「おかしいだろ!」「みんなめちゃくちゃだよ」10代から80代まで、様々な立場に生きる人々が抱える苦悩と本音『私がまだ知らない沖縄』
沖縄と日本の関係を見つめ直す、猪股東吾監督によるドキュメンタリー映画『私がまだ知らない沖縄』が、10月31日(土)より公開される。
10代から80代まで、様々な立場に生きる人々が抱える苦悩と本音
沖縄——美しい海や亜熱帯の森などの豊かな自然、温暖な気候、琉球王国時代から引き継がれてきた独自の文化・風習を持つ島々は、戦争で20万人以上の犠牲者を出し、戦後も日本国内にある70%の米軍基地を抱え、県民所得が全国最下位、3人に1人の子どもが貧困状態にある。戦後81年、本土復帰54年が経った今、沖縄では何が起こり、そこに暮らす人々は何を見つめ、どんな問題と向き合っているのか。10代から80代までの市井の人々の多角的な語りの集積から、沖縄の重層的な実像を浮かび上がらせるドキュメンタリー映画『私がまだ知らない沖縄』。
大袈裟太郎という芸名でも知られる監督の猪股東吾は、2016年、高江のヘリパッド建設に反対する市民を機動隊が強制的に排除する映像にショックを受け、現地に駆け付けたのを機に沖縄へ移住した。その後ジャーナリスト活動を開始し取材を続ける中で、沖縄が抱える様々な問題の根幹に「本土」側の無関心と構造的差別があることを実感。“やまとんちゅ(本土出身者)”という立場から、初監督となる本作を4年がかりで制作した。
予告編では、沖縄に暮らす様々な世代の人々が、沖縄について感じること、沖縄の問題について証言をしていく。「おかしいだろ!」と叫ぶ声、淡々と「鈍感にならないと生きていけない」「みんなめちゃくちゃだよ」と語る声。美しい海や空、のどかな日常の風景とは対照的に、ビーチを隔てるように建てられた金網のフェンスや墜落した米軍機、新基地建設のために辺野古で行列をなすダンプカーなど緊張感の漂う現実が映し出される。
沖縄へ移住し、自身の足で取材をつづけてきた猪股監督がどのような視点で本土と沖縄との関係を見つめてきたのか、スクリーンで確かめてほしい。
『私がまだ知らない沖縄』© rude news films 2026
『私がまだ知らない沖縄』© rude news films 2026
また、公開に先駆けて本作を鑑賞した著名人から推薦コメントも到着。デザイナーでアクティビストのeriやジャーナリストの金平茂紀、翻訳者・コラムニストのキニマンス塚本ニキ、お笑い芸人でYouTuberのせやろがいおじさん、映画評論家の町山智浩など各界から言葉が寄せられた。
<コメント>
eri(デザイナー・アクティビスト)
辺野古の座り込みに参加した。雨の中じっと丸くなって座り動かない私を警備員は二人がかりで持ち上げて排除した。工事現場へのゲートはその日も当たり前のように開けられ、轟々と音を立てるトラックがなだれ込むのをただ立ち尽くして見ていた。
「これは、暴力だ」
私たち“本土”の人間が沖縄にしている差別であり暴力なんだ。私は沖縄についてもっと知りたい。知らなければならない。私がすべきことを見過ごさずこの責任から逃れることのないように。
金平茂紀(ジャーナリスト)
大袈裟太郎/猪股東吾は問い続けてきた。本土から沖縄に移ってきた自分が何を知らなかったのかと。高江や辺野古、オスプレイ墜落現場、石垣や宮古の自衛隊基地への武器搬入とか、「現場」によく足を運んでいた。「現場」で何度も彼と会った。
でも今、あの事故をきっかけに、「現場」が「更地」にされかかっている。若者と一緒に「現場」に行くことさえ悪罵を浴びせられる。すべてがなかったことにされる前に、事故「前に」つくられたこの作品で、改めて考えることは誠実なことだ。
キニマンス塚本ニキ(翻訳者・コラムニスト)
キレイなところが切り取られ、おいしいところを搾取され、権力の意向にそぐわないことは黒く塗り潰され、民意は否応もなく分断され、命が、尊厳が、踏みにじられる。
そんな沖縄を「私」は直視できているのだろうか。
日本という国に住むすべての「私」が向き合わなければいけない問いがここにある。
せやろがいおじさん(お笑い芸人・YouTuber)
ネットのフィルターバブルの中からは見えない沖縄を見ることができる。沖縄に20年住んでいる私でも知らない沖縄があった。
「沖縄好き」の人にみてほしい。そして問いたい。良いとこばかり見えるのが恋で、問題も含めて向き合うのが愛だとしたら、あなたの「好き」はどっち?
