「やむを得ず手を貸している、最も力の弱い人物に焦点」
組織のヒエラルキーの下にいるジェーンのような人物に焦点を当てた理由について、監督は「#MeTooの問題を考えるとき、権力の構造を見つめる必要があると思った」と語る。「誰が頂点にいて、誰が一番下にいるか。不正行為を行いつつ、なぜトップに居座ることができるのか。どのような構造が彼らを守っているのか」を解明するため「上司である悪者に目を向けるのではなく、やむを得ず手を貸している、最も力の弱い人物に焦点を当てることにしました」と、本作の独特の物語構成を明かしている。
誰も無関係ではいられない87分
24時間のあいだ、まるで透明な存在のようにさまざまな暴力の矛先になるジェーン。自分の意見はほとんど述べず、寡黙に状況を見つめる彼女の目を通じて、観客は自分が同じ立場ならどうするか? と考えさせられる。また同時に、本作は『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022年)にも連なる、職場のパワハラや性的虐待を許容し蔓延させているシステムへの痛烈な告発とも言える。
一つの確信によって、自らも気づかぬうちに組織のシステムに加担していることを知ったとき、ジェーンはどのような選択をするのか? 架空の映画会社の1日が、目に見えない<闇(しくみ)>を明るみに出す……。すべての人に問いかける、87分の静かな衝撃だ。
『アシスタント』は2023年6月16日(金)より新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開