人にしか止められない。現場で、カット割りがカメラマンと話し合いになり、孫監督の譲らない頑固さが素敵で可愛かった。
ソウジ・アライ(乾物屋の店主役)
脚本を受け取ったその足でロケ地の三河島を訪ねると、懐かしさを感じた。多文化共生を象徴するような子供たちのグループが自転車で駆け抜けた。主人公ソヒがよく買い物にくる丸萬商店は、そんな地域で愛されしっかりと根を張っていた。日本の豊かさ、多様性の美しさを、自然体で伝えてくれるこの街にもトロフィーを!
黒田大輔(バーのマスター役)
人種や国境や性別関係なく、ただただ普通に思い悩んだり喜んだり憤ったり楽しんだりしながら、生活している人たちのひとときを覗き見させていただきました。
山中崇(ソヒの叔父役)
「オレ、在日なんだよね」高校生の頃、幼なじみの友人がふと話してくれた。当時の僕は、その言葉の重さをよく分かっていなかった。あれはきっと、とてもナイーブで勇気のいる告白だったのだと、後になって気づいた。きっと大切な友達だと思ってくれたから話してくれたんだ。そう感じた時、心の奥でじんと震えるものがあった。
作品を観ながら、そのことを思い出していました。舞踊を踊る生徒たちの笑顔がみずみずしさで溢れています。現実と向き合いながら芽吹いたその笑顔は、観る人たちにもきっと勇気を灯してくれると思います。
白川和子(ソヒの祖母役)
異国の地で、甘いも酸いも知り抜いた、ハンメ(祖母)の余裕ある生き方を、私なりに演じることができたと思います。それは四十年以上続いていた、在日の友人とのおつきあいがあったからです。生き方の姿勢、人生における決断など波乱万丈の人生から多くのことも学べたからです。その友人も旅立ちましたが、『トロフィー』に出演させていただき、恩返しができました。孫監督本当にありがとうございました。
『トロフィー』©2026 K2Pictures
『トロフィー』は7月10日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開