町山智浩(映画評論家)
沖縄についてのさまざまな問題がさまざまな人々から語られていきます。その人たち一人ひとりの人生を人間を知りたいと思いました。この映画を作った猪股さんがどうして沖縄に惹かれたのかも知りたくなりました。続編では問題の奥にある一人ひとりの人間により深く入り込んでいってほしいと思います。
畠山理仁(フリーランスライター)
美しい海と空が広がる沖縄は、歴史を知らない者たちにも優しい。同時に「知ろうとする者たち」に語るべき言葉を持つ人々がまだまだ健在だ。知ろうとする若者、伝えようとする若者もいることを知った時、あなたは沖縄の本当の優しさと強さを理解することになるだろう。沖縄をめぐる問題は、私たち自身の問題だ。
タカノシンヤ(J-WAVEナビゲーター)
沖縄を訪れ、青い海と空を眺め、料理を味わい、人々のあたたかさに散々甘えてきた。基地、性暴力、利権——それらを「沖縄の問題」と括って、「こちら側」から眺め、その内側の暮らしを見ていなかったことを恥じずにはいられない。本作がすくい上げる一人ひとりの声から、暴力を本質としない生き方、人が人として暮らす意味が立ち上がってくる。自分と同じ「本土」出身の猪股東吾監督が撮った沖縄。その距離とまなざしにも敬意を。
藤井セイラ(編集者・エッセイスト)
「ちいかわ」のシーサーが好きな人にもぜひふれてほしい映像です。
シーサーのもつ、やさしさ、まじめさ、てきとうさ、ゆんたくの雰囲気。
辺野古の座り込みの風景に、すべて映っています。
村本大輔(芸人)
この映画の監督から昔、メッセージがきて「辺野古で座り込みの人たちと飲みませんか?」と。それから仲良くやっている。以前僕がやっていたニュース番組で隣に座っていたコメンテーターが「村本さんが仲良くしている彼(この映画の監督)、辺野古の暴力活動家ですよ。知ってました?」と言われた。情報源は産経新聞。のちに産経新聞は、彼に訴えられて嘘だったと謝罪し、罰金を払わされていた。
座り込みをしている人たちはお金をもらっているとネットに書いていた。座り込みの人たちと会ったけどそんなことはない。彼らはどうして上から嘘の色を塗られるんだろう。沖縄では米軍の戦闘機が墜落して、たくさんの人たちが亡くなってきた。それでも基地は無くならないから市民が基地反対をする、その運動の中で見学に来ていた高校生が海に溺れて亡くなった。反対運動の人たちは叩かれていた。米軍の戦闘機が墜落して亡くなった数々の命には沈黙していた人たちなのに。
沖縄の慰霊の日、高市総理に怒号が飛んだ。「死者の人たちに失礼だ」と声は飛んだ。しかし辺野古の海を埋め立てる土砂は沖縄戦が沖縄で一番激しく起こった地域の土。中に、戦争で亡くなった人たちの骨が混じっていると言われている。それには失礼だと言わない。それは黙祷か? 沈黙か? 彼の撮った映像をみて、たまには声ぐらいあげてみてもいいのでは?
奇妙礼太郎(ミュージシャン)
美しい南国の風景から、映画が進むにつれて、現在の日本という国の異様がはっきりと浮かび上がってくる。
奥浜レイラ(MC・ライター)
自分のルーツが沖縄にあることを伝えると、羨望の言葉だけが返ってくることにずっと違和感をもっていた。日本にある米軍基地の約70%が沖縄に集中し、生活の安全性、自然環境への影響、軽視される女性の人権、貧困など問題は山積しているのに、“楽園”としての側面にばかり目が向く。構造的な差別を無視したまま沖縄を味わった気になるの、もうやめませんか? 沖縄を愛するなら、まず知ることから。
ISO(ライター)
私たち本土=内地の人間が、〝日常を忘れるための楽園〟として消費してきた沖縄。
本土出身の監督が、その陰に置き去りにされてきた不条理を外側から見つめ直し、沖縄の犠牲に目をつぶってきた本土社会に楔を打つドキュメンタリー。
私たちはその島に、何を押し付けてきたのか。何を覆い隠し、何を無視し、何を奪ってきたのか。
そのアンフェアを知って、なおも知らぬふりができるのか。
これは、私たち本土の人間の問題だ。
『私がまだ知らない沖縄』© rude news films 2026
ドキュメンタリー映画『私がまだ知らない沖縄』は10月31日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開