8月8日(金)より全国公開中の『サタンがおまえを待っている』は、スティーヴ・J・アダムスとショーン・ホーラーが共同監督・脚本を務めたカナダのドキュメンタリー映画。1980年代に北米を席巻した“悪魔的儀式虐待(Satanic Ritual Abuse/SRA)”の集団ヒステリー、いわゆる“サタニック・パニック”の真相を探る作品だ。
『サタンがおまえを待っている』© 666 Films Inc.
世界が恐怖したサタニック・パニックとは
物語の中心は、1980年に出版された回顧録「ミシェル・リメンバーズ」。精神科医ローレンス・パズダーとその患者ミシェル・スミスが“回復記憶療法”によって明らかにしたとされる、悪魔崇拝者による幼少期の誘拐・虐待体験が描かれている。この本はベストセラーとなり、テレビ番組や法執行機関にまで影響を与え、数々の冤罪事件や社会的混乱を引き起こした。
『サタンがおまえを待っている』© 666 Films Inc.
本作は当時の録音テープ、テレビ映像、新聞記事、そして関係者の証言を交えながら、サタニック・パニックがいかにして社会的現象へと発展していったかを丹念に追っていく。
『サタンがおまえを待っている』© 666 Films Inc.
悪魔的儀式虐待を“思い出した”女性と、その担当医師
ミシェルとパズダー医師の共著「ミシェル・リメンバーズ」は大ヒットし、2人はプロモーション、いわば“興行”で世界中を訪れた。いくら精神科医のお墨付きとはいえ、明確な証拠すら提示できていないのに、なぜ「オカルトじみた狂言だ」と片付けられなかったのか? TV番組で“儀式の恐ろしさ”を語る2人の様子は、いま見ると怪しさしかないのだが……。
『サタンがおまえを待っている』© 666 Films Inc.
そんな謎本の出版に協力した神父は、著者の身内に対し「大勢が殺され、一方で救済される」と言ったという。そして「すごく稼げる」とも。これはカトリック教会が同著の出版とプロモーションに積極的に関与していた事実を示すものであり、宗教的権威が“恐怖の物語”を利用し、信仰と道徳の名のもとに社会的不安を煽る“ビジネス”に手を染めていた証拠でもある。ちなみに地元教会は出版に際し補助金も出していたそうだ。
『サタンがおまえを待っている』© 666 Films Inc.