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『カマキリ』はなぜ「家族」の物語になったのか。仏『La MANTE』を韓国が作り替えた残酷さ

『カマキリ』はなぜ「家族」の物語になったのか。仏『La MANTE』を韓国が作り替えた残酷さ
『カマキリ』©SBS Based on the original series "LA MANTE", produced by Jean Nainchrick © Septembre Productions / TF1 / 2017

※ 本ページはプロモーションを含みます。
※本記事の情報は2026年9月28日時点の情報です。最新情報は公式サイトにてご確認ください。

韓国ドラマ『カマキリ』リメイク論――仏『La MANTE』が韓国サイコスリラーとして「母と息子」の物語に変わるまで

『カマキリ』とは、フランスのサスペンスドラマ『La MANTE』を、SBSが韓国サイコスリラーとして全16話にリメイクした作品です。獄中の連続殺人犯チョン・イシン(コ・ヒョンジョン)と、その息子の刑事チャ・スヨル(チャン・ドンユン)が、模倣犯を追う過程で互いの傷をえぐり合っていきます。原作の骨格を「家族」の物語へと組み替えた韓国版の変換に注目したい、韓国ノワールやサイコスリラーを観てきた方に向けた一本です。

フランスの原作が、韓国で「家族の話」になった

リメイクという行為は、翻訳に似ています。言葉を置き換えるだけでは、物語は移りません。
フランスの『La MANTE』は、獄中の女性連続殺人犯が、自らの手口を真似た模倣犯の捜査に協力する代わりに、疎遠になった息子との対面を求める、という物語でした。骨格は同じです。ただ、韓国版『カマキリ』を観ていて私が強く感じたのは、この骨格に流し込まれた血の濃さが、まるで違うということでした。

韓国のドラマは、家族を描くとき、遠慮をしません。血縁というものが、どれほど人を縛り、救い、壊すか。韓国の映像作品はそれを何十年も描き続けてきました。『カマキリ』もその系譜の上にあります。連続殺人犯の母を持つ息子が刑事になるという設定。それは正義への志ではなく、母から逃げるための、あるいは母を否定するための選択だったのかもしれません。そんな読み方を、韓国版は観客に許します。

コ・ヒョンジョンが演じるチョン・イシンは、息子の前では母親です。冷酷な殺人犯としての顔と、息子を見つめる母の顔が、一つの表情の中に同居しています。この二重性を、韓国版は原作以上に前面へ押し出しました。犯罪ドラマでありながら、その核にあるのは、母親に愛されることを恐れる息子の物語なのです。

私は原作の骨組みを知ったうえで韓国版を観ましたが、途中から比較することを忘れました。それは、リメイクとして成功している何よりの証拠だと思っています。

尺の違いも、この変換を支えています。フランスの原作は短い話数でまとまったサスペンスでしたが、韓国版は全16話。事件の捜査と並行して、母と息子の過去、彼らを取り巻く人々の事情にまで筆が及びます。韓国ドラマが得意とする「長さを深さに変える」語りが、ここでも機能しているのです。

母と息子という関係の、逃げ場のない残酷さ

『カマキリ』の心理戦がここまで苦しいのは、対峙する二人が親子だからです。

『羊たちの沈黙』のレクター博士とクラリスは、赤の他人でした。だからこそ、あの対話には知的な駆け引きの快楽がありました。ところが『カマキリ』の二人には、その距離がありません。チョン・イシンは息子の幼い頃を知っています。何が好きで、何を怖がり、どんなふうに泣いたか。捜査への助言という名目で交わされる会話の端々に、母だけが知る記憶が滑り込んでくるのです。スヨルにとって、それは尋問よりも残酷な攻撃です。

一方で、チョン・イシンの側にも逃げ場はありません。彼女がかつて何をしたのか、息子はすべて知っています。愛情を向ければ向けるほど、息子はその手を振り払うのです。それでも彼女は、息子に会う道を選びました。殺人犯の母が、息子にどう愛されたいと願うのか。その願いの歪みと切実さを、コ・ヒョンジョンは一切の言い訳なしに演じきっています。

