オリンピック代表からポルノ女優へ 身体で頂点を目指した女性の転身、その先の孤独『リア ポルノの女王』
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高飛び込みでオリンピックを目指していた女性が、選手生命を断たれるけがを経て、ポルノ業界で再び成功をつかむ。『リア ポルノの女王』は、リア・デ・メイとして知られたアンドレア・アブソロノヴァの実話を基に、その転身と家族との関係を描いた作品だ。中心にあるのは刺激的な成功物語よりも、自分の身体を支えに生きてきた女性が、その身体とどう向き合い直すかという問いだ。
アンドレアを演じるナタリア・ジェルマーニの存在感が、映画を支えている。特に競技生活を描く前半では、飛び込む直前の集中、張り詰めた筋肉、目に浮かぶ恐怖が、トップ選手に求められる厳しさを伝える。鍛え上げた身体は彼女の強さであると同時に、結果を出し続けなければならない重圧を背負っている。スポーツを楽しむ気持ちよりも、成功への執念が前に出る演技によって、事故以前から追い詰められていた日々が見えてくる。
競技の世界を去ったアンドレアは、やがてポルノ女優として新たな道を歩み始める。一見かけ離れた二つの仕事をつないでいるのは、身体を使って成果を求められるという共通点だ。しかし、選手として称賛されていた身体に、職業が変わった途端、異なる視線が向けられる。映画はその落差を通して、女性の身体の価値を誰が決めるのか、自分で選んだ生き方がなぜ他者の判断にさらされるのかを浮かび上がらせる。
その変化が最も身近に表れるのが、家族との関係だ。妹との間に生じる亀裂、娘の選択を受け入れられない父親、新たな成功と豊かさに引き寄せられていく母親。同じ転身を前にしても、反応は一様ではない。母親役のズザナ・マウレーリと父親役のマーティン・フィンガーの演技は、家族の野心や戸惑い、痛みを伝えている。アンドレアの成功は、かつてのように家族全員が喜べるものではなくなっていく。
ナタリー・チサロフスカ監督は、ドキュメンタリーを思わせる自然な演出で、この人生を追う。俳優陣の演技にも作り物めいた誇張が少なく、登場人物が実在の人間として感じられる。題材の過激さに頼らず、アンドレアを一方的に裁いたり、悲劇の人物として消費したりしない姿勢が、作品の強みになっている。
『リア ポルノの女王』© Cineart TV Prague, Česka Televize, Silverart 2023