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『マッチング』で土屋太鳳が演じる唯島輪花には、恐ろしい事件に巻き込まれるだけではない切実さがある。誰かとつながりたいと願いながら、過去の傷が新しい関係に踏み出すことを難しくしている。土屋はその孤独をにじませ、迫り来る恐怖に揺さぶられる女性の姿を演じている。
内田英治監督による本作は、恋愛に奥手なウエディングプランナーの輪花が、同僚に勧められてマッチングアプリに登録するところから始まる。そこで出会った吐夢は、プロフィール写真の印象とはまるで違う、陰気で不気味な男だった。執拗につきまとわれるうち、輪花が結婚式を担当した夫婦も連続殺人事件の犠牲になり、日常が不穏なものへ変わっていく。
©2024『マッチング』製作委員会
輪花の心には、幼い頃に母が家を出た傷が残っている。土屋の演技は、その痛みが今も彼女の内側にあることを序盤から伝える。人とのつながりを求める気持ちが強いからこそ、判断も危うくなる。恐怖にさらされる輪花の姿には、孤独から抜け出したいという思いが重なっている。
追い詰められていく過程も、表情の変化から伝わってくる。顔がこわばり、次第に憔悴していく輪花。降りかかる出来事が彼女を疲弊させる様子を、土屋は細やかに表現している。
とりわけ感情が強く迫るのは、事件と自分の関係を知り、抱え続けてきた怒りと絶望が噴き出す場面だ。そこにあるのは、目の前の危険への恐怖だけではない。長く押し込めてきた痛みまでがあふれ出す。その激しい感情の解放を、土屋の演技が支えている。
輪花を挟んで、佐久間大介演じる吐夢と金子ノブアキ演じる影山剛が対照的に配置され、物語を引っ張っていく。吐夢には、恐ろしさと奇妙なおかしさが同居する。佐久間は不気味な人物に独特の魅力を持たせ、繰り返される独白にはブラックユーモアもにじませる。陰惨な事件の中に暗い笑いを差し込みながら、作品は衝撃的な展開を楽しむスリラーとして進んでいく。
事件の背後に絡む複雑な人間関係も、物語への好奇心を刺激する。何げない場面に残された違和感が、後から伏線としてつながっていく。不気味な登場人物たちの言動を追い、誰が何を隠しているのかを考える面白さがある。
©2024『マッチング』製作委員会