模倣犯の捜査が進むにつれ、スヨルは母の手口を学ばなければならなくなります。母がどのように人を選び、どのように殺したか。それを理解することは、母の内側に足を踏み入れることと同じです。刑事として真相に近づくことが、息子として母に近づくことになってしまうのです。この二重の運動が、ドラマの16話を貫く背骨になっています。

血のつながりからは、逃げられません。それを、これほど冷たく描いた韓国サイコスリラーを私は他に知りません。

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チャン・ドンユンの「受け」の芝居

このドラマのもう一人の主役について、書き足りないと感じています。

コ・ヒョンジョンの演技は、それ自体が事件です。ただ、その演技を成立させているのは、向かい側に座るチャン・ドンユンの「受け」の芝居だと、私は観終えてから気づきました。

スヨルは、母の前でほとんど感情を見せません。刑事として、冷静に、事務的に振る舞おうとします。ところが、母の一言が彼の記憶の扉を叩くたび、彼の身体のどこかがわずかに反応します。握った拳。逸らした視線。飲み込んだ言葉。チャン・ドンユンは、大きな芝居を一切せず、そうした小さな綻びだけで、この男の内側を観客に伝えてきます。

『椿の花咲く頃』や『ノクドゥ伝』などで見せてきた彼の持ち味は、感情を抑えたまま、その抑圧の重さを画面に残す演技でした。『カマキリ』では、その持ち味が最大限に生かされています。母の圧倒的な存在感を、正面から受け止め、揺らぎ、それでも崩れません。崩れないからこそ、観客は彼の心の中で起きている崩壊を想像してしまうのです。

チョ・ソンハをはじめとする脇の俳優陣も、この母子の周囲で、捜査の緊張と組織の圧力を静かに支えています。誰一人として、画面の温度を乱しません。

私が気に入っているのは、二人が同じ画面の中に収まる場面です。言葉を交わさず、ただ同じ空間にいる母と息子。それだけの画に、これほどの緊張が宿るとは思いませんでした。カメラは二人の距離を測るように動き、観客はその距離が縮まることを、望みながら恐れることになります。

全16話を一気に観る夜の過ごし方

『カマキリ』は、一話ごとに区切って観るには、あまりに続きが気になるドラマです。

私は最初、平日に一話ずつ観るつもりでした。その計画は三話目で破綻しました。模倣犯の正体をめぐる謎と、母子の対話の緊張が、話数を追うごとに締め上げられていくのです。気がつけば深夜で、次の話の冒頭が流れていました。

もし一気に観るなら、金曜の夜から始めることをおすすめします。前半の8話で事件の構図と母子の関係を頭に入れ、土曜の夜に後半へ。終盤の展開は、前半で交わされた何気ない会話の意味を次々に裏返していきます。一気に観たほうが、その裏返しの快感をはっきり味わえます。

そして、観終えたあとの静けさを、どうか大事にしてください。このドラマは、観客に何かを教えたり、慰めたりはしません。ただ、母と息子という関係の底に何が沈んでいるのかを、見せるだけです。それを見せられたあと、自分の家族について考えずにいられる人は、少ないはずです。

私は最終話を観終えたあと、しばらく画面を消さずに座っていました。エンドロールが流れているあいだ、頭の中で反芻していたのは、事件の真相ではなく、母が息子に向けたある表情でした。コ・ヒョンジョンがあの顔を作るまでに、どれだけの計算があったのか。あるいは、計算などなかったのか。どちらにせよ、私はあの表情を、当分忘れられそうにありません。

『殺人の追憶』や『チェイサー』のような韓国ノワールを通ってきた方、『シグナル』『秘密の森』で韓国サスペンスの深さを知った方、そして家族というものを、甘くない目で見つめたい方。『カマキリ』は、そうした方のためのドラマです。

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※2026年9月28日時点の情報です。最新の配信状況・料金は各公式サイトでご確認ください。

文:BANGER!!!編集部

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